第2話:中毒
右塔三階。:早苗 すみれ
開始早々、入り口から最も奥にある事務机の下に隠れていた。
薄暗い室内に月明かりが差し込む。
マシュマロのようなクリーム色のカーデガンと夜色のセーラー服に、
黒い二―ソックス。手入れされた黒いローファー
うず高く積まれたほこりにまみれて、息が詰まりそう。
だが、何も言えない。
誰かに見つかってしまいそうで。
下に隠れているということは何も見えない状態である。
逆にいえば、周りからバレない。
ちょっと目を外へやる 猫みたく静かに。
恐る恐る頭を出して辺りを見回す。
、、、誰もいない。いなくてよかった。
いたら、殺さなくてはいけない。
面倒くさい。
さすがにいつまでも動かないのは気が引けるので、下に降りてみようと
立ち上がる。
廊下まで出てきたところで
ナツメグ「さぁ~なえちゃん。あっそびましょぉ~」
早苗「うわぁ」声を抑えきれなかった。
苦虫をかみつぶしたような、しっ
悪趣味な笑みは某森のお化けのようだ。
森のお化けファンの私にとってこれ以上ない侮蔑《ぶべつ》だ
部屋の入口のすぐ横で待ち伏せしていたのだろう。
黒地に白のクソださフォントのTシャツとドギツイ赤色の髪の毛。
てっぺんは、うっすら茶色くなっている。おそらく地毛。
右手にスマホを取り付けた自撮り棒。(一番短くしている)
早苗「なんでしょうか、、」
ナツメグ「君に、惚れちゃった☆」
びっみょーにへったくそなウィンクかましてんじゃじゃねーよ
ただの痛いお兄さんか、配信者気どりか知らないが
どちらにせよ嫌いな類の人だ。
まわれ左をして中央塔三階を目指す。
すたすたと先を急ぐ。
こういう面倒くさい人から逃げるには、逃げることが第一だ。
大事なのはは逃げる事。
逃げる事。
にげr、、、
ナツメグ「ちょーっと殺さないからー。安心して」
こちらの二倍の速さで隣に居付き左肩をつかむ。
ナメクジみたいな触り方
早苗「」ぞわぁ
振り返ってスプレーボトルを向ける。
プシューーーツツ
レモンなどを搾り取ったお手製の催涙スプレーである。
まんべんなく掛けた。
ナツメグ「ギャァァあぁぁあァぁァ」
催涙スプレー
持ち歩くようになったのは
変質者に襲われたから。
変質者に襲われた時から、早苗はすみれになった。
早苗すみれは私の中にいるもう一人の私。
もはやうざったい。
すみれ「やらしい手で触るな」
便利道具ポーチから
小型強力電圧スタンガン。これも護身道具の一つ
ナツメグ「あばばばばばっづ」
ちっ、、思わず首を狙ったけど、コイツの皮脂が付いた。最悪
あとで拭いとかないと。拭くのも、、、穢れる。
めんどい。
煌々と月が照らす廊下。伸びたカエル。、、いや、仰向けのウシガエル。
それを、
気絶したナツメグの上着のポッケから何かがはみ出している。
クッキーがでてきた。可愛らしくパッケージにされたやつ。
淡いピンク色を基調とした繊細なレース模様がプリントされている。
人によっては甘いと感じるだろう。
袋に着けられたタグには特別と書かれている。
ん?
すみれ「スマホで、配信してら」
汚物をつまむようにスマホを持ち上げる。
0:35~LIVE配信
タイトル:☆これから実験をするよっ!今回のターゲットは、おとなしそうなコ☆
#実験 #女子中学生 #話題のニュース #ナツメグの実験チャンネル
早苗 すみれは 女子中学生。
ネット中毒気味。情報には強い方だと思っている。
スマホで、調べてみることにした。
画面のタップ音はサイレントモード。周りへの配慮。
#話題のニュース_女子中学生_今年_I
目立ちたがりの子もいれば、何故と思える子もいる。
犯人は未だ捕まっていない。
#ナツメグ_実験_I
ナツメグの致死量:小さじ二杯ていど
もしかして:ナツメグの実験チャンネル
過激な実験をすることでバズ理想を追い求めるタイプの配信者
一部の界隈ではカルト的な人気。本人曰く不神論者。
→
丁度ここには事務用品がたくさんある。
一応動けないように体を事務机の足にでも紐で縛っておこう。
現在、0:30ライブが始まる前にもかかわらずコメント欄は賑わいを見せている。
>いいね、楽しみ
>ひゅー過激派ぁ
>wktk
・
・
・
続々、流れるコメント欄
さて、始まる前に終わらせるか。
すみれ「見えているか」
ナツメグ「ク、、ッケホ、、ッあぁ?」
ようやくお目覚めか。
すみれ「このクッキーは自分で作ったのか?」
ナツメグ「そうだ。んだよ、食べたいって言うなら」
違う。
すみれ「ちゃんと、味見したのか?」
お前が喰えばいい。
ナツメグ「」
どんどん青ざめていく。顔は色白の早苗 すみれ より真っ白くなっていく。
がくがくと小刻みに揺れ出し、目は焦点を合わせられず、冷汗は
黒字に白で俺☆サイツヨとか書かれてるダサいTシャツを湿らせていく。
すみれ「さぞや、バズ理想だよな」
食べるまいとナツメグは、ガタガタ滅茶苦茶に暴れる。
とりあえず、顔を鷲掴みして固定。
ちょうど目は隠れてしまうが問題はない。
良い焼き加減の砂糖が多そうなクッキーを
三枚一緒に口にねじ込む
結果として痙攣し動かなくなった。
ああ、汚い。
ただそれだけである
こんな男でも、誰かの役に立つことはある。
首根っこを掴んで(本当は触りたくないがしかたなく)引きずってゆく
中央塔0階 切断機前
砲丸投げの要領でグルグル振り回し、手術台のようなところにぶち込む。
、、、手荒くし過ぎたか?まあいいか。
スイッチ、オン。
上から蓋が被さり、ちゅいーん と歯医者さんの音がする。
びしゃ!っとする音が時々聞こえる。
コンベアーを右に流れるころには、きれいになった 頭、体、両腕、両足。奥の方に吸い込まれて、消えてった。
服は着たまんまだった。
スマホを確認する。
[通知☞ぽいんと:獲得10pt]
シュッ
[通知☞いきのこり:あと4人]
シュッ
デスゲームに参加したのは
すみれ(及び早苗)
SNSアカウント名:
できるなら、狙われることをなくしたい。
いちいち、対応するのも面倒くさいから。
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