第十七話
まだ午後四時ごろだったので、店はガラガラだった。俺は少し、安心した。今はあまり、人と関わりたくなかったからだ。
そしてテーブルに置いてある、タッチパネルを操作しだした。
「えーと、取りあえず生ビールでいいですよね?」
すると彩華さんは、
「はい。それでいいです」
更に景和は、俺に確認を取った。
「
俺は思わず、
「ふざけんな! 人を殺した後に、酒なんか飲めるか?!」
すると女性店員が、何ごとかとこちらを振り向いた。
俺は頭を抱えて、続けた。
「お前らに人を殺した俺の気持ちが、分かんのか?!」
すると景和と彩華さんは、あっさりと頷いた。
「分かりますよ。僕は一回戦で、二人殺しましたから」
「すると私は、三人ということになります」
俺は信じられないと思い、再び怒鳴った。
「じゃあ、なんでそんなに平気そうなんだよ?!」
景和は少し考えてから、答えた。
「ひょっとしたら、そうじゃないかと思ったんですよ。第一回戦が終わった時に。
ああ、敵キャラも多分、人間のプレーヤーが操作してて、頭を撃ち抜かれたんだろうなあって……」
俺は、
「それじゃあまた人を殺すために、第二回戦に参加したのか?!」
景和は冷静に、答えた。
「まあ、そういうことになるかも知れませんね。大体、第二回戦に参加しなかったら、僕の頭が撃ち抜かれますから」
俺は、何も答えられなかった。確かに第一回戦が終わった後、『れる』は告げた。第二回戦に参加しなかったら
でも、だからって……。
すると景和は、俺の目をまっすぐに見つめて告げた。
「修吾さん、人は死にますよ?」
そして景和は、自分の過去を語った。景和の両親は、景和がまだ小学校低学年の時に悪質なドライバーにあおられて事故を起こして死んだ。それから景和は、
世界の
俺は景和の過去を聞いて、何も言えなかった。こいつはそんな、
だから自分が
「っていうことはお前は、二十一歳?!
すると景和は、何ごともなかったように
「童顔は止めてくださいよ。気にしてるんですから」
「でも安心したー! これから未成年者が生ビールを飲むのかと思ったー!」
それを聞いた景和は、微笑みながら聞いてきた。
「そういえば修吾さんは、何歳なんですか?」
「お、俺か? 俺は二十二歳だ。大学四年生だよ」
すると景和は、おどけた。
「へー、そうなんですか。修吾さんは
俺は思わず、ツッコんだ。
「誰が三十歳だ?! 俺はまだピチピチの二十代だ!」
すると景和は、声を上げて笑った。俺は少し、『ほっ』とした。この理不尽な世の中で、景和が笑ってくれたからだ。
すると彩華さんが、会話に入ってきた。
「え? そうなんですか? それじゃあ、私と同じです。私も二十二歳で、大学四年生です」
あ、そうなのか。彩華さんも二十二歳で大学四年生なんだ、と思いながら俺は言った。
「まー、見た目通りの年齢だな……」
すると彩華さんは、
「えー、それって喜んでもいいんですか?!」
それでも目が笑っている彩華さんを見て、ちょっと怒った顔をも可愛いなと思いつつ俺は疑問を聞いてみた。
「そういえば彩華さんはどうして、このゲームに参加したんだ? お金に困っているようには、見えないけど……」
すると彩華さんは、笑顔で答えた。
「はい。私には十六歳の妹がいるんですが、ガンなんです」
俺は意外な答えに、驚いた。
「え?!」
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