決勝戦 ステージ:砂漠

第四十二話

 大臣室で春海はるみは、微笑ほほえみながらげた。

「いよいよです。いよいよ、我々の戦士たちが決まります」


 鞍馬くらまは、疑問を聞いた。

「そうじゃな……。じゃが、どうする気だ? 今回、生き残るのが一人だけだったら? 我々は、五人の戦士を決めるはずじゃが?」


 すると春海は、冷酷れいこくみをかべ告げた。

「その時はもう四回、このプロジェクトを実行するだけですよ、鞍馬防衛大臣。そうすれば生き残るのがたとえ一人でも、五人の戦士たちが決まります」


 それを聞いた鞍馬は、血相けっそうを変えて春海につかみかかった。

「そんなことはさせん! そんなことをしたら一体、何人の死人が出ると思ってるんじゃ! それだけはさせん! このわしの命にえても!」


 ●


 決勝戦が行われる日曜日。俺と彩華あやかさんと景和けいわ伊留美いるみ建太けんたは、ゲーム会場にいた。俺たち五人が同じチームになれて、俺は『ほっ』としていた。もしかしたら、メンバーの変更へんこうがあったかも知れないからだ。


 だが俺たちは、同じチームになった。俺は、確信した。この五人なら勝てると、優勝できると。それは、皆も同じようだった。引き締まった良い表情をしていて、自信が感じられた。


 俺は五台のパソコンが並んであるテーブルの、真ん中のパイプ椅子いすに座った。左には伊留美、更にその左には彩華さんが座った。そして俺の右には景和、更にその右には建太が座った。伊留美は右手をき上げて、さけんだ。

みんな気合きあいを入れて! 勝つわよ!」


 俺たちも右手を、突き上げた。

「おー!」


 すると『れる』の、陽気ようきな声が会場にひびいた。

「さー、皆さん、いよいよ決勝戦です! それではゲームの準備をしてください!」


 俺は目の前のパソコンに、IDカードを差し込んだ。すると画面右上に、ライフが表示された。それを見て俺は、やはり不安になった。ライフは残り、一つだからだ。


 だが、やるしかない。そして、やれるはずだ、俺たち五人なら! そう考えて俺は、ライフルを武器に選んだ。画面下を見てみるとやはり、バズーカほうを選ぶことができた。クリックしてみると、『一度攻撃が当たると、三つのライフを減らすことができる。弾数だんすう20発』と表示された。


 やはり、こうなるか。だがこれは、予想通よそうどおりだった。これで建太は、バズーカ砲を武器に選ぶことができる。彩華さんはピストル、景和はショットガン、伊留美はマシンガンを選ぶはずだ。それでいい。それで俺たちは、勝てるはずだ。


 すると『れる』の、ちょっと緊張きんちょうが混じった声が響いた。

「それでは皆さんの準備ができたようなので、いよいよ決勝戦を始めます。ゲーム、スタート!」


 俺は目の前のパソコンの画面に、集中した。この決勝戦のステージは、何だ? それを早く、知りたかったからだ。すると目の前には、見渡みわたかぎりの砂漠さばくが広がっていた。少し、風が吹いているのだろう。時々、砂がい上がった。


 俺は取りあえず、俺のキャラを動かしてみた。そして、違和感に気づいた。キャラの動きがおそいことに。くっ、砂漠の砂に足を取られて、動きが遅くなっているのか……。それから俺は、自分のキャラを動かして周囲しゅういを見回した。早く仲間を見つけて、合流ごうりゅうしたかったからだ。


 すると左に、表示が出ているキャラの集団がいた。敵キャラか? と一瞬いっしゅん、緊張したがよく見ると『伊留美』という表示が見えた。するとあの集団は、仲間か。俺はその集団に、近づいた。


 そうするとやはり伊留美、彩華さん、景和、建太と表示された、仲間のキャラの集団だった。俺は左にいる伊留美に、話しかけた。

「まさかゲームが始まってすぐに、仲間と合流できるとはな……」


 すると伊留美は、答えた。

「これは、できすぎてるわね。アタシたちは一人も敵キャラとわずに、ここに集まったの。今回はチームのキャラがはなばなれにならないように、配置はいちされたのかも……」

「つまり、どういうことだ?」

「うーん……。おそらくアタシたちの、チームワークをためしているんだと思う……」


 俺はその考えに、納得なっとくした。

「なるほど、そうかもな……。でもいいじゃねえか。試されてるんだとしても。俺たちのチームの、フォーメーションを組めるんだから」


 すると伊留美も、そう考えたようだ。

「まあ、確かにね……。それじゃあ皆、フォーメーションを組むわよ」 


 俺たちは、マシンガンを持った伊留美のキャラが前衛ぜんえいの真ん中、ピストルを持った彩華さんのキャラが前衛の右、ショットガンを持った景和のキャラが前衛の左、ライフルを持った俺のキャラは後衛こうえい、バズーカ砲を持った建太のキャラが超後衛のフォーメーションを組んだ。


 俺は、確信した。勝てる。このフォーメーションを組んだ俺たちなら、どんな敵でも勝てると。

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