第二十八話

 だが、景和けいわが聞いてきた。

「え? 今は、ボスキャラの弾切たまぎれを待っているんですよね?」


 俺は必死に、説明した。一度はボスキャラは、弾切れになった。しかし弾薬庫だんやくこに入って、弾薬を補充ほじゅうしたようだと。景和は、動揺どうようしたようだった。

「何ですか、それ?! 反則はんそくじゃないですか?!」


 俺はとにかく二人に、この場からはなれるように告げた。そして俺のキャラを逃がすと、二人のキャラも追いかけてきた。だが後ろからはショットガンの、絶望的ぜつぼうてき銃声じゅうせいひびいてきた。

『ドパアン! ドパアン!』


 それを聞きながら、俺も心の中で叫んだ。ちくしょう! 弾薬庫で弾丸を補充するなんて、反則だ! ショットガンは二十回しか撃てないから弾切れを狙うという、伊留美いるみの作戦は良かった。だが弾丸が補充できるとは、予想よそうもしていなかった。


 ボスキャラは当然、弾薬庫で弾丸を補充できることを知っていたのだろう。だから残りの弾数を気にすることなく、ちまくっていたのだろう。くそっ、何ってこった……。思わず絶望的になったが、構わずに銃声は響いた。

『ドパアン! ドパアン!』


 だが、たおさなければならない。あのボスキャラを。でなければ、俺たちがやられる。だが、どうやって倒す?……。すると、あるアイディアがひらめいた。そ、そうか! これならイケるかも知れない! 


 そして俺は、彩華あやかさんと景和に俺が考えた作戦を説明した。二人は、納得なっとくしてくれたようだ。

「なるほど……。あのボスキャラを倒すには、その作戦しかないようですね……」

「イケます! イケますよ、その作戦! よし、早速さっそくやりましょう!」


 俺は二人に「たのんだ」と告げると、ボスキャラをライフルで攻撃こうげきした。ボスキャラの武器、ショットガンは射程距離しゃていきょりが短いので、俺のキャラには当たらない。敵キャラと離れている今は、射程距離が長いライフルの方が有利だ。


 そしてT字路じろで彩華さんと景和のキャラは左に、俺のキャラは右に曲がった。するとボスキャラは、ライフルで攻撃している俺のキャラにねらいを定めたようだ。俺のキャラが通路を真っすぐに進んでいると、追いかけてきた。

『ドパアン! ドパアン!』


 俺が、作戦は順調じゅんちょうに進んでいるなと考えていると、伊留美のキャラと出会った。

「ちょっと、何なのアイツ! まだ、弾切れになってないの!」


 俺は伊留美に、ショットガンは弾切れになったが弾薬庫で弾丸を補充したようだ、と説明した。すると伊留美は、くやしそうな口調くちょうで言った。

「くっ、弾薬庫……。それでアイツは弾切れの心配をせずに、撃ちまくっていた訳ね……。それじゃあ、どうやって倒したらいいのかしら?……」


 そんな伊留美に、俺は告げた。俺が考えた作戦を、すでに彩華さんと景和は実行じっこうしてくれている。だから俺たちはボスキャラを引きつけてもう一度、弾切れにさせようと。だが伊留美はもちろん、疑問だった。

「え? それじゃあまた、弾薬庫で弾丸を補充されるじゃない?」


 俺は伊留美を、せかした。今は作戦を説明しているヒマがない、とにかく逃げろと。そして俺は、俺のキャラを逃がした。するとしぶしぶといった感じで、伊留美のキャラも逃げ始めた。

「もー、あとでちゃんと、説明しなさいよ!」


 俺は俺のキャラを、曲がり角があっても真っすぐに逃がした。ボスキャラが攻撃しやすいように。すると奴は、やはり弾切れを心配せずにショットガンを撃ちまくってきた。

『ドパアン! ドパアン!』


 そして、その時がきた。銃声が聞こえなくなったと思ったら、ボスキャラは俺たちを追いかけずに、通路つうろもどり始めた。弾丸が無くなったので、弾薬庫に向かうはずだ。


 俺は伊留美に、伝えた。奴は弾切れで攻撃力は無いはずだが、彩華さんと景和のキャラが心配だから奴を追うと。すると伊留美の不満が、爆発した。

「ちょっと、アンタ! いい加減かげんにアンタの作戦を説明しなさいよ! ここまで逃げてアンタの作戦に協力したんだから、アタシには聞く権利があるわ!」


 俺は、俺のキャラでボスキャラを追いながら、伊留美に説明した。すると伊留美も、納得してくれたようだ。

「な、なるほど。考えたわね……。でも確かに、あの二人が心配ね。一応、アイツを追うわよ!」


 しばらく俺と伊留美のキャラが追っていると、ボスキャラは通路を左に曲がった。その先には、弾薬庫があるはずだ。俺は思わず、いのった。頼む、彩華さん、景和。がんばってくれ! 


 俺たちのキャラも通路を左に曲がると、ボスキャラは弾薬庫に入ろうとしていた。そして、ドアが開いた。だが次の瞬間、弾薬庫の中から銃声が響いた。

『パン、パン』

『タタタタタッ、タタタタタッ……』


 そして攻撃をらって倒れたボスキャラは、ライフがゼロになったんだろう、そのまま消滅しょうめつした。俺は、俺のキャラを弾薬庫の中に入れて、彩華さんと景和のキャラの無事を確認して安心した。

「二人とも、無事だな。良かったあ……」


 すると彩華さんと景和は、陽気ようきな声を出した。

「もう、修吾しゅうごさんは心配しすぎよ……」

「そうですよ! 僕はこの作戦、絶対にイケると思ってましたよ!」


 俺が考えた作戦は、こうだ。ボスキャラはショットガンを撃ちまくって弾切れになると、弾薬庫で弾丸を補充する。なのでその時を狙って、弾薬庫で待ちせしていた彩華さんと景和のキャラが集中攻撃をしてボスキャラを倒すというモノだ。だがこのゲームは、何が起きるか分からない。

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