第二十四話

 俺は、聞いてみた。

「おい、伊留美いるみ。敵キャラは、何の武器を持っていた?」


 すると伊留美は、当然という口調くちょうで答えた。

「ライフルだったわ。ま、ライフルなんて連射れんしゃできないから、こっちのマシンガンの射程距離しゃていきょりに入れて連射すれば楽勝よ!」


 確かに、そうだ。伊留美の言う通りだった。だから俺は、提案ていあんした。

「伊留美、俺と組まないか?」


 伊留美は少し、考え込んだ。

「ふーん……。ねえ、あんたの武器は何?」

「あ? ライフルだが、それがどうした?」

「ライフルねえ……。あんたと組んで、アタシに何のメリットがあるの?」


「お前の武器のマシンガンの射程距離に敵キャラが入るまで、俺がライフルで援護えんごする。お前はさっきライフルが相手でもマシンガンの射程距離に入ってしまえば楽勝って言ったけど、その前に攻撃されたんじゃないのか?」


 すると伊留美は小さなため息をついた後に、答えた。

「ふん、まあね……。でも三発、らっただけよ。ライフは一つも減ってない」

「なるほど。でも今度はライフルを持った敵キャラが、二人以上出てきたらどうする? さすがのお前も苦戦くせんすると思うが?」


 伊留美は更に、考え込んだ。そして答えた。

「まあね。確かにその時は、ちょっとピンチになるわね……。よし、アンタと組んであげる。でも一つ、条件があるわ」

「何だ?」


「敵キャラにとどめをすのは、アタシにやらせて。敵キャラを全員倒せば、百万円の特別ボーナスがもらえるんでしょう? アタシはそれが欲しいの!」


 何だ、そんなんことか。そんなことは、かまわない。俺は特別ボーナスの百万円なんて、興味きょうみが無い。今は味方と合流ごうりょうして数で有利になって敵キャラを倒して、生き残る方が重要だ。あ、生き残って優勝すれば、一億円が手に入るか……。だから俺は答えた。

「いいぜ。とどめは、お前にまかせた。だから、俺と組もう!」


 伊留美も、うなづいた。

「ええ、そうしましょう!」


 そして通路を前進しようとした時に、敵キャラが二人現れた。そして早速さっそく、攻撃してきた。

『タタタタタッ』

『タタタタタタッ』


 二人の敵キャラが持っている武器は、マシンガンのようだ。だが射程距離外なので、俺たちに攻撃は当たらない。すると伊留美は、ため息をついた。

「はあ、あいつら素人しろうとね……」

「どういうことだ?」


「弾数がかぎられているマシンガンで射程距離外から攻撃するなんて、弾丸だんがん無駄遣むだづかいよ。それに自分の居場所がバレた。威嚇射撃いかくしゃげきをするなら、もっと効果的にやらなくちゃ」

「なるほど……」


 すると伊留美のキャラは、通路の左側にある脇道わきみちに入った。うん? 何だかんだ言って、逃げるのか? と思っていると、二人の敵キャラは攻撃してきた。

『タタタタタッ』

『タタタタタタッ』


 だがやはり射程距離外なので、俺のキャラには当たらない。そしてこの距離でも、ライフルなら攻撃できる。そう思って俺が敵キャラを攻撃しようとした時、二人の敵キャラの後ろから伊留美のキャラが現れた。伊留美のキャラは二人の敵キャラに近づきながら、攻撃した。

『タタタタタッ、タタタタタッ』


 すると二人の敵キャラは、同時にのけぞった。うお! すげえ! あっという間に二人の敵キャラのライフを一つ、減らした!


 そして伊留美のキャラは、二人の敵キャラの間に入った。俺は、警告けいこくしようとした。一人で二人の敵キャラの相手をするのも無理があるのに、あの間に入るなんて危険すぎる!


 だが伊留美のキャラは、二人の敵キャラに攻撃を続けた。マシンガンで反撃されると敵キャラの後ろに移動して弾丸をかわし、また攻撃されると今度は二人の敵キャラの間に入ってかわした。そしてまたマシンガンで反撃されると、今度は敵キャラの前に移動して弾丸をかわした。その間も伊留美のキャラは二人の敵キャラに攻撃を続け、気が付くと二人の敵キャラを倒していた。


 俺は、唖然あぜんとした。こんな短時間で、敵キャラを二人も倒すなんて! しかも伊留美のキャラのライフは、一つも減っていないようだ。これが『スコーピオン』国内ランキングの、一位の実力か……。俺はそんな伊留美と組むことが出来て、心強く思った。だが早速、伊留美の毒舌どくぜつを喰らった。

「ちょっと、アンタ。何、ボーッとしてたのよ? ライフルで攻撃できる距離にいるんだから、アタシの援護をしなさいよ!」


 俺は動揺どうようしながら、言いわけした。

「え? いや、お前のキャラの動きに見とれてて……。それにもしお前のキャラに攻撃が当たったら、マズいと思って……」


 すると伊留美は、ため息をついた。

「あのねえ。このゲームじゃ味方が撃った弾丸に当たっても、ダメージにはならないの。もう三回戦なのに、そんな重要なことも知らなかったの?!」

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