第三十九話

 俺は、うなった。確かに、そうかも知れない。でも建太けんたは、FPSの初心者と言っていい。もしかしたら、ゲームすらほとんどやらないかも知れない。伊留美いるみが言うことはもっともだが、そんな建太にはやはりアドバイスが必要なんじゃないか?……。そう考えた俺は、伊留美に聞いてみた。

「それじゃあせめて、俺からアドバイスをさせてくれ。負けてもいい。負けてもいいから、なぜ負けたのかを考えろと。どうだ?」


 すると伊留美は、しぶしぶ答えた。

「分かったわ。そのアドバイスは許すわ」


 なので俺は早速さっそく、建太に告げた。負けてもいいから、なぜ負けたのかを考えろと。するとパソコンのスピーカーから、建太のつぶやきが聞こえてきた。

「分かった……」


 そして建太は、再びゲームを始めた。だがやはり、負けた。伊留美は、聞いた。

「どうして負けたのか、分かる?」


 すると少しして、建太は答えた。

「ゲームが始まった時は、敵キャラと距離きょりがあった。だから俺はバズーカほうで攻撃していた。だが敵キャラが俺のキャラの近くにきて、攻撃を始めた。バズーカ砲は連射れんしゃが出来ないから、そのスキに攻撃されて負けた」


 それを聞いた伊留美は、再び聞いてみた。

「それじゃあ、どうすれば勝てると思う?」


 やはり少しして、建太は答えた。

「敵キャラが近づいてきたら、逃げればいいと思う。攻撃されないように……」


 すると伊留美は、げた。

「そう。それじゃあもう一度、ゲーム開始!」


 ゲームが始めると建太は、バズーカ砲で敵キャラを攻撃した。しかし敵キャラは攻撃するために、近づいてきた。すると建太のキャラは、逃げて敵キャラと距離を取った。そしてバズーカ砲で、攻撃を続けた。すると一人の敵キャラを倒すことができた! 俺は思わずパソコンのマイクに向かって、叫んだ。

「その調子だ! がんばれ建太!」


 すると建太は自分のキャラと敵キャラと距離を取りつつ、バズーカ砲で攻撃した。そして二人目の敵キャラも倒した! しかし後ろに回り込んだ敵キャラに、接近されて攻撃されて負けた。伊留美は、聞いた。

「どうして負けたのか、分かる?」


 すると建太は、すぐに答えた。

「後ろに回り込んだ敵キャラに、気が付かなかったからだ」


 そして再び、伊留美は聞いた。

「それじゃあ、どうすれば良いと思う?」

「目の前だけじゃなく、周りにも敵キャラがいないか注意する。距離をめられないように。バズーカ砲は射程距離が長いから距離を取れば、こっちが有利だ。こっちから攻撃は出来るが、敵キャラの武器は射程距離が短いから攻撃出来ないから」


 そして建太は、もう一度ゲームを始めた。建太は自分のキャラを、敵キャラと接近しないように距離を取った。そしてバズーカ砲で、敵キャラを攻撃しまくった。すると建太は初めて、五人の敵キャラを倒した。すると伊留美は、聞いた。

「今のゲーム、どうして勝てたのか分かる?」


 建太は、説明した。バズーカ砲は、射程距離が長い。だが敵キャラの武器は、射程距離が短かった。だから敵キャラと距離を取れば、こっちは攻撃出来て敵キャラの攻撃は当たらない。だから勝てたと思う、と。すると伊留美は、告げた。

「うん、まずは合格ね。まず、だけど」


 それを聞いた俺は、建太をねぎらった。

「やったな建太! よくやった!」


 すると、少しうれしそうな声がかえってきた。

「ああ。サンキュー……」


 それから建太は更に、十回ゲームをした。だがバズーカ砲で戦うコツをつかんだ建太は、一人で戦い十回勝った。するとさすがに伊留美は、建太を認めた。

「うん、これでいいわ。建太とチームを組んでも、戦力せんりょくになるわ」


 すると俺、彩華あやかさんと景和けいわも建太をねぎらった。

「すごいぜ建太! 伊留美に認められたぞ!」

「本当におめでとう、建太さん」

「建太さん、決勝戦を一緒にがんばりましょう!」


 建太は、礼を言った。

「サンキュー。俺もみんなのために、がんばるぜ」


 するとパソコンのスピーカーから、伊留美の声が聞こえた。

「さあ、それじゃあ、ここからが本番よ。私たち五人のチームで、五人の敵キャラチームと戦うの。準備はいい?」 


 そして五人対五人の、ゲームが始まった。だが俺たちは、勝ち続けた。伊留美の的確てきかくな指示が、勝った理由だろう。ゲームが始まると、伊留美は指示を出した。

「まずは、私のキャラが前衛ぜんえいの真ん中に立つ。右に彩華のキャラ、左に景和のキャラが立ってね」

「はい!」

「分かりました!」


 伊留美は更に、指示を出した。

「それに射程距離が長いライフルを持っている、修吾が後衛こうえい。更に射程距離が長いバズーカ砲を持っている建太は、超後衛」

「ああ、分かった」

「うむ、分かった」

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