第7話 東北新幹線で八戸へ

 仕事では何度か利用した東北新幹線だが、今はまったく気分が違う。気負うこともなければ楽しい気分とも違う。旅に出て今後の人生に置いて夢か希望が見えてくれれば良いと思っている。気がつけばもう仙台に到着した。だが失敗したと思った。急ぐ旅でもないのにこれでは情緒なんて楽しめやしない。駅弁を買おうにも降りる暇もない。諦めていた処へワゴンを引いて売り子が入って来た。(二〇二一年現在、車内販売中止)仙台で仕入れたのだろか、仙台の駅弁があった。


種類も豊富で仙台と言えば名物の牛タンだろうが、その他にも、かきめし、牛肉重、歴史好きの俺は伊達武将隊弁当に決めた。

 やがて列車は八戸に入りそこで降りた。いきなり潮の香りが鼻をつく。俺は外を眺めた。たった三時間あまりで別世界。此処は漁業と工業ある町である。そして別れた妻の故郷だ。あれは二十九歳の時だった。あれほど緊張したのは後にも先にも一度だけだ。つまり結婚の承諾をして貰う為に訪れたのだ。昔ながらの家なのか築五十年以上は経っていると思われた。柱も太く東京では見られない屋敷という部類に入る。門も武家屋敷を思わせるような家だ。

 さていよいよ早苗の実家に赴き、『早苗さんと結婚したいと』申し込むつもりだ。早苗は既に実家で待っているはずだ。

『どこの馬の骨とも分からん奴に嫁にはやれん』なんて言われるんじゃないか? と、ゾッとしたものだ。 

 

つづく

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