第13話 貧民街


「だー。たった一年ちょいでこんだけ変わってんだもんなぁ」

 まだ二回しか帰ってないが色んな知らないことがある事が分かっただけでも良しとしよう。

 

 翌日は宿探しからスタートだ。

「東地区に近いところで探すか」

 王都はとてつもなく広いから流石に街の中を乗合馬車が走っている。南区までやってきた俺はギルド本部に立ち寄ると、宿を聞いてみる。

「東区は治安が悪いわよ?それでもいいなら、えーっと。これをあげるわ」

 渡されたのは一枚の地図。市民街が大雑把に描かれている。

「ここと、ここくらいがたぶん要望に合うと思うわ」

 地図に印を付けてくれる。

「ありがとうございます」

「気をつけるのよ?」

「はーい」

 さすが本部は地図までくれるなんて、ちゃんとしてるなぁ。


 歩いて教えてもらった宿を探す。

「出てけ!このすっとこどっこいが!」

 急にドアが開いたと思ったら男が放り出される。

「お、覚えてやがれ!クソ女!」

「ふんっ!…おや?宿を探してるのかい?」

 太マシいお姉さんが腕まくりをして寄って来る。

「宿ならここにしときな、私がいるから悪さする輩は今みたいに追い出すからね!」

「あ、はい」

 あまりのオーラについYESマンになってしまった。


 錆猫の居眠り亭と言う宿屋で、女将さんの名前はモニカ。ここらの宿はこの宿の支店らしい。

「んで、何泊するんだい?」

「とりあえず五日で」

「五日で朝飯込みで一万五千ルビーだよ」

 安い!ここなら宿代が他の町と同じくらいだ。

「はい。よろしくお願いします」

「礼儀がいいねぇ、よろしくね」

 部屋に案内されると、ベットに小さな机と椅子があり、窓もある。いい部屋だ。

「朝飯に遅れないようにね」

「はい!」



 一人になってベットに腰を下ろす。

「ふぅ、これで落ち着いて動けるな!」


 宿が決まればあとは東区の魔法屋にいってみる。

 貧民街ってことだが、結構綺麗にしてあるな。路上にはストリートチルドレンがギラギラした目で見つめているが、俺には関係ない。

「なぁ、兄ちゃん。何処か探してんのか?」

 一人が話しかけてくる。髪はボサボサで服もボロボロの男か女かもわからない子供が話しかけてくる。

「あぁ、魔法屋はどこにある?」

「ん、」

 手を出してくるので百ルビーを渡す。

「ちっ!けちぃな。まぁいいや、着いてきな」

 こ、このガキが!


「ここだぞ」

 趣のある。ってかボロ屋だな。

「おう、ありがとな」

 千ルビーを渡すと、

「なんだよ!お兄さん、またよろしくな!」

 けっ!もう頼まねぇよ!


 建て付けの悪い扉を開くと、中には婆さんがカウンター越しに睨みを利かせている。

「客だ。そう睨むなよ」

「あん?愛想はとっくの昔に捨てたよ」

「ふぅ、そうかよ。んじゃ、いい魔法玉はあるかい?」

 婆さんはニタッと笑うと、

「強化、呪い、支援、が最近だと入ってきたね」

「おっ!んじゃ強化と支援をくれ」

「強化が七十、支援が五十万だよ」

「百二十だな」

 白金貨一枚と金貨二十枚を渡す。


「おほぉー、白金貨なんて久しぶりにみたよ」

 大喜びの婆さんが奥から魔法玉を持ってくる。

「こっちが強化で支援だよ」

 一応鑑定で確認すると間違いはなかった。

「他にはなんかあるか?」

「んあ?あとはスクロールがあるくらいさね。あ、感知があったはず」

「んじゃそれもくれるか?」

「あいよ!八十だよ」

「足元見過ぎだ。四十だろ?」

「七十」

「五十万」

「……分かったよ。また買いに来ておくれよ?」

 ほんと困った婆さんだぜ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


コタロー・カザマ 十五歳

 レベル65

 力 A+

 体 B+

 速 A+

 魔 A+

 運 B-

スキル 五行魔法(火・水・土・風・雷)        

    闇魔法 光魔法 回復魔法 転移魔法 時空間魔法 強化魔法 支援魔法

    剣術 槍術 棍術 体術 盾術 感知

ユニーク 


 黒の魔女の弟子

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 強化魔法……身体強化、視覚強化などの魔法が使える。

 支援魔法……アクセル、ガードなどの支援魔法が使える。

 感知……罠感知、危機察知など感覚が研ぎ澄まされる。


 魔法屋を出るとさっきの子供がいた。

「次はどこだい?」

「いや、もういい」

「なんだい、金はさっきので十分だから案内してやるよ」

「…ならオススメの店はあるか?」

「あぁ!とっておきの店があるぜ!」

 しょうがないから着いて行くと、魔動具屋?


「おっちゃん!客だぜ!」

「なんじゃ?客?ガラクタしか置いてないぞ」

 杖をついた禿げた爺さんが奥から出てきた。

「ここの魔動具はおっちゃんが作ってんだ」

「へぇ。掘り出し物があるかもしれないのか?」

「そう!ちゃんと見てやってくれ」

「だからガラクタしか置いておらんぞ?わしは知らんから勝手に見ていけ」


 自動マップや煙玉なんかもあるな。

「これなんかどうだ?」

「なんだこれ?」

 中に魔石が入ってるのは分かるが、四角い箱型のものを見せてくる。

「さぁ?」

「ぷっ!あっはっは。なんだよお前も分かんないのかよ」

「しょ、しょーがねぇだろ!おっちゃんにしか分かんねーんだから」

「親父!これはなんだ?」

「ああん?そりゃ、あれだよ。あれだ」

「「あはははは」」

 親父もわかんねぇのかよ!


「自動マップを買うわ。これでいくらだ?」

 自動マップを一掴み持ち上げる。

「けっ!三千でいい」

「おう、三千な」

 三千ルビーを支払い、アイテムボックスに入れる。

「アイテムボックスか?いいなぁ!」

「だろ?そうだ、ここ座っていいか?」

 店先の椅子を指差す。

「勝手にしろ」

「親父もこっちこいよ。いいものやるから」

 親父も呼んでハンバーガーとポテトとコーラを出す。


「うんめぇ!これ!」

「だろ?って親父はバクバクくってるな」

 親父は凄い勢いで喰っている。

「俺はユピーだ。兄ちゃんは?」

「コタローだ。よろしくな」

「おう!」

 それからしばらくは黙って二人ともガッついていた。


「ふぅー……美味かったぜ」

「おう、そりゃ良かった」

「コタローは何しにここに来たんだ?」

 何しに?

「別に?旅の途中だ」

「旅してんのか?すげぇな!」

 ユピーはキラキラした目で俺を見てくる。

「旅って言っても目標があるわけじゃねえからな」

「でもすげぇよ。俺なんてこんなとこでしか生きられないからな」

「ちゃんと生きてんだから大したもんだよ」

 生きてりゃなんでもできんだからな。


「美味いもんありがとな」

 親父はそれだけ言って中に入っていった。

「なぁ、そろそろ帰るだろ?」

「あぁ、また送ってくれるか?」


「もちろんだ」

 

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