第三十五話

 すると早速さっそく、マシンガンの発砲音はっぽうおんがした。

『タタタタタッ、タタタタタッ……』


 発砲音がした方向を見ると、頭上ずじょうに『ENEMY』と表示された敵キャラがいた。今度の敵キャラの武器は、マシンガンか……。ショットガンよりは怖くないが、俺たちのキャラのライフは残り一つだ。攻撃されないように、慎重しんちょうにならなければならない。俺はやはり俺のキャラを、敵キャラからはなした。


 すると急に、動きがにぶくなった。何だ? と思って周りを見てみると、川が流れていた。俺のキャラは、川に入っていた。反対側を見ても川岸かわぎしが見えない程、川は広かった。水色の大きな流れの中で、俺のキャラの足元には小さなしぶきが上がっていた。


 くっ、川の中だから流れに押されて、動きが鈍いのか……。すると敵キャラは、俺のキャラに近づいてきた。

『タタタタタッ、タタタタタッ……』


 くっ、マズい! 敵キャラは川の中で動きが鈍い、俺のキャラをねらっている! いや、攻撃してきた方向から考えると、川の中にめたのか。とにかく、これはマズい! そう考えていると、ショットガンの発砲音がした。

『ドパアン! ドパアン!』


 そして敵キャラは、のけぞった。ライフが一つ、減ったのだ。ショットガンをったのは、もちろん建太けんたのキャラだ。建太……。すると敵キャラは、建太のキャラに向かって攻撃を始めた。させるか! 建太を殺させはしない! 俺はライフルで、攻撃した。

『ドウ、ドウ、ドウ、ドウ、ドウ……』 


 すると再び敵キャラは、のけぞった。俺のキャラと建太のキャラにはさまれて不利だと考えたのか、敵キャラは川と反対方向に逃げ出した。くっ、マズい。下手へたをすると、敵キャラの仲間と合流される! そして人数で、こっちが不利ふりになるかも知れない!


 だがこの敵キャラは、建太のキャラが倒した。逃げる敵キャラを建太のキャラが追っていて、攻撃をしたのだ。敵キャラは攻撃をかわすためにジグザグに逃げていたが、建太のキャラはそれにらいついていた。そして建太のキャラは何度も攻撃して、やっと敵キャラを倒した。


 俺は死を覚悟かくごして戦う気力が無かった建太の行動とは思えず、おどろいた。だが一応、ねぎらった。

「やるじゃねえか、建太。あの敵キャラに逃げられていたら、やっかいなことになっていたかも知れねえ……」


 すると建太は、つぶやいた。

「お前となら、このゲームで生き残れるかもしれないと思った……。だから俺も、必死になってみた。それだけだ……」

「ふん、そうかよ。まあいい。ドンドン行くぞ!」


 すると遠くに、キャラが現れた。一瞬、敵キャラか?! と警戒けいかいしたが、『ENEMY』の表示が無い。よく見てみると、『伊留美いるみ』、『彩華あやか』、『景和けいわ』と表示されていた。俺は思わず、声をかけた。

「伊留美、彩華さん、景和! 良かった、無事ぶじだったか!」


 すると伊留美が、答えた。

「まあね。あんたたちも無事とはね……」


 伊留美の話によると、ゲームが開始されてショットガンを持った敵キャラ一人を倒して、彩華さんと景和のキャラと合流した。それからマシンガンを持った敵キャラ二人を、倒したそうだ。俺もショットガンを持った敵キャラ一人とマシンガンを持った敵キャラ一人を倒したと告げると、伊留美はくやしそうだった。

「ちっ、また六人全員を倒したらもらえる特別ボーナスの百万円は、おあずけか……」


 俺は、伊留美はいつも通りだなと苦笑にがわらいしていると、とんでもないことに気づいた。するとすでに、五人の敵キャラを倒したことになる! なら、ボスキャラが現れるはずだ。いや、もう現れているかも!

 

 俺は、俺のキャラを操作そうさして、辺りを見回みまわした。すると川とは反対側に、キャラの姿が見えた。しかも肩に、何かをかついでいるようだ。あれはまさか……。俺は大きな声で叫んだ。

みんな、ここから離れろ! ボスキャラに攻撃される!」


 ボスキャラと聞いて皆のキャラは、その場から離れた。すると今まで聞いたことが無い、大きな発砲音がした。

『ドコオーン……』


 そして、『れる』の陽気ようきな声が響いた。

「さあ、ボスキャラの登場でーす! ボスキャラの武器は、バズーカほうでーす! バズーカ砲の攻撃に当たると、一気に三つのライフを失います。バズーカ砲の弾数は、20発です。それではがんばって、ボスキャラを倒してくださーい!」


 くっ、やはりボスキャラが肩に担いでいたのは、バズーカ砲か。しかも攻撃に当たると、ライフが一気に三つ減るだと?! ダメだ。そんな攻撃を喰らっていたら俺たち全員、死んじまう!


 俺たちは『れる』の説明を聞いて、バズーカ砲をおそれた。恐れすぎてこれからどうしたらいいか分からずに、自分のキャラを動かせないでいた。だがボスキャラは、追加ついかの攻撃をしてこない。なぜだ? 俺たちのキャラは五人、集まっていて攻撃のチャンスなのに?


 そう考えていると、俺は気づいた。そうか! ボスキャラも、慎重になっているんだ! なぜならバズーカ砲の弾数は、20発だからだ。二十回攻撃すれば、弾切たまぎれになる。そしてこのステージではおそらく、砲弾の補充ほじゅうはできない。だからボスキャラも、慎重になっているんだ!


 だが、どうする? どうやって強力すぎる武器を持っている、ボスキャラを倒す? 俺は思わず、伊留美に聞いた。

「くっ、ど、どうする、伊留美……」

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