第四十三話

 そのままのフォーメーションで前進ぜんしんしていると、『ENEMY』と表示されたキャラが見えた。しかも、密集みっしゅうしていた。ま、まさか……。すると伊留美いるみは、つぶやいた。

「どうやら敵キャラも、フォーメーションをんでいるようね……」


 俺は、敵キャラの集団をよく見た。すると『ENEMY』と表示されたキャラは、四つだった。俺は、伊留美にげた。敵キャラは四人しかいないようだと。すると伊留美は、答えた。

「なら人数的に、こっちが有利か……。よし、みんな、集中攻撃をするわよ!」


 だが次の瞬間しゅんかん建太けんたさけんだ。

「敵だ! 敵がいる!」


 そして彩華あやかさんが、悲鳴ひめいを上げた。

「きゃ!」


 俺はすぐに、聞いた。

「どうした、彩華さん!」


 すると彩華さんは、左腕をペナルティ・スナイパーにたれたと答えた。俺は、俺のキャラを三百六十度回転させて敵キャラをさがした。すると、いた! 『ENEMY』と表示された、敵キャラがいた! そいつは俺たちのキャラのフォーメーションのまわりをまわりながら、攻撃していた。

『パン、パン』


 どうやらこの敵キャラの武器は、ピストルのようだ。伊留美は、叫んだ。

「くっ、はさまれたか!」


 そして伊留美は、判断したようだ。一発当たるだけでライフを一つらせる、ピストルを持ったこの敵キャラがやっかいだ。四人の敵キャラよりも、こいつから先にたおすと。


 俺は、考えた。この敵キャラも、ピストルを持った彩華さんのキャラがやっかいだと判断はんだんして攻撃してきたんだろう。そしてこの敵キャラに、攻撃しようとした。


 だが、ねらいがさだまらない。この敵キャラはまることなく、俺たちのキャラの周りをくるくると回りながら攻撃してきたからだ。

『パン、パン』


 すると再び彩華さんは、悲鳴を上げた。おそらく今度は、ペナルティ・スナイパーに右腕を撃たれたんだろう。マズい。彩華さんのライフはもう、残り一つのはずだ!


 俺は、必死に考えた。どうすれば、この敵キャラを倒せる? こいつは停まることなく、くるくると俺たちのキャラの周りを回っているから狙いを定めることができない……。すると、ひらめいた。これなら、どうだ?

俺は、叫んだ。


「皆! 皆のキャラを背中合わせにして、円を作れ! そうすれば俺たちのキャラの周りを回っている敵キャラに、攻撃できるはずだ!」


 すると皆は自分のキャラを背中合わせにして、円を作った。そして俺は、叫んだ。

「皆、まずは攻撃しろ! こいつはくるくると回って狙いを定められないが、逆に俺たちのキャラが攻撃すれば当たってくれるはずだ!」


 そして皆のキャラは、攻撃を始めた。

『タタタタタッ、タタタタタッ……』

『パン、パン……』

『ドパアン、ドパアン……』

『ドウ、ドウ、ドウ、ドウ、ドウ……』

『ドゴーン、ドゴーン……』


 すると俺の予想通よそうどおり、この敵キャラは俺たちの攻撃をらって何度か、のけぞった。そして倒れて、消滅しょうめつした。強い、敵キャラだった。だが、倒せた。常に俺たちのキャラの周りを回って狙いを付けさせなかったが、単調たんちょうに回っていたから俺たちのキャラの攻撃を喰らってくれた。


 すると俺は、伊留美からねぎらわれた。

「ナイス、修吾しゅうご! 良い判断だったわ!」

「ああ!」


 そして俺は、自信を持った。イケる。やっぱり俺たちのチームは、最強だ。きっとどんな敵でも、倒せる! そして俺たちは、再びフォーメーションを組んだ。そうして前方の、敵キャラがめてくるのを待った。


 そうすればその敵キャラを、集中攻撃できるからだ。だが敵キャラたちも、動かなかった。おそらく敵キャラたちも、同じことを考えているんだろう。


 俺たちはしばらく、にらみ合った。だが伊留美が、しびれを切らした。

「にらみ合ってても勝てないわ! 皆、私のキャラをマネして!」


 そして伊留美のキャラは、ジグザグに敵キャラたちに近づいた。もちろん俺たちも、それをマネした。すると敵キャラたちが、攻撃してきた。

『ドパアン、ドパアン……』

『ドパアン、ドパアン……』

『ドゴーン、ドゴーン……』

『ドゴーン、ドゴーン……』


 どうやら前面にいる敵キャラ二人の武器はショットガン、その後ろにいる二人の敵キャラの武器はバズーカほうのようだ。だがジグザグに敵キャラに近づいている俺たちのキャラに、攻撃は当たらない。


 すると伊留美のキャラは、全面の右にいるショットガンを持った敵キャラに攻撃を始めた。

『タタタタタッ、タタタタタッ……』


 俺たちも、それに続いた。

『パン、パン……』

『ドパアン、ドパアン……』

『ドウ、ドウ、ドウ、ドウ、ドウ……』

『ドゴーン、ドゴーン……』

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