第2話 変化の始まり

私がコーヒーを飲み干した直後、特に変わったことは感じられなかった。しかし、涼子は私がコーヒーを飲んだことに安堵の表情を浮かべていた。私はその時、涼子が何か秘密を抱えていることに気づいたが、その場で尋ねる勇気は持てなかった。


涼子と私はその後、お互いの近況を語り合い、楽しい時間を過ごした。私は涼子の研究の話をもっと聞きたかったが、彼女は詳細には触れず、他愛もない話題で会話を進めていた。


コーヒーを飲んでから1時間ほど経った頃、私は少しトイレに行きたくなったので、カフェを一時的に離れることにした。トイレに入り、用を済ませてドアを開けようとした瞬間、ドアノブが急に壊れて手に取れてしまった。


驚いて近くにいた研究室の職員に謝りに行くと、彼は「古かったのかもしれないので、気にしないでください」と言ってくれた。しかし、私はその時、何か違和感を感じていた。自分の力が以前よりも強くなっているような気がしたのだ。


戻ってくると、涼子はどこか緊張した様子で私を待っていた。私はその時、涼子が何か言いたげなことがあるのではないかと感じたが、彼女が自ら話してくれるのを待つことにした。


その後も私たちは何気ない話を続け、やがて別れの時間が訪れた。涼子は私に笑顔で手を振りながら去っていったが、その背中には何か重い荷物を背負っているような印象が残った。


そして、コーヒーを飲んでから2時間が経過した頃、私は突然、体の変化に気づくことになる。


コーヒーを飲んでから2時間が経過した頃、私はいくつかの変化に気づいた。まず、力がみなぎる感覚が強くなり、私は日常の動作で物を壊しかけたり、ふとした瞬間に力が抜けてしまったりした。


ペットボトルのキャップを開けるだけで、そのキャップが弾丸のように吹っ飛んで、部屋の反対側の壁に激突し、その衝撃で壁に小さなくぼみができてしまうほどだった。私は驚きで言葉も出ず、ただポカンと口を開けたままその現場を眺めていた。


また、ドアを開ける時も、いつものようにふつうに引っ張るだけで、ドアが勢いよく開いて、ガラスが割れる寸前まで揺れ動いた。私は慌ててドアをつかんで、他の人がいる場所で同じようなことが起こらないように注意を払うことにした。


このように、力がみなぎる感覚は日常生活の中で次々と顕著に現れ、私はその変化に戸惑いを隠せなかった。普通の力加減で物事を行うことが難しくなっており、私はどうしてこんなことになってしまったのか理解できず、不安を感じていた。それでも、涼子と再び会う約束をしていることで、何か手がかりが見つかることを期待していた。


その日の夕食は、普段なら十分満足できる量の料理が並んでいた。まず、焼き魚のさわらを柔らかく焼いたものがあり、その香ばしい匂いが部屋中に広がっていた。また、炊きたての白米はふっくらと炊き上がり、私はその匂いに誘われるようにご飯をすくった。野菜は、ブロッコリーとニンジン、ピーマンを使った彩り豊かな炒め物があり、オリーブオイルとにんにくで味付けされていた。


しかし、その日の私は、それらの料理では全く満足できなかった。一度に大量のご飯を口に運び、焼き魚もあっという間に食べ終わった。野菜炒めも、普段なら少し残すこともあるのに、その日は完食してしまった。


夕食の後、私はまだお腹が空いていることに驚き、冷蔵庫を開けては食べ物を探し求めた。果物やヨーグルト、さらにはアイスクリームにまで手を伸ばし、その量は驚くほどだった。友人からも「どうしたの?こんなに食べるなんて珍しい」と心配されるほどである。私自身も、こんなに食べたことがないと感じていたが、食欲が止まらないことに戸惑いを感じていた。


私はこの突然の変化に戸惑い、不安を抱え始めた。なぜこんなに力がみなぎるのか、そして、どうしてこんなに食欲が増したのか、理解できなかった。涼子が私に何か秘密があるように感じたので、まずは彼女に真相を聞くことに決めた。


私は涼子に連絡を取り、彼女に会いたいと伝えた。涼子はすぐに承諾し、私たちは再びカフェで会うことになった。そこで、私は涼子にこの突然の変化について話し、彼女が知っていることがあれば教えてほしいと頼んだ。


私は涼子に連絡を取ることを決め、スマートフォンを手に取った。LINEアプリを開き、涼子のアカウントを探して、彼女にメッセージを送った。


「涼子、ちょっと会えるかな?」


数分後、涼子から返信が届いた。


「もちろん、どうしたの?」


「実は、ちょっと変なことが起こってるんだ。話してもいい?」


「大丈夫、心配だね。どこで会いたい?」


「さっきのカフェでいい?」


「分かった。じゃあ、30分後にそこで会おう。」


「ありがとう、助かる。それじゃあ、また後でね。」


「うん、待ってるね。」


私は涼子とのやり取りを終え、胸をなでおろした。涼子が快く会ってくれることに感謝し、この突然の変化について話し、彼女が知っていることがあれば教えてもらうことを期待していた。


私は涼子との待ち合わせに向けて、カフェに向かい始めた。しかし、カフェに行く途中で、また突然の空腹が襲ってきた。空腹は徐々に強くなり、ついには歩くのが困難になってしまった。


カフェが目の前に迫っているにもかかわらず、私はその場に立ちすくんでしまい、うなだれるしかなかった。私の体は食べ物を切実に求めているように感じられ、どうにかしなければと焦りを覚えた。


その時、涼子がカフェから姿を現し、私の状態に気づいた。彼女はすぐに私のもとへ駆け寄ってきて、心配そうな顔をして声をかけてくれた。


「大丈夫?どうしたの、こんなところで?」


「ごめん、涼子。急にすごくお腹が空いて、歩くのがつらくなってしまって…」


涼子は私の言葉を聞いてすぐに行動に移り、近くのコンビニへ走っていった。すぐに戻ってきた彼女は、おにぎりやお菓子、飲み物を持ってきてくれた。ありがたくそれらを受け取り、食べ始めると、体が少しずつ力を取り戻していくのを感じた。


涼子は私が落ち着くまで見守ってくれて、私は彼女に感謝の気持ちでいっぱいだった。その後、私たちは無事にカフェで落ち着いて話すことができたが、私はこの突然の空腹の原因について、涼子に話さなければならないと思っていた。


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