第8話 ◆ヒカリの注釈

 明確に、変わった。

 それは纏う空気でわかった。

 彼の桃娘らしいハツラツとした雰囲気に陰りが見える。声にハリもなく、目の下にはかすかに隈ができていた。


 そう、それは私の誘導。

 私はナニカに言われ、太郎がそうなるように導いた。要するに、自殺に関する物語を描くよう太郎を誘導したのだ。

 結果として、彼は電車に飛び込む男を主人公とした物語を描いた。きっかけは私。経過は想定の上。


 太郎には才能があって、幸せに生きる権利がある。


 だから、彼が辛そうに見えたとしても、それは目的に通ずる道なのだ。

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