第26話 継がれる


「天歩」


「やるじゃねぇかコタロー!」

「あぁ、極楽鳥を傷付けなくて済んだ」

 最後の一歩は空中で一回だけ跳べる『天歩』のお陰だった。

「これで指名依頼完了だな」

「あぁ、これで俺も報酬が貰えるぜ!」

 

 ポケットさんのところに二人で向かう。

「おぉ!これぞまさしく極楽鳥の羽根!これで取引先にも顔が立つ!ありがとうございます!」

「ユフィに言ってやってください。極楽鳥を見つけたのはユフィですから」

「ユフィ君、ありがとうございます」

 ユフィは照れてモジモジしている。

「あ、あれは二人で取れたんだからな!」

「おう、いい相棒だったよ」

「……ぉぅ」

 顔が真っ赤なんだよ。

「それでは指名依頼はこれで達成と言うことでどうぞ」

 依頼達成の紙を貰い、ユフィはそのまま現金を貰ったようだ。


「じゃーなって、ん?」

 ポケットさんの商店から着いてくるユフィ。

「どうしたんだ?」

「コタローの食ってたあれ、売ってくれよ」

「ん?ハハハッ!バーガーか?あれでいいならやるよ」

 俺らは空き地でハンバーガーを食べる。

「うっめぇー!こんなん食べてたのかよ!」

「あんときゃクソガキだと思ってたからな、やんなかったんだよ」

「なんだとこのヤロゥ!」

 叩く力も加減しているのでなんかむず痒い。

「おかわりはいるか?」

「おう!いる!」

 

「コタローはいつも指名依頼で動いてるのか?」

 ユフィが聞いてくる。

「いや、いつもはダンジョンだな」

「へぇ!ダンジョンってどんな感じだ?モンスターは?」

 ユフィはフンフンしながらダンジョンのことを聞いてくる。やっぱりこの年頃の子はダンジョンに興味があるんだな。

「はぁ。やっぱり俺にはまだ無理そうだな」

「ユフィはいまいくつなんだ?」

「俺はいま十四でもうすぐ十五になるんだ」

 んじゃギルド登録はもう済んでるのか?ん?

「俺はまだギルドに登録してないからなぁ」

「なんでだ?」

「親ナシの子供はいろいろな。ギルドも保証人が必要になってくるんだよ」

「は?そんな話聞いたことないぞ?」

 王都では保証人なんて要らなかったからな。

「コタローはどこから来たんだ?帝国では十歳から登録できるが保証人が必要で、十五歳からは必要ナシで登録出来る」


 そうか、親がいれば危険な仕事は受けさせないからな。死なせない為の一番の方法かもな。

「じゃあユフィももうすぐ登録できるんだな」

「あぁ!ようやく金も貯まったし、武器が買える。防具は今着てるこれだけど、金稼いだらいいの買うんだ!」

 とびきりの笑顔をみせるユフィに何かしてやりたくなり、

「コレやるよ」

「な、施しは受けないぞ」

「いや、これは俺が昔使ってた防具だよ」

 それはまだ俺が十歳の頃、ルーが買ってくれた初めての防具だ。

「い、いいのか?」

「もう着れないしな、ユフィならピッタリだろ?」

 小柄なユフィにはちょうど良さそうだ。流石にルーが作ってくれた八歳ごろの防具は小さすぎるからな。

「おぉ、ピッタリだぜ!似合うか?」

「んー、どうだか?」

「そこは似合うでいいんだよ!!」

「似合う似合う、あははは」


「武器はどんなのを使うんだ?」

「俺は非力だから弓だな、あと短剣」

「あぁ、そっちの方がいいだろうな」

 素早さを活かした斥候のような職を選べば結構いい線行くと思う。


「ふぅ、食った食った!」

「よく食べたなぁ、三つも食ったぞ」

「美味いものは食える時に食っとかないとな」

 ニシシと笑うユフィは妹のようで可愛かった。妹なんていないけどな!

「んじゃまたどこかでな!」

「おう!防具あんがとな!コタロー!」

 

 ユフィと別れギルドに達成報告をして報酬を貰う。

「あ、コタローさん。ギルドマスターがお呼びですので時間よろしいでしょうか?」

「は?ギルマス?俺は用はないんだがなぁ」

「そう言わずにちょっと来い」

 俺の後ろの大男がギルマスだったらしい。

なんでギルマスってこんなゴツいのしかいないんだよ?

「はいはい、行けばいいんでしょ」

「はぁ、生意気だがしょうがない」

 ギルマスの部屋に入って、ソファーにもたれ掛かる。

 

「さっそくだが、お前が前に買取に出した地龍の鱗はどこでとってきたんだ?」

 あぁ、あれってここで売ったんだっけ。

「ダンジョンに決まってるだろ?」

「どこのダンジョンだ?」

「王都」

「そうか、やはりコタローダンジョンはお前の名前か」

 有名になったもんだぜ。

「いまはどのダンジョンに行っているんだ?」

「ガノンダンジョン だけど?」

 ギルマスの目が光った気がした。

「じゃあ俺から指名依頼だ。ガノンダンジョン六十階層の赤竜の宝玉を頼む」

 赤竜だって?倒せるけど、

「ドロップ品の依頼は流石に断りたいんだが?」

「分かっている。だが、それが必要なんだ。頼むからこの依頼を受けて欲しい」

 ドロップ品はランダムだ。欲しいドロップ品を取るのに何度も挑戦しないといけない。

「宝玉なんていつ出るかわからないだろ!」

「そうだよな。だが、もし手に入れたら」

「分かったよ。手に入れたら持ってくる。だが、指名依頼なんか受けないぞ?」

「それでいい、ありがとう」

 ギルマスの部屋を出て大きなため息をつく。


「よりによって一番出にくい宝玉かよ」

 ダンジョンのモンスターは倒すと消えてドロップ品だけを残す。その中でも出にくいドロップ品を、レアドロップと言いそれを狙って出せるやつなんかいない。



「はぁ、ダンジョン攻略やめようかなぁ」

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