第14話 闇ギルド


 ユピーに送ってもらい宿に着く。

「またなんでもいってくれよ!大体あそこにいるからさ」

「あぁ、また頼ると思うからよろしくな」

「じゃあな!」

 走っていくユピーを見送り宿に入る。


 ユピーはまだ夕方前だが何か焦っているようだった。夜になると危ないんだろうな。


 明日は南の『魔の森』に行ってみよう。

 夕暮れ下に降りると酒場になっていた。カウンターに腰を下ろし、エールとツマミにウインナーを頼む。

 大人しく飲んでる奴もいれば、下品な会話を大声でしてる奴もいて、どこの酒場も一緒だなぁと思っている。


「あんたは上品にたべるねぇ、どっかのお坊ちゃんかい?」

 女将が話しかけてくる。

「お坊ちゃんならこんなとこでエールなんか飲んでないだろ?」

「そりゃ言えてる!あんたは何しに王都に来たんだい?」

「んー、別にアテがあるわけじゃない、明日は魔の森にでも行ってみるつもりだよ」

「へぇ、見かけによらずやるみたいだねぇ、いい肉が手に入ったら持ってきておくれよ」

「それくらいならお安い御用だ」

 そんな話をしているとどこから聞いてたのか輩が絡んでくる。

「おいおい、こんなちっせぃのが魔の森だとよ!」

「明日には死体になってんじゃねぇか?」

 はぁ、本当に鬱陶しい。

「あんた達、出禁にするよ?」

「はいはい!すいませんねぇ」

「「アーハッハッハッ」」

 男達は席に戻って行く。


「あんたよく我慢できたねぇ」

「ん?ムカつくが喧嘩するほどでもないだろ?」

「あぁ、言えてる」

 女将と笑って済ませ、部屋に戻る。


 翌日は朝から馬車で南門まで出て、そこからさらに馬車で魔の森前に到着する。

「さて、肉になる奴でも探すかな」

 森の中に一応は道があるため道沿いに歩いて行くと、ゴブリンやウルフ系のモンスターがたまに飛び出してくる。

「違うんだよなぁ。もっと大物が出てこないかなぁ」

 奥につれて道が細くなり、木漏れ日がすくなくなったいく。

『ウガァアァ』

「おっ!ファングベアか」

 四腕の鋭い爪を持つ熊がこちらを餌だと思い突進してくる。

「よっいしょっ!」

 少し重心を下げ、すれ違いざまに首を切り落とす。アイテムボックスに入れて終了。

「もっと大物でもいいんだが?」

 中堅の冒険者が来るのだからさほど期待はしてないが、ファングベアくらいだとガッカリする。


 もっと奥に進んでいくと道はなくなり気を避けながら歩いて行く。

 ズズズッと音がするのが聞こえ、剣を抜く。

「いるじゃねぇか」

『キシャアァァァァ』

 クロスアナコンダが二つの頭で威嚇している。胴回りが俺より一回り太く、全長は五メートルはあるだろう。

「蛇肉ってまぁまぁだなぁ」

『サンダーボール』

 魔法を放つと思ったより素早い動きで避けるなり飛びかかってくる。

「おっとと」

 木を盾に避けると、その木を噛み砕き追いかけてくる。

「はぁ!」

『キシャアァァァァァ』

 頭を一つ斬り落とし、二つ目も斬り落とそうとするが避けられ尻尾が飛んできた。

「グッ!」

 木に叩きつけられたがクロスアナコンダのほうは致命傷のようでグッタリしている。

「『ヒール』っと、いかんいかん、ルーに怒られてしまうぞ」

 もう片方の頭を斬り落としアイテムボックスに入れる。


「こんなもんでいいか」

 帰りにグレートボアを一匹仕留めてギルドに転移する。


 ギルドに転移した俺は解体場を借りて解体して行く。血抜きは水魔法の応用でクロスアナコンダは血も魔動具や薬に使用するので無駄にしない。

「ほぉ、坊主がこれを取ってきたのか?ギルドには売らないのか?」

 頬に傷のあるおっさんが話しかけてくる。

「あぁ、宿屋の女将が肉を欲しがってたんでね」

「へぇ、そこの宿屋の名前を教えてくれよ」

「あそこは、錆猫の居眠りだったかな」

「おっし、今日の酒場はそこに決めるぜ、俺はレオランだ」

 赤い鎧が特徴的で茶髪でちょっとチャラそうだな。

「コタローだ」

「コタロー、楽しみにしとくぜ!」

 レオランは仲間と一緒に出て行った。

「仲間かぁ。まぁ一人が気楽でいいけどな」

 五年後には日本に戻るから仲間を作ったところでなんだよな。


 解体があらかた終わる頃にまた人が寄ってきた。

「このクロスアナコンダをギルドに下ろしてくれんか?」

「あぁ、先約がいるんだ。血や骨ならいいが、肉と皮は無理だな」

 日本に帰ってから皮は何かに使う予定だ。

「じゃあそれでいい。滅多に出回らないからよろしく頼むよ」

 結局肉と皮以外で八十万ルビーになった。


 宿に帰ると女将に肉を渡す。

「ナンダイコレハ?」

「クロスアナコンダの肉だけど」

「そんなもの狩ってこられても高くて買えないよ」

「安くていいよ。んー、五千ルビーでどう?」

「え?本当にいいのかい?」

「その為に狩ったんだからいいよ、その代わり飯は期待してるよ」

「分かった!任せときな!」

 調理場は大忙しのようだ。そりゃ大量の肉の塊だからなぁ。


 夕食を食べに下に降りる。

「おーい、コタロー!」

「レオラン?」

「おう。ちゃんと食べに来たぞ!」

 レオランのパーティーメンバーもいるようだ。

「ここ座れよ。こいつがコタローだ」

「どもども、コタローです」

「女将ぃー、エール追加で!」

 レオランは大声で女将に注文をする。

「へぇ、この子がクロスアナコンダを?あ、アタシはメル、シーフよ」

「俺はタンクのガストだ、よろしくな」

「魔術師のウィッグよ」

「んで俺が剣士のレオラン。このパーティーのリーダーだ。ちなみにパーティー名は『炎凱』だ」

 メルはベリーショートの紫の髪で可愛らしい感じ、ガストは黒髪短髪でさすがタンクという感じの身体だ。ウィッグは白髪ロングを纏めていて、ローブを着ている。

「みんなよろしく」


「うっま!これうっまい!」

「流石クロスアナコンダ!」

「うーん、淡白なのにあと引く美味しさ」

「美味しい」

 これは美味しい!女将の料理でさらに美味しくなってる。あとエールに合うね。

「コタローはパーティーに所属しないのか?」

「んー、いまんとこはいいかな」

「うちに入っちゃいなよ」

 メルが酔っ払って抱きついてくる。うん、慎ましやかな物が当たっている。

「なんか考えてる?」

「滅相もない!」

 ヤベェ!女は怖えのな!

「しかし一人でクロスアナコンダを仕留めるとは大した腕だよ」

「ほんとビックリ」

 ガストとウィッグが褒めてくれる。

「いや、俺もビックリしたぜ?解体場いったら大物を一人で解体してんだから!」

「解体までできるなんてすごーい!」

 また慎ましやか……。


 だいぶ酔いが回ってきた頃、レオランが急に真剣な顔で言ってくる。

「コタローは関係ないと思うけど、最近闇ギルドが危なそうだから気をつけろよ?」

「どう危ないんだ?」

「ここだけの話、なんでも貧民街のガキどもを集めてるらしい」

「は?飯でも食わしてるんじゃないか?」

「いや、あそこは頭が変わってからちょっとイカれてるんだ」

 ユピーは無事だろうか?

「気に留めておくよ」

「あぁ、近づくなよ」

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