道路標識④

三鷹は標蔵のいる道を歩いていた。

標蔵も三鷹がこの道を歩いている事を知っていた。

一種の勘のようなもので。

標蔵は三鷹が見えたので奇妙な笑みを浮かべて三鷹がここに来るまで気づかれないよう黙っていた。

三鷹が不格好な足取りで標蔵の元まで行くと標蔵は手を擦りながら話した。

「いや~もう来ないと思ってましたけど着てくれたんですね。」

決してそういうことではなかった。ただ今の状況に疲れていてたまたまここを通っただけだった。

勿論三鷹は疲れて過ぎて言えなかった。

「返事がないということは貴方がここに来るのことは必然的なのですね。」

違う解釈をされた。

「ところで返答してくれません?

朝の提案についてを、、、、、、」

少し優しく微笑みながら言った。

道路標識になるか、、、

勿論なれば動けない。年を取らない。何なら妻を見捨てる事になる。

けれど今の状況から逃げるには持って来いのチャンスだ。

標蔵は知っていた。

人間状況が悪化するとその状況からは逃れようとする習性があることを。

この日のために人間について勉強しといてよかったーー

心の中で標蔵は思った。

しかし三鷹は返事をしなかった。したら楽になるのに。

そこもまた人間の習性である。

「そろそろ決めちゃってくださいよ~。もう寝たいんだから。」

三鷹はコクリと頷いた。

標蔵は目を輝かせていた。

これで三鷹がなってくれれば地位と名誉が与えられるから。

そこら編の道路標識とは違う選ばれし道路標識になれる。

そう想像するだけで期待感が膨らむ。

再度三鷹を見るともう決めたような雰囲気だった。

「なりますか?ねぇ。」

三鷹は言う。「なります、こんな生活耐えれません。妻より早く死んでしまうう。妻には申し訳ないが元々というと俺が標蔵さんの提案を断ってからこうなりました。俺が提案にのれば妻はいつもの生活を楽しめたんだ。」

標蔵は素っ頓狂な声ではぁ?と言った。

「なんのことです?私には貴方を不幸にさせる呪いなんてありませんよ。てかもうそれ道路標識やないやん。」

三鷹は困惑した。

「じゃー妻は貴方に私が会ってなかったとしてもあの日あの時に倒れた。救いようがないじゃないか。」

三鷹は疲れ切って皺皺した顔から涙が流れている。

もうどうしようもないじゃ無いか。

俺は変化を好んでいるとは言ったがこういう変化は駄目だ。

親愛なる妻だぞ。

「お取り込み中すんませんが道路標識になってもらいます。」

「あーもう生きてても同じだ。妻よ、先に天国に行きなさい。

俺はその罪としてここで一生道路標識として不変な生活していきます。」

「もう悔いはないですか。」

はい、かすれた声で三鷹は言った。

では、、、、、、







目を覚ました。

三鷹は道路標識になった。

「どうです?道路標識になった気分は?」

真反対にいる標蔵は微笑みながら言った。

「もう悩むことは無い。案外いい生活だなー」

「こんな生き地獄滅多に無いですよ。」

あはははははは〜〜

二人の笑い声が聞こえる。

三鷹は思った。

これで良かったのだと。標蔵もいいヤツだ。

三鷹は新たな生活に少し希望を感じていた。

後ろ髪を引かれる気持ちを振りほどいて。

今ここに第2の人生が誕生した。

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