第二十六話

 するとすぐに、反撃はんげきらった。

『ドウ……』

『ドウ、ドウ……』


 くっ、合計、三発喰らった。ちょっと、やべえな……。でも何とかして、俺のキャラを後ろに下げねえと。そうすれば敵キャラは俺のキャラを攻撃するために前進してきて、伊留美いるみのキャラが敵キャラの後ろに回りめるはずだ!


 俺は俺のキャラを脇道わきみちから出し、右を見てみた。だが脇道は無かった。くそっ。敵キャラから離れられる脇道があったらそこまで移動して、攻撃してくる敵キャラを前進させられるのに……。


 俺は更に、右を見た。すると通路の向こうに、T字路じろが見えた。うん。あそこまで行って敵キャラから離れれば、確実に攻撃してくる敵キャラを前進させられるだろう。


 だがT字路までは、距離がある。移動している途中で、敵キャラに攻撃されるのは確実だ。今の俺のキャラのライフは、三つ。できればもう、一つも減らしたくない……。でも、ビビってる場合じゃねえ! 敵キャラを前進させて伊留美のキャラを回り込ませなけりゃ、俺たちは勝てねえ!


 俺は覚悟かくごを決めると、俺のキャラを通路の脇道から出した。するとやはり、敵キャラは攻撃してきた。

『ドウ……』

『ドウ、ドウ……』


 俺は俺のキャラを左右に移動させ、ジグザグにT字路を目指めざした。

「うおおおお!」


 俺のキャラは一発攻撃を喰らったが、何とかT字路を右に曲がって俺のキャラをかくした。すると敵キャラは俺のキャラを攻撃するために、前進してきた。それを確認した俺は、叫んだ。

「伊留美、今だ、行けええええ!」

「分かってる!」


 すると伊留美のキャラは、二人の敵キャラの後ろに現れた。伊留美のキャラは一人の敵キャラに、集中攻撃した。

『タタタタタッ、タタタタタッ……』


 なるほど、一人づつ確実に倒す作戦か。敵キャラの武器はライフルだから、連射れんしゃはできない。そのスキをついての、集中攻撃か……。と思っていると、もう一人の敵キャラが伊留美のキャラに攻撃しだした。

『ドウ、ドウ……』


 すると伊留美のキャラに攻撃されていた敵キャラも、反撃した。

『ドウ……』


 俺は、これはマズいと思い、ライフルをって伊留美を援護えんごした。

『ドウ、ドウ、ドウ、ドウ、ドウ……』


 すると敵キャラが、のけぞった。ライフが一つ、減ったはずだ。俺は、叫んだ。

「行け、伊留美! たおせ!」


 すると伊留美も、叫んだ。

「分かってる! うおおおお!」

『タタタタタッ、タタタタタッ……』


 再び伊留美は敵キャラの一人を集中攻撃して、倒した。俺は思わず、叫んだ。

「やったな、伊留美!」


 だが伊留美は、気をいていなかった。

「まだもう一人いる! 援護して!」

了解りょうかい!」


 すると一人残った敵キャラは、俺たちの集中攻撃を喰らってあっさりと倒れた。それでやっと伊留美は、一息ひといきついた。

「ふう、残るはボスキャラ、ただ一人ね……」


 なので俺も、一息ついた。

「ああ、そうだな……」


 すると、彩華あやかさんと景和けいわの声がした。

「あ、修吾しゅうごさん!」

「よかったー! 二人と合流できてー!」


 彩華さんと景和の話によると、二人はゲームが始まってすぐに合流できたそうだ。そして二人で協力して敵キャラを倒そうとしたがこの建物の中が複雑で、気付くと同じ場所をグルグルと回っていたそうだ。


 そしてやっと建物の構造こうぞうを理解して進んだら、俺と伊留美のキャラと合流できたということだ。なので俺は、もう敵キャラを五人倒したと説明した。すると景和は、驚いた。

「え?! もう五人、倒したんですか?! しかも伊留美さんは、『スコーピオン』の国内ランキングの一位?!」


 伊留美は冷静に、答えた。

「まあね。だからアタシにとっちゃこんなゲーム、楽勝だわ」


 彩華さんと景和は、まるで異星人いせいじんを見るかのような目で伊留美を見つめた。俺はとにかく四人が合流できたんだから、協力してボスキャラを倒そうと提案ていあんした。彩華さんと景和はうなづき、伊留美も告げた。


「ま、しょうがないわね。でもトドメはアタシがすからね。それで六人全員を倒せばもらえる特別ボーナスの百万円を、アタシがもらうから」


 俺と彩華さんと景和は、その言葉をたのもしく感じた。そして少し、安心した。それならこの第三回戦も、生き残れるだろうと。だがその安心感は、あっさりとやぶられた。左側の一番端の男の、必死の叫び声を聞いたからだ。

「ひいいいい! 助けてくれ!」


 そして今まで聞いたことが無い、銃声じゅうせいを聞いた。

『ドパアン! ドパアン!』

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