第三十三話

 すると伊留美いるみはこちらを振り向いて、ため息をついた。

「ダメね、こいつは。全然、使えないわ」


 それを聞いた建太けんたも、こちらを向いて聞いてきた。

「お前たち、本気でこのゲームで生き残るつもりでいるのか?……」


 伊留美は、当然という表情でえた。

「当り前じゃない! 優勝賞金一億円は、私のモノよ!」


 すると今度は、建太がため息をついた。

「おめでたいやつらだ……。こんな、俺たちを殺すために作られたようなゲームなんて続けてたら、いつか殺されるだけだ……。だがもう、めることもできないが……」


 それを聞いた伊留美は、言い放った。

修吾しゅうご、こいつは仲間にしない方がいいわ!」


 俺は、聞いてみた。

「どうしてだ?」

「どんなことでも、いや、命がかかっているこのゲームは特に、勝ちたい、生き残りたいっていう決意が必要なの! いざという時、そういう決意が勝負を決めるの! こんなやる気のない奴が仲間にいると、士気しきが下がるわ!」


 俺も建太には、やる気の無さを感じていた。いや、いつ死んでもいいという、あきらめを感じていた。だが俺は、この建太も仲間にするべきだと考えた。じゃないとこの第四回戦は、相手チーム五人と俺たちは四人で戦わなければならなくなるからだ。この一人の戦力差せんりょくさは大きい。だから俺は、建太をさそった。

「なあ、俺たちの仲間にならないか?」


 だが建太は、あきらめの表情を見せた。

「そんなことをしても、ムダだ。敵キャラはどんどん強くなるし、俺は今だにこのゲームをしっかりと理解していない。多分この第四回戦で、俺は死ぬ……」


 それでも建太を仲間にした方が有利だと考えて、どう説得せっとくしたらいいか考えていると『れる』の陽気ようきな声がひびいた。

「さー、それでは皆さん。いよいよ第四回戦を始めまーす! ゲームを始める準備をしてくださーい!」


 くっ、しょうがない。今はゲームの準備をする方が先だ。俺は右から二番目のパイプ椅子に、伊留美は一番右のパイプ椅子に座った。ふと左を見ると彩華あやかさんは左から二番目、景和けいわは一番左に座っていた。


 俺はIDカードを、パソコンに差し込んだ。するとパソコンの画面に、予想通りのモノが現れた。ショットガンの、アイコンだ。一応いちおうクリックしてみるとやはり予想通り、『一度に十発の弾丸を発射できる。五発当たると相手のライフを一つ減らすことが出来る。弾数200発』と表示された。


 俺は一応、考えた。ショットガンを使うべきかどうか。しかし一度に十発発射してしまうため、二十回しかてないのはイタイ。それにこれは俺のかんだが、おそらく今回は弾薬庫などで弾丸を補充ほじゅうすることは出来ないだろう。あれは、第三回戦だけで、出来たことだと。なので俺は、使い慣れたライフルを選んだ。すると『れる』の、大きな声が響いた。

「それでは皆さんの準備が出来たようなので、第四回戦を始めます。それでは、スタート!」


 ゲームの開始と同時に、俺はパソコンの画面を見つめた。今回のステージを、早く知りたかったからだ。するとパソコンの画面には、草原そうげんが現れた。草原だと?……。


 俺は取りあえずマウスを操作そうさして、周りを見た。だが俺のキャラの、腰の高さまでの草が生えているだけだった。少し風があるのだろう、『ヒュオオオオ』という音と共に草がゆっくりとれた。そして、のぼれそうな木も無かった。更に周りを見ると、俺のキャラの近くには敵キャラも味方のキャラもいないことが分かった。


 俺は取りあえず俺のキャラを、風下かざしもに向かわせた。実際の戦場では、風下が有利だと聞いたことがあるからだ。風下にいれば、音や臭いで敵の位置を把握はあくできる。このゲームでそれが出来るか、分からないが。


 そうしていると、『建太』と表示されたキャラがいた。俺は俺のキャラを近づけて、左に座っている建太に話しかけた。

「よう、ここにいたのか」

「ああ……」

「敵キャラか、味方のキャラを見かけなかったか?」

「いや、見てない……」

「そうか……」


 そして俺は、確認した。

「よう、建太。お前のキャラの武器は何だ? ちなみに俺のキャラの武器は、ライフルだ」


 すると建太は、面倒めんどうくさそうに答えた。

「ショットガンだ……」


 俺は一応、注意した。

「分かっているかもしれないけど、考えなしに撃つなよ。なんせ、二十回しか撃てないんだからな」


 だが建太は、言い切った。

「いや、敵キャラが現れたら撃ちまくる……」


 俺は少し、イラっとした。

「だから、それじゃダメだって! ちゃんと残りの弾数を考えて撃たないと!」


 だがやはり建太は、言い切った。

「今まで俺は、そうして生き残ってきた。そして俺のキャラのライフは、残り一つ。俺はおそらく、この第四回戦で死ぬ……」


 俺は、ため息をついた後に聞いてみた。

「なあ、お前がこのゲームに参加した理由は何だ?」

「何だと?」

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