第三十七話

 それから俺は右腕の傷を医務室いむしつ治療ちりょうしてもらい、俺たちはバスに乗って東京駅で降りた。すると景和けいわが提案した。

「今回も生き残りましたし次回の決勝戦に進むことが出来たおいわいに、いつもの居酒屋いざかやで飲みませんか?」


 それにはまず、彩華あやかさんが賛成さんせいした。俺も、まあいいかと賛成した。伊留美いるみは難しい顔をしていたが、取りあえず行くことにした。更に、建太けんたも。


 居酒屋に行って全員、生ビールを注文して、届くと景和が音頭おんどをとって乾杯かんぱいした。

「えー、皆さん。何とか四回戦も勝利しましたし、また決勝戦での勝利をいのって乾杯しましょう。カンパーイ!」


 皆が一口飲んで、ジョッキをテーブルに置くと伊留美は告げた。

「いい、皆。お祝いはここまで。このビールを飲んだら早速さっそく、『スコーピオン』で特訓とっくんするわよ」


 すると景和が、反対した。

「えー、いいじゃないですか。もっと勝利の余韻よいんに、ひたりましょうよ!」


 それを聞いて伊留美は、けわしい表情になった。

「アンタ、バカ? 本当なら、お祝いなんかしてる場合じゃないの!」

「え? どうしてですか?」


 すると伊留美は、説明した。今回の第四回戦でボスキャラは、バズーカほうを使ってきた。今までのパターンからすると次の決勝戦では、そのバズーカ砲をキャラが使えるようになるはず。一回攻撃されただけでライフが三つも減る、バズーカ砲を。それを考えたら、ここで吞気のんきにお祝いしてる場合じゃないと。


 すると皆は、だまってしまった。伊留美は、続けた。

「まあ、バズーカ砲は二十回しか攻撃できない。おそらく次の決勝戦のステージでも、弾丸だんがん補充ほじゅうは出来ない。でも一気いっきにライフを三つも減らす攻撃力は、脅威きょういだわ……」


 皆は更に黙っていたが、伊留美は続けた。建太を指差ゆびさして。

「それとアンタ! アンタをきたえなくちゃなんないの! 決勝戦で勝つためには!」


 俺は疑問に思い「どうしてだ?」と聞くと、伊留美は声を大きくした。

「こいつは四回戦が始まる段階だんかいで、すでにライフは一つしか残ってなかったの! まったく今まで、うんだけで勝ち残ってきたようなモノよ。そんな奴と組んで、決勝戦を戦わなくちゃならないからよ!」


 なるほど。今回の第四回戦では、誰も死ななかった。だから次の決勝戦も、この同じメンバーで戦うことになるだろう。伊留美はもちろん、俺と彩華さんと景和も、そこそこのレベルになっている。だが建太のレベルは、おそらく低いだろう。今までも強力な武器を選んで、ちまくっていただけのようだから。俺がそこまで考えていると、伊留美は更に告げた。

「それに今回の戦いで、チームワークの大切さが分ったでしょう?」


 すると皆は、疑問の表情になった。

「え? チームワーク?」


 それを聞いた伊留美は、ため息をついた後に続けた。

「今回のボスキャラをたおした時を、思い出してみて! バズーカ砲という強力な武器を持ったボスキャラを倒せたのは、アタシたちがチームワークを発揮はっきしたからなの。チームワークを発揮して集中攻撃したから、ボスキャラを倒すことが出来たの。もしアタシたちがバラバラだったら、おそらくアタシたちは全員、死んでたわね……」


 それを聞いた俺たちは、『ゴクリ』とつばを飲み込んだ。確かに、その通りだと思ったからだ。そして伊留美は、続けた。

「だから特訓なの! アタシたち五人がどの武器を使って、どんなフォーメーションで戦うのかの特訓なの!」


 なるほど。皆がどの武器を使うのかも、重要なのか。俺は決勝戦でも、ライフルを使うつもりだと言ってみた。やはり射程距離しゃていきょりが長いのが、有利ゆうりだと思ったからだ。すると伊留美は、アタシはマシンガンを使う、連射れんしゃできるし弾数も多いからと答えた。更に彩華さんは、私はやっぱりピストルを使うつもり、一回攻撃が当たるだけでライフを一つ減らせるからと告げた。景和は、僕はショットガンを使うつもりです、一度に十発撃てるのが魅力みりょくなのでと答えた。


 そして皆は、建太を見つめた。建太は、どの武器を使うつもりなんだろうという表情で。少し考えた表情の後、建太は答えた。

「俺は、バズーカ砲を使うつもりだ。一番強力そうな、武器だからだ……」


 すると伊留美は、腕組うでぐみしながら告げた。

「うーん……。接近武器せっきんぶきのマシンガン、ピストル、ショットガン、それに長距離武器ちょうきょりぶきのライフル、超長距離武器のバズーカ砲か……。うん、バランスとしては、悪くないわ」


 そして、大きな声で告げた。

「だから特訓よ、特訓! 皆が決勝戦で使うつもりの武器を使って、『スコーピオン』で特訓よ!」


 俺はその考えに、賛成した。皆も、反対はしなかった。ただ第四回戦の疲れを取りたいから、特訓は明日からにしたいと景和は告げた。伊留美も、それはそうねという表情になり、特訓は明日から始めることにした。

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