道路標識⑤
三鷹が道路標識になってから3日たった。
三鷹と標蔵はとても仲良くなっていた。
動けないため話くらいしか出来ないが標蔵の話はとてもおもしろい。
道路標識側からの人間の話だったり考え方だったりを教えてくれる。
違う視点の見方は面白い。
また彼も元は人間だったらしく三鷹は人生観を教えてもらった。
標蔵は言った。
「人生は選択。自分が選択した道は責任を持って歩みなさい。」
ーーーーその夜ーーーー
緊急速報!
台風X号が強い勢力で本州を横断します。
家屋が吹き飛ぶ程の巨大な台風です。
安全に避難してください。
しかし津波の心配はありません。
やけに家の中が騒がしそうだった。
「今日の夜大型台風来るらしいやんか。」
標蔵は少し心配そうに三鷹に言った。
家屋が吹き飛ぶ程の巨大な台風、、、
俺らの命が危ない。三鷹は標蔵から教えてもらったが、
俺らの個体である道路標識が壊れた時に俺らの魂は天界にある道路標識協会の所へ行き新しい地域の道路標識に魂が行くらしい。
会社で言う転勤みたいな?
とにかく三鷹は標蔵と離れたくなかったため、台風対策をした。
自分の身体に力を入れて落ちていた紐で身体を固定した。
標蔵も同様の事をした。
これであとは耐えるだけ。
台風は家の中のテレビが午前1時にここを通過すると言っていた。
今は午後8時。5時間も間があるから余計に緊張する。
三鷹は眠くなってしまった。
そして三鷹は眠ってしまった。
つぎの朝。
目を開けると俺は無事だった。
しかし標蔵の気配は無い。
まさかと思って標蔵の方をみた。
標蔵の個体である道路標識は折れてしまい完全に魂がなくなっていた。
一瞬戸惑ったが、これを定めだと思った。
自分が道路標識になると決めたから標蔵がいなくても人生を歩んでいかなければならない。
標蔵と初めて出会って1ヶ月たつがこの短い期間の中でもあいつは俺に人生観を教えてくれた。
アイツは形として曲がってしまったが俺は曲がらない。
アイツは死んだ訳では無い。
むしろ場所が変わったほうが標蔵にとっても良いだろう。
俺は空を見た。
青空ではなく曇っていたが俺が見えるのは雨だ。
標蔵今頃なにしてるかな?
ふと無意識にこう思った。
少し悲しみを引きずっていたかもしれない。
もう標蔵とは二度と会えない。
二日後
やっと気持ちはおさまった。
しかし泣いてはいない。
別れも出逢いの始まりもこれから先あるのだから。
もし泣くとあの人間のときの俺みたいになってしまう。
俺はこの道で良かったと思いたい。
その頃
標蔵の魂は天を昇っていた。
「俺らの生活もこれで終わりか。」
標蔵はそう思った。
「人生は選択。自分が選択した道は責任を持って歩みなさい。」
標蔵は自分の中で呟いた。
何日過ぎただろうか。
標蔵はやっと天界の道路標識協会の入り口に辿り着いた。
そして標蔵の魂はその中に消えていった。
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