第7話生まれ変わり

ゆっくり、ゆっくりソレは近づいてくる

コツ、コツとローファーの音が響き渡る

まだ、暗闇。

凝視

まだ、暗闇。

凝視

月のもとに晒されるその顔は、


早苗 すみれその人である


「お前、」

柄屋敷のかすれ声を耳だけで聞いた



「何ですか、、見ないでください、、、」

早苗の声は若、干引き気味。大人しい子にしてみれば、

人から、声をかけられるだけで

何だか怖いと感じる子もいるだろう。


「柄屋敷。キミ、何かしたんだよねー」

鳥島の余計な一言。


「何したんですかッ」ヒステリックに問いただす

「、、、しました」

「はぁ?」

「殺しました」

「わたし生きてるんだけど」辛辣に返す

「だよなァ」

「、、変なこと言わないでください」

気持ち悪い と続きそうな発音。変なのは現実だ。オレじゃねぇ。


「いや、本当なんだけど」

「、、、大丈夫ですか」

「一応、大丈夫」

「ねじ、落としてるとおもうんですけど」

なんのとは言わない。


「喋り方、同じにできねぇのかよ」

「どちらも私なんですけど、気持ちで、引っ張られるんです」

すみません と顔が言っている。

「そうかよ」

ばつの悪そうな顔になる


「あの、どこで、ですか」

「なにがだ」

「どこで殺ったかって聞いてんです」

「左の地下一階」

「どういう風になんでしょうか」

「言った方がいいのか」

「内容によっては殺しますから」

「、、、金づちで、頭をミンチにした」

「今すぐ死んでもらわねば困りますね。」蔑み


「どういう発想をしたら、ヘッドミンチにしようと思うんですかッ」

「一撃で殺そうとしたけど、狙いがそれた。それで頑張っただけだ、悪気わるぎはない!」

悪意あくい大ありじゃないですか!もうちょっと綺麗にできなかったわけ?」

「殺し方に綺麗もなんもねぇだろがァ!あと、悪意じゃねぇ悪気わるぎだ!」

「うっさい!!ヘッドミンチよりは、痙攣→泡→失神→死亡のほうがまだ、マシ!」


ぐぬぬと睨み合って、言い争う被害者と加害者。

「あの二人、仲いいね」

鳥島がまた言ってる。

「そうですか」


「わたしを殺したなら、死体はどこにあるってんのよ」

「そりゃ、地下一階だろ。死体が歩くなんてないし」

、、、ウォーキング、、デッド?

「そう」


<例えば天井うえに四つ足で這う>とかあり得そうじゃん。


そんなこと言われたら、上を見てしまう


想像してしまう


顔のない、早苗 すみれの死体。

首だけこちらに向けて

様子をみている


目がない、顔がない。ただ、目が合っているとか感じてしまって

理解できない。


顔はイチゴジャムのように。数本の髪の毛を混ぜ合わせた、、、


あ、バカだアタシ。

吐きそう。


誰にも言わず、伝えず、一人トイレに駆け込む。

ぉうぇぇええぇえぇえ

何を食べたわけじゃないのに、

胃液だけ吐き出して、

喉が、ひりひりする。

とっても、惨めな気分になる。

レモンマーマレードが食べられなくなりそう。

すっぱくて、どろどろ


今では珍しいレバーを下ろし、ジャーと流れていく

薄暗いトイレの個室。冷たい便器。昭和を彷彿とさせる、タイル張りの室内。


便座の蓋の上は、いい具合にツべたくて心が鎮まる。

「出るかぁ、、、」

口を洗って、うがいしておきたいし。

手洗い場の鏡。

久しぶりに自分の顔を見た。

髪の毛ぼっさぼさ。げんなりして目は虚ろにも程があるくらい

へへへ。これがアタシか。


ガラガラ。ぺ。


手を洗っていると頬に水が当たる。

「あれ、、

水にしては粘っこい

「あ」

鏡を見てしまう


早苗もどきが背後にいる。

今、頭の辺りに首がある


「~~~~~~」

声を出さずに、人生で一番の叫びをあげる。


案の定


柄屋敷と早苗と鳥島はまだ同じところにいた。

良かった。


「うお!こっちくんな!!」

「え?いやぁ!!」

「あっ?あ!あッwww」

揃いも揃って逃げやがって


「ちょ!なんで逃げるの?!」


「うしろwwうしろ!」

腹立つが、島鳥に従ってみる。


早苗もどきが目と鼻の先にいた。

ここまで近いと、豚肉みたいに見えてくる。

「ヒィッ!!!」

ぎゅんと首を前に向く。今の首の動きでむち打ちになったような気がする。

少なからず、鼻に生肉が当たったような感触があったが嘘であってほしい。


いや、全速力で走る歩く死体ウォーキング・デッドってなによ

もう矛盾してね?


「アカネ、私の321でしゃがむんだ」

「え、なにk」

「とりあえず、耳塞いでダンゴムシになるんだ!」

「3・2・1」

耳塞いで、ダンゴムシ。

銃声が鳴り響く。花火のように、雷のように、脳みそを揺るがす


つい癖で、目を閉じる。


ぶしゅ!っとはじける音。炭酸を開けた音のようだ


感性の法則でゴロゴロ転がっていく流れで

突き当りの壁に背中をぶつける。

さかさまの世界

向こうに見えるのは、一面ケチャップ祭り。


「今日も立派に正当防衛キメて。腕良し、顔良し、さすが、可愛い私だ。」

「下手すると追いつかれて、死んでいたかもしれませんね、、」

早苗は冗談じゃないという顔をしている


「脳みそか、心臓か、、」

どちらも人にとっては必要な要素。


早苗もどきは頭が無くても、動けた。


心臓、なのだろうか



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