第十三話

 なおも考え込んでいる俺に、彩華さんは告げた。

「じゃあ、決まりでしょうか。修吾さんはまた、大木に登っていてください。私は地上で敵キャラを探して、見つけたらピストルを撃って知らせます」


 俺は、聞いてみた。

「そういえば彩華さんの武器は、ピストルなのか。ライフルにすれば良かったのに。それなら安全なのに」


 すると彩華さんは、微笑ほほえんだ。

「でもライフルだと五回、敵キャラに攻撃を当てないとライフを一つ、減らせないんですよね? 

 その点ピストルは確かに敵キャラに近づかないと、攻撃が当たりません。でも一回、攻撃を当てれば敵キャラのライフを一つ減らせるので、私はピストルを選びました」


 俺はそうまでして敵キャラを倒したいのか? と疑問に思ったが、今は聞けなかった。今は命をけたゲームの最中さいちゅうだからだ。


 この二回戦も勝ち残ったら、彩華さんがどうしてこのゲームに参加したのか理由を聞いてみようと決心した俺は、彩華さんに告げた。

「よし、分かったぜ、彩華さん。彩華さんが敵キャラを探して、オトリになる作戦で行こう。

 でも心配しないでくれ。彩華さんのライフは、一つも減らせない。俺がナイトになって、彩華さんをまもるからな!」


 すると彩華さんは再び、微笑んだ。

「はい、お願いします。私のナイトさん」


 俺はうなづくと、俺のキャラを少し先にある大木に登らせた。そそて『彩華』と頭上に表示されたキャラを見つけた。彩華さんのキャラは、真っすぐに歩き出した。しばらく真っすぐに歩いていたが敵キャラが見つからないのだろう、そこから円をえがくように歩いた。しかし敵キャラは、見つからなかった。


 俺は右隣のパイプ椅子いすに座っている彩華さんに、声をかけた。

「なかなか見つからないな……。今度は左側で、同じように探してみてくれないか?」

「はい、分かりました」


 そう答えると彩華さんのキャラは、左側に歩き出した。少しすると、『パンパン』と銃声が響いた。パソコンモニターを見ると彩華さんのキャラの前方に、弾丸のあとが表示された。彩華さんのキャラが、敵キャラを見つけた合図だ。彩華さんのキャラの正面に、『ENEMY』と表示された敵キャラがいた。俺は敵キャラに素早く五回、攻撃した。彩華さんのキャラは、敵キャラから離れた。


 すると敵キャラは弾丸の跡から俺のキャラの居場所に気づいたのだろう、攻撃してきた。だがねらいがさだまらず、俺のキャラには当たらない。おそらく敵キャラの武器は、ピストルだろう。だから射程距離が短いので、狙いが定まらない。俺は俺のキャラを大木に隠すまでもなく、ライフルで攻撃を続けた。そして敵キャラのライフがゼロになったんだろう、敵キャラは消滅した。二人目の敵キャラを倒した俺は、するすると俺のキャラを大木から下ろして、彩華さんのキャラに近づけさせた。


 そして俺はパソコンモニターを見つめたまま、右隣にいる彩華さんに確認した。

「大丈夫か? ライフは減ってないか?」


 すると、彩華さんの落ち着いた声がした。

「はい、大丈夫です。それにしてもやっぱりこれは、有効な作戦ですね。私は敵キャラを見つけたらピストルを撃って合図して、逃げればいいんですから」

「そうだな。そして俺も敵よりも、有利に戦える」


 そしてこの作戦を続けようと思った時、俺の左隣から声がした。

「あ! 修吾さんに彩華さん!」


 画面を見てみると頭上に、『景和』と表示されたキャラがいた。

 景和は俺たちのキャラと合流できて、安心したようだ。

「あー、良かったー。修吾さんたちと合流できて。さっきまで一人で、不安だったんですよー」


 俺は左隣にいる景和に、声をかけた。

「ああ。俺もお前と合流できて嬉しいぜ。ところで敵キャラは倒したか? ライフは減ってないか?」

「いいえ。敵キャラは一人も倒していません。ライフも一つも減ってません」

「そうか」


 すると景和は、聞いてきた。

「修吾さんたちの方は、どうですか?」


 俺は、彩華さんのキャラをオトリにして、俺が大木の上からライフルで攻撃する作戦で二人目の敵キャラを倒したことを説明した。


 すると景和の、はずんだ声が聞こえた。

「何ですか、その良さそうな作戦は! 僕も混ぜてください!」


 やはり彩華さんも、弾んだ声を出した。

「良いわね! そうしましょうよ、修吾さん!」


 俺は、少し考えてみた。ふーむ、確かに二人よりも三人の方が有利か?……。

 だが俺は、景和に確認した。

「景和。お前の武器は何だ?」


 景和は、少しためらいながら答えた。

「え? ピストルですけど、どうかしましたか?」

「やっぱりお前も、ピストルの方が有利だと思ったのか?」

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