第30話 ユフィの初体験


「も、もう無理」

「ほら早く立つ!」

 ユフィの訓練を開始してまだ四日目。

「殺される……」

 這いつくばって逃げようとするユフィの足を捕まえる。

「回復魔法は使ってやってるだろ?」

「おに!あくま!!」

「お前の為にやってるんだぞ?いい加減諦めろ」

「いーじーめーだー」


 こいつはすぐ調子に乗るから徹底的に危ない橋を渡らないようにしないといけない。

「んじゃ回復したからランニングしてこい!」

「やたっ!ランニング行ってきまっす」

 とこんな感じだ。


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ユフィ 十五歳

 レベル35

 力 D-

 体 D+

 速 C-

 魔 D-

 運 D-

スキル 風魔法 土魔法 火魔法

    弓術 短剣術

    早駆け 剛弓 曲射 三連射

ユニーク 


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 なかなか伸びは良いと思うし中級でも低階層ならだいぶ安全に狩りができると思うのだが、いかんせん自分を過信しすぎる。

 あんな怪我ばっかりしてこられたらこっちの寿命が縮むだろ。


「はぁ、はぁ、はぁ、こんなんで強くなれるのか?」

 口だけ達者だな。

「なら辞めてもいいんだぞ?」

「うそ!うっそでーす!てか、脅すなよ!」

「ほんとにへらず口ばっかだな」

「それより昼飯バーガーにしてくれよ」

「あ、バーガーの在庫がないじゃないか!誰かさんが食い過ぎだ」

 あれだけ買ってあったのに。

「俺は買い出しに行って来るから、それまでは走っておけ」

『転「まっ」移』


「んー、流石に久しぶりの気がするなぁ」

「へ、ここどこ?」

「…………」

「…………」

 

「なんでお前がここにいるんだよ!」

「知らないよ!待ってっていったのに行くからだろ!」

「あぁ、ついに連れてきちまった」

「ここどこだよ!教えてくれよ」

 あぁ、頑なに人を連れてこないようにしていたのに、よりによってユフィを連れて来るなんて。


「うわぁ、知らないものが沢山あるなぁ、これなんだ?」

「触るな!いまからお前を送り返す!」

「いーやーだー!俺も一緒にここにいるんだ!」

「わがまま“ドンっ!うっるせーぞ”すいませーん」

 隣の人に壁ドンされた。一つもときめかない。

「だーかーら、お前が居ていい場所じゃないんだよ」

「また大声だすぞ?」

「やめろっつーの!近所迷惑だろ!」

 なんてタチの悪い脅しだ。

「分かった、ここに居てもいいからこの部屋から出るなよ?俺は買い物に行って来るから」

「俺もいきたい!」

“ドンっ!るせーのがわかんないのか!”

「すいませんすいません!てめぇ、帰ったら覚えとけよ」

「もう忘れた」

「くぅーーー!」

 俺は折れたが、着替えのないユフィには外に出て行くことができない。


「買ってきたから好きなの着れ」

 こまむらにいって適当に買ってきた。

「お、俺にこんなの似合うか?」

「似合うだろ。それより風呂が先だ」

 風呂の使い方を教え、服に着替えたユフィ。

「反対に来てるぞ?タグは後ろだ」

「先に言え!」

 普通を知らないのは面白いなぁ。

 髪を乾かしてやったら当然ビックリして固まっていたし、テレビをつければ興奮して何言ってるかわかんないし、面白くてしょうがない。


「んじゃ外に出るけど逸れるなよ?」

「はい!この手を離しません」

 しょうがないから手を繋ぐ。側から見たら恋人かな?まぁ、男女だしそう言うのはないけどな。


「ふおっ!」

「あれは車だ、モンスターじゃないからな」

「俺は夢でも見てるのか?」

「夢だ夢!だからキョロキョロしない」

 外に出てから挙動不審すぎて手に負えない。

「とりあえずお前の好きなハンバーガー屋にいくぞ」

「お、お、おう」

 

「ポテトもいかがですかぁ?」

「お、おう」

「はい、お願いします」

 話が通じないからおうおうと言うしかないユフィ。だが見た目がいいだけに人に見られる見られる。

「うめぇ!コタロー、いつものと違うぞ?」

「そりゃそうだろ、高いの選びやがって」

 いつもはやっすいハンバーガーを食べさせてる。今日のはビックなやつだ。


「らんららんららーん」

「うっせえぞ。ここに置いて行ってもいいんだぞ?ら」

「なんだよ?鼻歌くらいいいだろ?」

「目立つんだよ。さて、そろそろルナディアに帰るか」

「待てよ!まだまだ満喫してねーんだから」

「満喫なんかさせねーよ!勝手についてきたんだろ!」


 本当にこいつは、

「なぁ、あれなんだ?」

「あ?あれは電車だ。知ってても意味ないぞ」

「あれは?」

「あれは人だ。奇抜な格好してるけどな」

「あれは?」

「うるせぇよ!観光してんじゃねぇんだからよ」

 うるさい。


「怒んなよー!事故だ事故。俺がここに来たのも事故だって」

「分かってるよ、だから連れてきてるだろ?それで満足しとけ」


「あれ食いたいなぁ」

「………」

「あぁ、あれも食べたいなぁ」

「………」

「あぁ、「分かった」やった!」

 なぜこんな路上で色々売ってんだよ。祭りじゃねぇだろ!

「あまっ!これすんげぇ甘いぞ!しかもモチモチだぁ!」

「クレープって食べ物だ」

「なんだかんだ言って優しいなぁ。コタローは」

 くっ!このヤロゥは……まぁ、いいか。甘いもんも補充出来たし、そろそろ帰るか。

「コタロー!あれなんだ?」

「ん?スカイツリーだな」

「あんな高い建物作って……さてはダンジョンか?」

「んなんじゃねーよ、行ってみっか」

 あははは、こいつ驚くぞ!


「高い怖い高い怖い」

「だから大丈夫だって」

 足をガクガク震えさせて子鹿のようだな。

「うぎゃ!何すんだよ!」

「あはははは」

 下が見えるところに押してやるとヘコヘコと戻ってきて文句を垂れるユフィ。

「死ぬかと思っただろ!」

「あははは」

「くぅー!今に見てろよ!」

「んじゃ置いてくぞー」

「うそうそ!嘘ですってば!」

 なんか可愛いやつだな。


「あふっ!あっあっ!」

「だから最初に言っただろ?熱いって」

 たこ焼きをくってるユフィは涙目になっている。まぁ、初めて日本に連れてきたやつがこいつでよかったのかもな。

「火傷した」

『ヒール』

「うん、ありがとう」


 これで堪能してくれただろ。

「凄いなぁ、これがコタローの秘密か」

「そうだ。本当はお前にも秘密だったんだが、ついてきてしまったのはしょうがない」

「うひひ、また連れてきてくれよ?」

「いつかな」

「そんな固いこと言わずにさぁ」

「いつかな」

「なんだよ!減るもんじゃねぇだろ?」

「まぁな、ちゃんと俺の言うこと聞けよ?」

「おう!任せとけ!」


 しょうがない、頑張ってたら褒美に連れて来るくらいはいいだろ。

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