第三十四話
俺は
建太には、七歳の娘がいる。だがこの
しかし、その考えは甘かったと建太は続けた。FPSなどという、建太はやったことも無いゲームで、自信を無くした。建太のキャラのライフが残り一つとは言え、今まで生き残ったのが不思議だという。ただ運が、良かっただけだと説明した。
俺は、言ってみた。運だけじゃ、このゲームには生き残れないと。建太が今まで生き残ってこれたのは、心のどこかで生き
すると今度は、建太が俺に聞いてきた。なぜ俺が、このゲームに参加したのかと。俺は、正直に答えた。俺は今、大学四年生だが全然、
俺は、答えた。まあ、お互い様だなと。そして二人で、笑った。だが次の瞬間、あの絶望的な
『ドパアン、ドパアン……』
俺は必死にマウスを
そのスキに敵キャラは接近してきて、ショットガンの射程距離になってしまった。建太も建太のキャラを振り向かせて、攻撃しようとした。だが、ダメだ。そのスキに敵キャラは、建太のキャラに
『ドパアン!』
俺は俺のキャラを、建太のキャラの前に移動させていた。次の瞬間、俺のキャラは敵キャラのショットガンを喰らい、ライフが一つ減って残り一つになった。そして当然、ペナルティ・スナイパーに右腕を撃たれた。残りのライフが無くなりゼロになれば、今度は頭を撃ち抜かれるか……、と俺は死を感じた。
だが俺は死に対して、マヒしていた。多くの死人を見て、多くの死を身近に感じる経験をして。これじゃあ、ダメだな。俺はいつか死ぬなと、ふと考えた。そんな俺に、建太は聞いてきた。
「どうしてお前は俺のキャラを、いや俺を助けた?……」
俺は、あっさりと答えた。
「ふん。お前のキャラのライフが残り一つで、俺が助けなきゃお前は殺されちまう! このゲームで味方を一人失うのは、イタイからな……」
建太は感情が無い声で、答えた。
「自分の命を危険にさらして、味方を
だが俺は、言い放った。
「今、この
すると建太は、力がこもった声で答えた。
「ふん……。そうだな……」
●
俺は建太に、俺が考えた作戦を伝えた。すると建太も、なるほどと
『ドウ、ドウ、ドウ、ドウ、ドウ……』
敵キャラにとっては攻撃をしない建太のキャラよりも、攻撃をしている俺のキャラをやっかいだと思うはずだ。そしてその予想通り、敵キャラは俺のキャラに近づいてきた。ショットガンを撃ちながら。
『ドパアン、ドパアン……』
俺はもちろん俺のキャラを、敵キャラから逃がした。ライフルで反撃しながら。だから敵キャラは、俺のキャラを追ってくる。だがそこに、スキができた。俺は、叫んだ。
「今だ、建太!」
建太のキャラはショットガンで、敵キャラの後ろから攻撃しだした。
『ドパアン、ドパアン……』
その銃声に気づいた敵キャラは、振り向いて建太のキャラに反撃する。
『ドパアン、ドパアン……』
すると今度は、俺のキャラが敵キャラの後ろから攻撃することになる。
『ドウ、ドウ、ドウ、ドウ、ドウ……』
結局、俺たち二人に
「な。協力すれば、生き残れるだろ」
建太は、笑うしかなかったようだ。
「ふふ、そうだな。それにこうやって仲間と協力して敵キャラを倒したのは、初めてだ……」
そして俺は、言い放った。
「よし、この作戦は使えるぜ! どんどん敵キャラを倒してやるぜ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます