第29話 無理する弟子


 アルスタットから西に行くとすぐにサワディダンジョンがある。初級のダンジョンだ。

「コレがダンジョンかぁ!」

「あぁ、初級だからそんなに固くなるなよ」

「大丈夫!ワクワクしてる!」

 ワクワクしてるのが伝わってくる。

「じゃあ行くぞー、あんまり無理はしないようにな」

「はい!」


 サワディダンジョン 一階層

“トスッ”

 大鼠に矢が刺さりドロップ品に変わる。

「うっし!」

 危なげなく弓を使い敵を倒している。

「どんどん行くぞー」 

「ちぇっ!褒めてくれてもいいのに」

「こんなんで褒められるかよ」

「うーい」


 サワディダンジョン 五階層

「スライム嫌いだぁー!」

「真ん中の核を狙うんだよ」

「わーかってるけど、ネバネバが」

 短剣で滅多刺しにしている。

「あーあ、ベチャベチャじゃねーか」

「うー」

 次のスライムが来たので一発で仕留めて見せる。

「こうやんの!」

「く、殺してやんよ!」

「くっころの使い方間違ってるけどな」


 サワディダンジョン 十階層


「てやっ!」

 ウッドゴーレムに矢が刺さるが、ダメージにはなっていない。

「だから、あーゆーのは」

「核だろ?核!分かってんよ」

 ウッドゴーレムの核は背中側にある。

「くっそ、コタローのほうに向かえよ!」

「ジリ貧だぞー」

 ユフィは突進していく。

「おいおい」

 股座を抜けて背中側の核を弓で狙い撃って倒す。

「やったぜ!」

「及第点だな。ギリギリすぎる」

「きびしー!」


 十階層の転移陣で戻ってアルスタットに帰る。

 ギルドでドロップ品を交換すると、九万五千ゼルになった。

「俺が全部貰っていいのか?普通は分けるだろ?」

「まだユフィは見習いだ。それは自分で倒したんだから取っておけ」

「ふわぁ、俺、こんな大金持った事ねぇよ」

 ユフィは天にも昇るような顔をしている。

「今日は俺が奢るぜ!なにか食べに行くだろ?」

「あのな、ちゃんと貯めて武器や防具の金にすんの!今日は……そうだな、ハンバーガーでお祝いだ」

「やた、やった!またバーガーを食える」

 涎をふきなさい。はしたない。

「それじゃあ宿屋にいくか。ちょうど夕暮れ時だしな」

「あ、魔法屋によろうよ!スクロールを見てみたい!」

 武技はスクロールで覚えるからな、なにか考えがあるのだろう。

「いいぞ」

「やりぃ!」


 魔法屋に来た俺たちだったが、

「弓に関するスクロールだよ?ないのか?」

「もっと言葉に気をつけなさい!」

「あん?あるよ、剛弓、曲射、三連射だ」

「全部くれ!」

「一つ九千だから二万七千ゼルだ」

「たかっ!でも買う!」

 親父がいい人で良かった、口の利き方を勉強させないとな。

「へっ!これで俺も強くなったぜ」

「使いこなしてから言えよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ユフィ 十五歳

 レベル6

 力 F+

 体 E+

 速 D

 魔 E-

 運 E

スキル 風魔法 土魔法

    弓術 短剣術

    早駆け 剛弓 曲射 三連射

ユニーク 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  

「あ、あと矢が少なくなってきたんだ」

 なら武器屋も寄るか。

「鏃が鉄製の矢を百本、弦を三本で合計二万三千だ」

「うわぁ!初めての金が飛んでいく」

「最初のうちはそんなもんだぞ?」

 しかも金がかかる弓だからな。

「ゔー。しょうがないかぁ」

 

「もっと稼いでやる!」

 ユフィの目は金貨のように輝いていた。


 あれから半年、ユフィも一人で中級ダンジョンに行くようになり、一人の時間も増えた事で俺はまたガノンダンジョンに潜っていた。

 ガノンダンジョン 八十一階層

「ふぅ、ユフィとの行動も客観的に見れて俺のプラスになったみたいだな」

 俺の悪い癖は前しか見てないとこだったが、いまは少し考える余裕があるのが良くなったところだろうな。

 いまはドロップ品を回収しているとこだ。

 この階ではギガントブルが、二、三体出てたて来たが、一体一体倒せばなんて事なかった。前の俺だと三体同時に相手したと思う。


「これも経験か」

 ユフィと組んでから新しい発見が沢山あって、やっぱり一人では限界があったんだと思う。ってことにしておくか。


 ガノンダンジョン 八十五階層

「おらっ!っと」

 聖魔法を武器に付与し、ガイアゴーストを倒して行く。壁からいきなり出てくるが、感知でわかるのでいい的だ。


 ガノンダンジョン 九十階層

 コキュートス……冥府の川の名を冠するドラゴン。氷属性のブレスを吐く。

「さっびぃな!『バーンクエイク』」

『キュオォォォォォ』

 地割れから出て来る炎が凍りつく。

「ちっ!なら『サンダーブレイク』」

 雷はコキュートスに当たり弾け飛ぶ。

 おれは背後にまわり、炎付与したアスカロンで斬りつける。

「キュオォォォォォ』

 こちらに首を回してブレスを吐こうとするコキュートスに『フレイムウォール』を展開し、回避する。が、尻尾で打ち落とされる。

「ガハッ!」

『キュオォォォォォ』

 すぐに立ち上がりブレスをジャンプ+天歩で避ける。

「なんだよ、強いじゃないか」

『キュオォォォォォ』

 アスカロンを握りしめ、コキュートスに向かって行く。

『キュオォォォォォ』

 ブレスを吐こうとしているのでそのまま壁を蹴り尻尾の付け根を叩き斬る。半分ほど切れたおかげでブレスを中断させる。

「硬いなぁ!」

 そのまま背中をら走り、首を斬りつけつつ前に回る。

『フレイムウォール』をコキュートスの足元に置いて距離をとる

『ギャオォォォォォ』

 やっとダメージらしいダメージを与えられた。走り出し首の逆側からまた斬り込むとコキュートスは力尽きドロップ品に変わった。


「はぁ、はぁ、尻尾の一発で気が遠くなったぜ」

 走り続けなければブレスでやられていた。ガノンダンジョンは本当にやばいな。

 ダンジョンを出ると、転移でポルタ北東にある中級ダンジョン、アイーザダンジョンへと飛ぶ。


「いやぁ、まいったまいった」

 傷だらけのユフィが折れた剣を杖にして出て来た。

「どうしたんだ?」

 回復魔法をかけながら話を聞く。

「いやぁ、モンスターハウスに入っちゃったみたいで、死ぬかと思ったよ。でも全部倒して来たぜ!」

「馬鹿が!危ない時は逃げろと言っているだろ!」

 大丈夫といったから別行動をとったのに心配かけやがる。

「あはは、俺にはまだまだ二十五階層はきつかったみたいだ」

「俺は二十階層までだと言ったはずだが?」

「いけるかなーなんて」

「このばかタレが」

 俺の拳骨が炸裂する。

「いっだあ!つぅぅぅ」

 無茶ばかりしやがる。


「これから一週間はみっちり修行してやるよ」

「いや、いいです。コタローも忙しいでしょ?」

「いやいや、可愛い弟子の為なら」

「いやいやいや、もう危ないことはしないので」

「いやいやいやいや、今度こそみっちり!」

「いーやーーーー!!」

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