第8話 早苗との出会い

 早苗と初めて会ったのは当時勤めていた会社の新年会が終わったあと、同僚数人と二次会に出かけた時の事、居酒屋に立ち寄ったが満席で、これでは仕方がないと同僚達は帰って行った。俺はせっかく来たのに席が空くまで待とうと、店内を見渡したら誰かが手招きしている。てっきり俺じゃないと思ったら俺を指さしていた。

「よろしかったらどうです」

そう声を掛けられた。しかもうら若き女性ではないか。

「よろしいでしょうか。助かりました」

「いいえ私も友人が、用事が出来たと帰ってしまい、退屈していたところですよ」

「そうですか、失礼します」


 俺は軽く挨拶すると彼女は、俺の胸元のバッチを見てニッコリした。

 「驚いたぁ同僚の方じゃないですか」

 「と、いう事は貴女も安田物産の方ですか。それは偶然ですね。僕は営業部三課です」

 「あっ私は総務部です。宜しくお願いします」

 同じ会社と知って意気投合し話が弾んだ。安田物産は従業員の数が一万人以上の大企業で本社の近くとあれば顔を知らなくても、周りには沢山いる。新年会も各、課や部で行うから、彼女とは一緒ではなかった。そんな彼女から声を掛けてくれたが、 特に積極的な女性と言う訳でもなく、困っている人をほって置けない性格らしい。

 聞けば東北の出身らしく多少、東北訛りが見え隠れした。そんな彼女が新鮮に見えたものだ。それがやがて交際に発展し二年半後、結婚する事になるとは、今思うとこれも運命なのだろうか。ついあの日が昨日のように思い出された。


つづく

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