第十八話
「実は私はもう商社から内定をもらっているんですが、OLの給料はやっぱり安いじゃないですか? でも妹のガンの
すると
「へー、そうなんですか。僕は今、一人きりです。なので一生、一人で生きていこうと思って、そのお金を手に入れるためにゲームに参加しました。まさかこんなことになるとは、思いませんでしたが」
そういえばと思って俺は、彩華さんに聞いてみた。
「彩華さんは人を殺すことを、どう思ってんの?」
彩華さんは真剣な表情で、答えた。
「うーん、やっぱり、しょうがないかなあって思ってます。父も母も働いて妹の治療費を
だから私は人を殺してでも、妹の治療費を手に入れたいと思っています……」
そうか。彩華さんも、背負っているモノがあるんだな……。それに比べて俺は就職先が決まらないという、二人に比べれば軽い気持ちでゲームに参加した……。
そう思うと、やりきれなくなった。そのやりきれなさから、俺はジョッキでビールを三杯飲んだ。もともと酒に強くない俺は、見事に
「くそー! こうなったら、優勝してやるー!
すると彩華さんも景和も、今日はこれくらいで飲みは終わった方が良いと考えたようだ。飲み代は割り
「くそー! ちくしょうー!」
そんな俺を二人は、心配そうに見つめた。
「彩華さん。
「あまり大丈夫そうじゃ、ないですね……」
すると彩華さんが、聞いてきた。
「修吾さん。修吾さんは、どこに住んでいますか?」
俺は、
「俺かー! 俺は
景和は、やれやれという表情で彩華さんに告げた。
「ダメですね、これは……。どちらかが、送りましょう」
「そうですね……」
「僕は板橋区に住んでいるんですが、彩華さんはどちらに?」
「私は世田谷区です」
「そうですか……。どっちも遠いですね……」
すると彩華さんは、ひょうひょうと告げた。
「いいです、私が修吾さんを送ります」
「え? それは僕が助かりますが、彩華さんは大変じゃないですか?」
彩華さんは、笑顔で答えた。
「いいんですよ、今日は修吾さんに助けてもらったので。私のナイトさんに……」
「はあ、そうですか。でもそこまで言うのなら、お願いします。おやすみなさい」
「はい。おやすみなさい」
景和と別れた俺と彩華さんは、下りの中央線に乗った。俺は電車の中でも、「ちくしょうー! ちくしょうー!」と喚いた。その
俺は彩華さんにアパートまでの道順を聞かれて、そして彩華さんに連れられてやっとアパートまでたどり着いた。
「修吾さん、
俺はふらふらしながら、ジーパンのポケットから鍵を取り出した。そしてドアを開けると、彩華さんと一緒に部屋に入った。彩華さんは「あら。
それを見た彩華さんは、やっと安心したようだった。
「それじゃあ、私はこれで。おやすみなさい」
と部屋から出ようとした彩華さんに、俺は上半身を起こして告げた。酔いは少し
「彩華さん。俺は彩華さんのナイトだから、いつまでも
彩華さんは「ふふっ」と
「それは、このゲームが終わってからも、ということですか?」
俺はまだ、彩華さんの目を見つめていた。
「ああ。その通りだ」
すると彩華さんは、その目を
「それはダメですよ。私にはガンにかかった妹がいるって、言ったでしょう? なので修吾さんに
俺はベットから立ち上がり、彩華さんの両肩をつかんだ。
「いいんだ、それでいいんだ!」
彩華さんは、不思議そうな表情で聞いてきた。
「え? どうしてですか?」
俺は本心を答えた。俺の中から、止めようとしても止まらない言葉が出てきた。
「俺は今まで、ただ何となく生きてきた。でもショックを受けた。重い荷物を背負っても、
彩華さん、俺に生きる目的をくれ。彩華さんのナイトになって、彩華さんを護るという目的をくれ!」
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