第31話 ガノンダンジョン


 日本からルナディアに戻ってきた俺たちはまたダンジョン攻略を開始していた。

「今日はどこまで潜ったんだ?」

「ちゃんと三十階層までで何回か往復したよ」

「よし、その調子だ。強くなれば後が楽だからな」

 よく見るとユフィの装備もだいぶくたびれてきていた。

「一回街にいってドロップを売りに行こうか」

「えー、まだいいんじゃない?帰って来るの大変だよ」

「こんどは転移を使ってやるから」

「やった!なら楽だね」

 ダンジョン前のテントを片付けて、アルスタットに転移する。


「すべて買取で六十四万ゼルだな」

「ろ、六十四万」

「それでいい」

 ユフィの目が金貨になっているが、装備なんか買ったらなくなるだろうな。


「らんらららー」

「無駄遣いするなよ?防具買うんだから」 

「うん!狙ってた防具があるんだ」

 防具屋へ行くと真っ先にユフィが手に取ったのは俺と同じ型の防具。

「お前それは高いぞ?」

「おう、五十万ゼルだろ?ようやく買える」

「まあ、長い目でみればいいものだが、もっと安くていいものもあるぞ?」

「いや、これでいい」

 なにも俺と同じのにしなくてもいいのに、

「へへっ!コタローが着けてていいなぁって思ってたんだ」

 まぁ、気に入ったならいいけどな。


 今日はアルスタットで一泊する。

「久しぶりのベットだぜ」

「飯にいくぞー」

「ぇ?いつも通りの飯でいいよ」

「日本の食事ばっかだとダメだ、俺が居なくなったら食えないんだからな」

「んじゃ、ずっと一緒にいるもん」

「あのなぁ、まぁいいや、さっさと飯食いにいくんだ」

「……へーい」

 不貞腐れながらもついてくるユフィ。


 ルナディアの飯は塩辛いのやら味薄いのやらで、お世辞にも上手いと感じない。だが、日本食に慣れてもらっては困るのだ!

「マジィ」

「んなことねーだろ、けっこー高いんだぜ?」

「安くてジャンキーなのがいい!」

「んじゃ、安くてジャンキーな干し肉でも食ってろ」

「ちーがーうーのー!」

 本当に日本に染まりつつあるな。


「また今度な」

「いつ?いついついつなの!」

「うっせえ!二度と食わせねぇぞ」

「くっ!」

 バクバクと飯を食べて部屋に帰るユフィの足取りは『私怒ってます』って言っていた。

 なんで連れてったかなぁ。いや、ついてきたんだが。


「んじゃいつも通りな!」

「……はーい」

「このヤロゥ、あー、昼飯だ!」

 ハンバーガーを投げ渡す。

「やった!ありがと!」

 くそ、俺も甘いな。

「夕方には迎えに来るからな。ちゃんと言った通りにしとけよ?」

「了解であります!」


 俺は転移でガノンダンジョンに行く。

 ユフィは昨日とおなじだ。


「このやろ!くそっ!」

 ドンドン出て来る敵に辟易するぜ。

 九十五層にもなると大型モンスターの山が出来る。

「『ヒール』こなくそ!」

 回復しながらなんとか次の階段を見つける。階段で昼休憩をし、次の階層へ。


 九十六、九十七と階段を降り、九十八階層。

 ブルーミノタウロスが普通に出てきて萎える。

「多いと特別感がないな」

「『バーンクエイク』」

 ブルーミノタウロス達は足を取られ焼かれていく。簡単なお仕事だ。

「売れないドロップ品が大量だな」

 アイテムボックスに死蔵している。まあ、時間停止してるから関係ないけどさ。


 九十九階層、ようやくここまで来たか。あとは最後の階層に行くだけだ。

「ギガンテスか、って多いなぁ」

 ギガンテス……大地の女神より作られし巨人『ギガス』の複数形、巨大な体躯もさることながら連携して攻撃してくる。

「一体づつかかってこいよ!もう!」

 正面から打ち合えば横からパンチが飛んでくる。『サイクロン』を使い、後方に押しやって一体づつ撃破していく。

「くっそ、疲れるぜ」

 なんとかギガンテスを倒したと思ったら、また新手がやって来る。

「『バーンクエイク』おらおら!」

 地割れ&炎で厄介な連携を崩し、トドメを刺していく。


 ガノンダンジョン 百階層

「ようやくここまで、って、またドラゴンかよ」

 五頭竜……五つの頭を持ち、天変地異を引き起こす。

 先手必勝!頭を二つ刈り取る。

『ギャォォォォ』

 五頭竜が鳴くと、雷が鳴り嵐のような雨が降る。前が見えない状態で竜の顎が迫るがなんとか躱したが左脚を切り裂かれた。

「『ヒール』おわっ!」

 また別の竜の顎が迫っていて今度はぶつかり壁にめり込む。

「くっ、ガハッ!」

『ガオォォオォォォ』

 ヒールをかけながら走り出し、まだ三つもある頭をなんとか避けるが尻尾の振り下ろしで意識を失いかける。

「グハッ……ヒール」

 目の前の尻尾を斬りつけ、背中を周り頭を一つ切り落とす。雨で動きにくいが次の頭を狙う。

「コォォォオォォォ」

 ブレスがくるのを察知して自分に『エアハンマー』を使い緊急脱出する。

 もう相手も俺もボロボロだ。

『ライトオブセイバー』

 光魔法の剣を作り出し相手の胴体に投げると同時に俺も走り出す。

 ライトオブセイバーは五頭竜の腹に突き刺さり、苦悶の表情の五頭竜の残りの頭を斬り落とし決着がついた。


「はぁ、はぁ、も、もう勘弁だな」

 俺はその場に倒れ込み、一息つくとドロップ品を回収し、その場を後にした。

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