第27話 ギルマス


「もうやだよ」

 六十階層の赤竜を倒しては転移陣で戻り、五十階層からまた倒しにいくのをもう五回繰り返している。

「赤竜の肉、鱗、牙、爪、尻尾。ばっかじゃねぇかよ。唯一のレアドロが天鱗だってのもやってらんねぇ」

 こんなに出にくいもんかね?

 あれか!物欲センサーが反応してるのか?

「やってらんねぇ!……もう一度だけやってみるか」

 六回目の五十階層からスタート。



「だぁ!やっと出たよー!」

 結局九回トライしてやっと一個出てくれた。

「これのために何回やったか!嬉しぃー!!」

 両掌にちょうど収まるくらいの宝玉、輝きが眩しいくらいだぜ。でもこれはギルマスにわたすんだよな……ちょっと惜しい気がする。

「ま、報酬次第では渡さないでおくかね!」


 俺はウキウキでアルスタットのギルマスの部屋に案内される。

「ついに手に入れてくれたのか!」

「苦労したんだ、報酬は期待していいんだろうな?」

「あ、あぁ、一千万ゼルでどうだ?」

 はぁ?

「流石にそれはないだろ?オークションで売れば億は行くはずだぞ?」

「そ、それはそうなのだが、この通りだ。俺のポケットマネーからも一千万ゼルを出すから売ってくれ」

 ギルマスは頭を擦り付けている。

「なんで宝玉がそんなに必要なんだ?」

「それは……帝国国王の王子、イフェクサ様が御所望でな。冒険者ギルドのメンツに関わってくるんだ」

「は?そんなことで?ならギルド全体で一億稼いでから取引しようじゃないか」

「くっ……そこを、なんとかお願いしているのだろう」

「悪いがギルドのメンツなんかのために苦労して取って来たものを二束三文で売れるわけないだろ」

 さぁ、どう出てくる。

「分かった、どうしてもというのなら実力行使といこうじゃないか!」

 ドアから冒険者がゾロゾロと入ってくる。


「へへっ!殺しても構わないんですよね?」

「殺したらまずいだろ!まずは手足を折って痛い目をみせてやれ」

 醜い冒険者だな、もっとまともな奴がいるはずなのに。

「一応言っておく、アイテムボックスに入っているのをどうやって取り出すんだ?」

 一瞬考えたようだが変わらないようだ。

「それは出してもらうさ。力尽くでな」


「交渉決裂だな」

 俺は立ち上がり戦闘態勢にはいる。

「はっ!こいつ一丁前にやるつもりだゴバァ!!」

 まず一人、ソファの後ろにいるやつに『サンダーボール』を食らわせれば隣にいる奴も一緒に巻き添えになったので三人、

「あと三人か、いや、ギルマスも含めて四人」

「こ、殺せ!そいつを殺してしまえ!」

「「うおぉぉ!」」

 懐に潜り込んで肘鉄で一人、そのまま持ち上げて突っ込んでくるやつに投げつけると、最後の一人を回し蹴りで倒す。

「最後の一人」


「わ、悪かった!俺が悪かった!一億払うよ!いや払わせてください!」

「いや、おまえには売らない」

「すいませんでした!本当にすいません、つい出来心だったんです」

 俺はギルマスに近づいていくと、胸ぐらを掴んで外に放り投げる。


 下に降りると大勢の人々が見ている。

「ここで言ってみろよ」

「は?え?な、なんで、」

「こいつはこのギルドのギルマスだ!俺をさっきまで殺そうとしていた」

「う、うそだ!うそです!」

「このギルドは腐ってる!ギルマスの部屋にはこれに加担した冒険者も倒れているぞ!」


 ガヤガヤと人々が騒いでいる中で、ようやく官憲が到着する。

「こ、こいつが俺に乱暴を」

「違うぞー!悪いのはギルマスだー!」

「そうよ!こんな子供を殺そうだなんて!」

 さすが見た目は子供なだけあるよな。みんなが味方してくれる。

「上のギルマスの部屋にも俺を殺そうとした冒険者が転がってます」


 官憲の人達はギルマスの部屋に突入、冒険者六人を縄で縛るとギルマスも縛られ連れていかれる。もちろん俺も事情聴取でついて行く。


 その後、冒険者どもの自供でギルマスは檻に入れられ一緒にやった冒険者達も罪を認めた為同じ檻に、ギルマスがいなくなったアルスタットの冒険者ギルドは副ギルドマスターが代わりを勤め、なんとか回しているらしい。


「あの、コタロー様、宝玉の方はお売りにならないですか?」


「やだね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る