第三十八話
そして次の日の、午前九時。俺たちは自分たちの家で
更に決勝戦で使う予定の武器を、選んだ。
そして伊留美の
『スコーピオン』は『アーツ』と違ってゲームが始まると、チームを組んだプレイヤーは近くにまとまって
相手のチームが初心者の集まりらしく、チームワークが無くバラバラだった。そこに『スコーピオン』の国内ランキングの一位の伊留美のキャラが、俺たちのキャラに一番近い敵キャラに攻撃する。すると彩華さんと景和のキャラもその敵キャラに、攻撃する。更にダメ押しで、俺のキャラもライフルで後衛から
すると集中攻撃を
「やったぜ、俺たち、最強じゃねえか?」
「うん、そうね!」
「これなら僕たちが、優勝間違いなしですよ!」
しかし伊留美は、ため息をついた。
「はあ、ダメね、これじゃあ。全然、特訓にならないわ……」
俺は疑問に思って、聞いた。
「どうしてだ? 俺たちは一人もやられずに、勝てたじゃねえか?」
すると伊留美は、またため息をついた。
「まあ、確かにね。でも、だから特訓にならないのよ。決勝戦で戦う相手が、こんなに弱い
俺は、
「そして一番問題なのが、建太よ!」
俺は再び、疑問を聞いた。
「どうしてだ? 建太のキャラもやられてないぞ?」
すると伊留美は、キッパリと答えた。
「確かにね。でも建太のキャラは、攻撃した? してないでしょう? 決勝戦では建太のキャラのバズーカ砲も、
俺は、
なるほど、俺たちもやった特訓か。確かにそれなら建太が戦うことになって、特訓になるだろう。そして建太一人の、特訓が始まった。
だが建太は一回目のゲームで、あっさりと負けた。すると伊留美は、告げた。
「もう一度やれ。ゲーム開始!」
しかし建太は再び、あっさりと負けた。すると伊留美は、聞いた。
「アンタ、どうして負けたか分かる?」
建太は、
「いや……。気づいたら、負けていた……」
それを聞いた伊留美は、告げた。
「そう……。それじゃあもう一回、戦って」
だが建太は、
「いや、もういい。どうせ俺は決勝戦で、負ける……」
すると伊留美は、
「はあ? ふざけんな! 戦う前から負ける気でどうする! それにお前は、どうしてこのゲームに参加したんだ?!」
すると少しして、建太は答えた。優勝賞金の一億円を手に入れれば、
「だったらそれを、忘れるな! いいか、アタシたちが参加しているゲームは、オール、オワ、ナッシングのデスゲームだ。一億円を手に入れて願いをかなえるか、死ぬかのどっちかだ! それを忘れるな!」
すると建太は、少しやる気になったようだ。
「分かった。もう一度、やってみる……」
だが俺は思わず、二人の会話に
「ちょ、伊留美! もうちょっとアドバイスをした方が、良いんじゃないか?!」
すると伊留美は、冷静に答えた。
「いや、それはしないわ……」
「どうしてだよ?!」
俺の疑問に伊留美は、やはり冷静に答えた。確かに今、アドバイスをすれば勝てるかも知れない。でもそれは、本当の実力じゃない。命がかかった決勝戦になったらアタシのアドバイスなんて、頭から吹っ飛ぶわ。決勝戦で役に立つのは、本当の実力だけ。自分で考えて気づいて、理解したことだけが出来るの。いざという時は、それしか出来ないの、と。
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