第十四話

「はい、そうです。攻撃を一回、当てるだけで相手のライフを一つ減らせますから。でも修吾しゅうごさんたちの作戦からすると、ライフルにすれば良かったかな……。次に戦う時はピストルじゃない武器を、選ぼうかなあ……」


 そして俺は、二人に告げた。

「よし。じゃあ、作戦はこうだ。彩華あやかさんのキャラと景和けいわのキャラは、敵キャラを探してオトリになってくれ。見つけたらピストルを撃って、知らせてくれ。そしたら俺が、ライフルで倒す。くれぐれも無茶むちゃはするなよ」


 彩華さんと景和は、元気よく答えた。

「ええ、もちろん。でも、もしもの時は私をまもってね、ナイトさん」

「よーし、がんばるぞー!」


 そして俺は、俺のキャラを大木に登らせ始めた。するとすぐに、『パン』という銃声がした。まさか、もう敵キャラを見つけたのか?! と俺は俺のキャラを急いで登らせ、伸びている太い枝に移動させた。


 見てみると、彩華さんと景和のキャラと少し離れたところに、『ENEMY』と頭上に表示された敵キャラがいた。


 俺は急いで、敵キャラに攻撃した。すると弾丸のあとで俺の居場所が分かったのだろう、敵キャラが反撃してきた。俺のキャラは二発、喰らってしまった。しまった! と思ったが俺のキャラのライフは、一つも減っていない。おそらく敵キャラの武器は、ライフルなのだろう。だからあと三発喰らってはじめてライフが一つ減るはずだ。くっ、相手の武器もライフルか。俺は少しあせったが、すぐに冷静になった。


 敵キャラより高い場所にいる、俺のキャラの方が有利なはずだからだ。俺からは敵キャラがどこにいるのか、丸わかりだ。そして俺のキャラには大木のかげという、かくれる場所がある。


 俺は取りあえず、俺のキャラを大木の陰に隠した。敵からの反撃が無いので見てみると、敵キャラは移動していた。おそらく隠れる場所を、探しているのだろう。だが敵キャラがいるところは、草原だ。隠れる場所は無い。それでキョロキョロしだした敵キャラを、俺は攻撃した。敵キャラは反撃してきたが、俺は俺のキャラを大木の陰に隠して、やり過ごした。そして攻撃を続けて、とうとう敵キャラを倒した。


 俺は、自信を持った。やはり武器がライフルの場合、敵キャラより高い場所にいる方が有利だと。こうして三人目の敵キャラを倒した俺たちは、同じ作戦で四人目、五人目の敵キャラを倒した。どちらも武器はピストルだったが、彩華さんと景和のキャラは敵キャラを見つけると合図をして大木に隠れて安全を確保して、俺もピストルよりも射程距離が長いライフルで攻撃できて安全だった。俺たちのキャラのライフは、一つも減らなかった。


 すると俺の左隣にいる景和は、興奮こうふんした。

「すごいじゃないですか、修吾さん! 一人で五人の敵キャラを倒すなんて!」


 俺は景和にこれとよく似た、『スコーピオン』というゲームで特訓したことを教えた。


 景和は神妙な口調で、つぶやいた。

「『スコーピオン』か……。僕も特訓してみようかな……」


 しかし俺は、異変に気づいていた。画面に『ステージ クリアー』の文字が、表示されないからだ。


 すると俺たちのキャラの前に、六人目のキャラがいきなり現れた。俺は混乱した。何だ、こいつ? このゲームは五人対五人で、五人を倒せば『ステージ クリアー』じゃないのか?!


 だが、そんなことを考えている場合じゃないことになった。六人目のキャラが彩華さんのキャラに向かって、銃のようなものをかまえたからだ。


 俺は俺のキャラを、とっさに彩華さんのキャラの前に移動させた。

「危ない!」


 すると、『タタタタタッ』という銃声がした。くっ、まずい、攻撃を喰らった?!

 と思い画面を見ると、やはり俺のキャラのライフが一つ減って三つになっていた。そして俺の右脚は、俺の後ろにいるペナルティ・スナイパーに撃たれた。


 くそっ、と右脚の痛みに耐えていると、『れる』の声が会場に響いた。

「さー、このステージのボスが現れました! ボスが持っている武器は、マシンガンです! 

 マシンガンは連射することができてピストルよりも有利なので、相手に五発、当てないとライフを一つ減らすことができません。弾数は200発です。それでは、がんばってボスを倒してください!」


 俺は混乱しながらも、何とか考えた。ボス? それが六人目の敵キャラの正体か。だからそういうことは、先に言えってんだよ! とボヤいても仕方ねえ。とにかくこいつを、倒すしかねえ!


 俺はそう考えると、彩華さんと景和に叫んだ。

「とにかく、隠れろ! ここは大木がたくさんある! そうすれば簡単には、攻撃されないはずだ!」


 すると彩華さんと景和のキャラは、それぞれ近くの大木に隠れた。


 そして右隣にいる彩華さんに、質問攻しつもんぜめにされた。

「取りあえず自分のキャラを隠したんですけど、どうするつもりですか?! あのボスを倒せるんですか?!

 っていうか、どうして私のキャラをかばったりしたんですか?! あなたのライフが一つ、減ったんじゃないんですか?!」


 俺は、冷静に答えた。俺は自分がしたことに、ちっとも後悔こうかいしていなかった。

「それは、俺が彩華さんのナイトだからに決まってるだろ。それに俺は彩華さんに、りがある」

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