第12話 日本とルナディア


 魔法屋を出て宿に帰る。

「さて、少し日本で買い物しておくか」

 日本の服に着替えて自宅に転移する。


「やっぱ家はいいなぁ」

 机には親父の手紙がまた置いてあった。

『帰ってきたらちゃんと掃除するように!』

「くはぁー、前回掃除していかなかったからなぁ」

 俺は極力汚さないように心がけて外に出る。

「とりあえずはシャイン達に取られた物の補充だな」

 まだ金は残ってるし、多めに買っておこう。


 外を歩いていくと中々ファンタジーな格好の人が多いのに気付く、コスプレかな?っと思ったが、ダンジョンのある世界だったのを思い出す。


「いやぁ、日本も変わったなぁ」

 さすがに鉄の装備なんかじゃないが、今風のボディースーツのようなものを着てる人なんかがいて、俺も少し欲しくなった。

 スマホをいじり、ダンジョン用の防具で検索してみると、

「たっか!ゼロが何個続いてんだよ」

 一千万やら億の防具なんてだれが着るんだよ!こちとら五十万ルビーの防具だっつーの!それでも高いと思ったんだからこっちの防具なんか絶対買わねぇ。てか、買えねぇ。


「はぁ、カルチャーショックだわ」

 軽い眩暈を覚えた俺はヨタヨタと公園のベンチに座る。流石に買わないけど、あんな高いのをみんな買ってるのか?金銭感覚馬鹿になってんじゃねぇか?


「おいおいおい、ちょうどいいのがいるぜ」

「おぉ、天は我を見捨てなかった」

 気付くと変なロン毛とデブが俺を囲んでいた。

「何?」

「何?だってよ!あははは。まぁいいや」

「俺たち金なくて困ってんだわ」

 あ、カツアゲか?てか、コイツらは金銭感覚バグってないみたいだわ。

「なぁ?こんなのみんな買ってんのか?」

 俺はスマホを見せて聞いてみると、

「ば、ばっか!こんなん買えるわけないだろ!どっかのボンボンが買うか、一流冒険者が買うくらいのやつだぞこれ」

「俺たちみたいなのはワークマソの防具が普通に決まってるだろ」


「だよね!あー、よかった。ありがとう」

 俺は間違ってなかった。

「って、何逃げようとしてんだ?」

「そうそう、払うもん払ってから帰れや」

 あぁ、可哀想な奴らだ。自分の力量を知らないなんて、分からせてあげないとな。

「ばーか、あーほ、まーぬーけー」


「んなっ!なんてチープな貶し方!」

「泣いてもゆるさねぇぞ!」

 ワナワナと震えるロン毛とデブ。

 殴りかかってきたから返り討ちにしましたよ。そりゃもう丁寧にね。

「「ずいばぜんでぢだ」」

「はい、よくできました」

 若者と接するのはやはり真心が大事だよね。


「お前たちもダンジョンに行くの?」

 ちょうどいいから回復して色々聞いてみる。

「うっす!恥ずかしながら行かせていただいてます」

「いや、もうちょっと普通に話せるだろ」

 やりすぎたか?

「はい。最近は潜ってないですが、それなりにやってました」

「へぇ、何階層まで行ったの?」

「自分らは十階層までいったっす」

「十階層のボスを倒したのは良かったんですけど、仲間が怪我してしまってポーション代を稼がないといけないんですが」

 デブのほうが泣き出した。

「怪我したのが攻撃の要だったんで、俺達二人じゃどうにもならなくて、こんな事で金作ろうとして……すいませんでした」

 ロン毛が頭を下げる。

 んー、悪い事して金稼いでもだめじゃん。まぁ、今回が俺でよかったな。


「つぎはこんなことすんなよ?ほれ」

 中級ポーションでいいだろ。

「え?!こ、これは?」

「仲間に使ってやれよ」

「これ、上級ポーションじゃないっすか!」

「いや、中級だぞ?」

「俺見たことあるっすもん!これは上級ポーションっす」

 え?こっちではこれが上級ポーションなのか?

「こんなの貰えませんよ」

「いいよ、つぎからはこんなことしなければ」

「「あ、あざます!!」」

 そっかぁ、こっちでは中級が上級なんだな。じゃあ上級は?エリクサーとか?


「仲間によろしくな!」

「「はい!ありがとうございます!」」

 ロン毛とデブは走って去っていった。


 いやぁ、ルナディアと日本の格差が激しいのか?なんか怪しいなぁ。


「ギルドに行ってみっか!」

 色々わかることがあるかもしれないしな。

 スマホで調べギルド渋谷支部へ。


「ほぉ、てかビルかよ」

 でかいビルの一部がギルドになっていて、そこにダンジョンの出入り口もあるらしい。

 ビルに入るとそこは広いエントランスになっていてフロントに向かうと受付が五つ、上にある案内には『受付』が三つ『案内』が二つある。真ん中にタッチパネルがあったので案内の番号レシートを取り待っていると呼ばれたので行ってみる。


「本日はどのようなご質問でしょうか?」

 受付のお姉さんはやはり綺麗どころを揃えていらっしゃる。

「えー、ポーションの買取なんかはやっているのですか?」

「はい、ポーションなどの買取は二階の買取り窓口が御座います」

「あとは若返りの薬なんかってありますか?」

「え?えーっと当ギルドでは扱っていないと思いますが」

「ですよねー!すいません、変な事聞いて。では、冒険者登録にはマイナンバー以外だとどうすればいいですか?」

 少し困惑したお姉さん。

「え、それはマイナンバーを登録いただきしだいになりますが」

「分かりました、ありがとうございます」

 やっべぇ、変な奴と思われたみたいだからさっさと二階に行くか。


 二階に上がると買取カウンターは目の前だった。

「いらっしゃいませ」

 こちらはおばちゃん対応かよ。

「このポーションを売りたいのですが」

 初級ポーションを五個出す。

「ちゅ、中級ポーション?!で、ではギルドの会員証をご提示ください」

「あ、やっぱ会員証がいります?」

「いりますね」

「ならいいです。すいません」

 そそくさとポーションをしまって帰る。


 ビルの外に出ると涼しい風が頬を撫でる。

「焦ったわ。やっぱ会員証いるよな」

 でも初級が中級ポーションで合ってたな。あいつらもちゃんとした事言ってたみたいだしこれでよくわかった。

「にしてもこっちの初級ポーションってどんなんだよ?」

 薬草煮込んだだけのやつとか?

「あ、親父に売って貰えばいいか。今度そうしよう」


 それからは大量の買い物をしてからルナディアに転移する。

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