第二十九話

 弾切たまぎれのボスキャラは、攻撃をすることが出来ない。でも彩華あやかさんと景和けいわのキャラがボスキャラをたおす前に弾丸だんがん補充ほじゅうされたら、今度は二人のキャラが危険になる。俺はそれを心配してボスキャラをっていたが、作戦が上手く行って俺は一安心ひとあんしんした。


 するとパソコンの画面に、『ステージ クリアー』の文字が表示された。俺はそれを見て更に安心して、体中から力がけるのを感じた。取りあえず、俺は生き残った。彩華さんと景和、そして伊留美いるみも生き残った。


 だが、名前も知らない男が死んでしまった。俺はそれをやんだが、同時に仕方しかたがないと思った。今回のステージのボスキャラが持っていた武器、ショットガンは強力だった。俺のキャラも攻撃をらい、ライフが一つ減って残り二つになってしまった。


 ショットガン相手にこの程度ていど被害ひがいんだのは、むしろ幸運こううんかも知れない。ヘタをしたら俺たち全員が、殺されていたかも知れないからだ。だがやはり俺はやりきれない思いで、死体になった男を見つめた。すると『れる』の、陽気ようきな声がひびいた。


「はーい、みなさん、お疲れさまでしたー! 生き残った皆さんは来週の日曜日に開催かいさいされる、第四回戦に出場してもらいまーす! それまで、お元気で! それでは、さよーならー!」


 俺は思わず心に中で、悪態あくたいをついた。何が、『それまで、お元気で!』だよ。いくら元気でも、第四回戦で殺されるかも知れないだろ?! それにしても、次で第四回戦か……。全く、このゲームは何回戦まであるんだ?! 


 俺がため息をついていると、伊留美は大声を出した。

「あー! そういえばアタシ、六人全員殺して特別ボーナスの百万円をもらうはずだったのに、もらえなかったー! 五人はアタシ一人で殺したのにー! 誰よ、六人目のボスキャラを殺したのは?!」


 すると伊留美の迫力はくりょく気圧けおされたのか、景和がおそる恐る手を上げた。

「あ、あの、多分、僕です……。僕が攻撃している途中で、ボスキャラは倒れて消滅しょうめつしたので……」


 伊留美は景和の首を両手でめて、ガクンガクンと景和の頭をさぶりながらわめいた。

「お前かー?! しょうがない、今回はしょうがないけど、次はアタシが六人全員を殺すんだからねー! アンタ、邪魔じゃますんじゃないわよー!」


 景和は完全に、おびえていた。

「は、はい。す”み”ま”せ”ん”……」


 それから俺は左腕を治療ちりょうしてもらい、バスに乗った。バスが東京駅に着いて皆が降りると、景和が提案ていあんした。

「あー、良かったー! 僕はまだ、生きてるー! ねえ、皆さん。まだ日は高いですけど、飲みに行きませんか?」


 俺と彩華さんは、賛成した。

「そうだな。取りあえず、ビールを飲みたいな」

「ええ、いいですね。私も飲みたいです」


 景和はうなづくと、伊留美にも聞いてみた。

「えーと、伊留美さん。伊留美さんも行きますか? っていうか、お酒が飲める年齢ですか?」


 伊留美は少し、イラ立ちながら答えた。

「行くわよ! アタシも行くわよ! ってアタシはもう二十歳はたちだから、酒くらい飲めるわよ!」


 こうして俺たち四人は、以前行った居酒屋いざかやに向かった。居酒屋に入ると皆は、取りあえずなまビールを注文した。生ビールが届くと、伊留美はそれを一気に飲みし景和にからみ始めた。


「もー! 敵キャラを全員倒せば特別ボーナスの百万円がもらえるって聞いて、今回アタシはってたのにー! いい、アンタ! さっきも言ったけど、次の戦いで同じチームになったら今度こそアタシの邪魔をするんじゃないわよ!」


 景和はもう、はんべそだった。

「分かりましたよー! もう邪魔をしないので、カンベンしてくださいよー!」


 すると伊留美は一応納得したのか、頷いて生ビールのおかわりを注文した。そして、つぶやいた。今回のボスキャラの武器は、ショットガンだった。となると次の第四回戦で、使える可能性が高い。第二回戦のボスキャラの武器だったマシンガンが、今回使えるようになったから。でもショットガンは確かに強力だけど、すぐに弾切れになるのが弱点ね、と。


 そして俺は、俺の考えを言ってみた。次の第四回戦では、また俺たちが同じチームになる可能性が高いと思う。俺と彩華さんと景和は、第一回戦と同じチームだから。おそらくチームから脱落者が出ると、そのチームにプレイヤーが補充されるシステムだと思う。だから次の第四回戦では、別のプレイヤーが五人目として補充されると思うと。


 それを聞いた伊留美は、届いた生ビールを一口飲むと喚いた。

「なるほど、確かにそうかもね……。って、ええ?! それじゃあ次も、アンタたちと組むことになるの?!」


 伊留美は生ビールのジョッキを、『だん』とテーブルに置くと言い放った。

「それじゃあ、特訓よ、特訓! ハッキリ言ってアンタたちのレベルは低すぎる! 修吾しゅうごはまあまあとして、アンタたちのレベルは低すぎる! よく今まで、生き残れたわね?!」


 すると景和は、反論はんろんしてみた。

「そりゃあ、『スコーピオン』の国内ランキングの一位の伊留美さんから見たら、僕たちのレベルは低いですよ。でも今まではチームワークをかして、がんばって生き残ったんですよ……」


 すると伊留美は、酔っぱらって少しすわった目で言い放った。

「それよ、それ! チームワークよ! いい? もう分かっていると思うけど、このゲームで大事なのは、チームワークなのよ! でもレベルが低いプレイヤーと組むと、それ以前の問題なの! だからアンタたちのレベルを上げて、作戦を立てなきゃいけないの! 誰が前衛ぜんえいで攻撃して、誰が後衛こうえいでフォローするか考えなきゃいけないの! そうしなきゃこれからの戦いは、きっと生き残れないわよ!」

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