第十一話

 俺は思わず、叫んだ。

「よし、彩華さん! 今日は俺がナイトになって、彩華さんをまもるぜ!」


 すると会場にいる、皆が俺たちを見た。俺は少しずかしくなったが、この第二回戦で彩華さんを護る決意は変わらなかった。


 するとその中から、一人の中肉中背ちゅうにくちゅうぜいの男が近づいてきた。

「あ、あのー……。僕も仲間にしてもらっても、いいですか?」


 俺は、その男の顔を見た。ちょっと気が弱そうな顔には、見覚みおぼえがあった。


 俺が記憶を辿たどっていると、その男は自己紹介した。

「あ、あの、僕は、水江景和みずえけいわっていいます。景和って呼んでください。よろしくお願いします……」


 その時、俺はこの男の顔を思い出した。やはり先週の第一回戦で、俺と同じチームになって戦ってくれた男だ。だから俺は死なずにすんだ。だから俺は今、ここにいる。それを考えると景和の願いをかなえることは、当然だ。


 だから俺は、答えた。

「ああ、いいぜ。今日から俺たちは、仲間だ!」


 景和は笑顔を見せた後、頭を下げた。

「ありがとうございます! これからよろしくお願いします!」


 すると俺は、ふと気になって彩華さんに聞いた。

「いいよね、彩華さん?」


 彩華さんは、笑顔で答えた。

「はい、もちろんです。よろしくお願いします、景和さん」


 景和は、真顔で答えた。

「こちらこそ、よろしくお願いします、彩華さん」


 それを見ていてテンションが上がった俺は、右手をき上げた。

「よーし、俺たちは今日から仲間だ! そして、このクソゲーをクリアしてやろうぜ!」


 すると彩華さんと景和も、右手を突き上げた。

「そうね、そうしましょう! おー!」

「はい、がんばりましょう! おー!」


 そして俺たちは、笑いあった。


 すると『れる』の陽気な声が、会場に響いた。

「皆さん、こんにちわー! それでは第二回戦を始めるので、準備をしてくださーい!」


 俺は、パイプ椅子に座った。俺の右側には彩華さん、左側には景和が座った。更に左を見てみると、見知らぬ男が二人、パイプ椅子に座っていた。俺はあの二人とも仲間になった方が良いかな、と考えたが止めた。もうすぐゲームが始まる。その時間は無い。


 俺はIDカードを、パソコンに差しんだ。そして現れた画面を見て、こおいた。彩華さんと景和と仲間になった喜びも、き飛んだ。画面右上のライフが、四つになっていたからだ。


 俺は激しく混乱こんらんして、『れる』に怒りをぶちまけた。

「おい、『れる』! どうなってんだ?! まだゲームが始まっていないのに、もうライフが一つ減っているぞ! どうなってんだ?!」


 すると『れる』は、説明した。このゲームは、前回の情報がIDカードに引きがれる。だから第一回戦でライフが減った人は、そのままライフが減った状態で第二回戦が始まると。


 俺は自分のことよりも、彩華さんのことが気になった。だから彩華さんを見つめた。彩華さんのライフは第一回戦で、すでに三つになっている。つまりこの第二回戦で、三回攻撃されたら……。


 すると俺の視線に気づいた彩華さんは、俺の顔を見て微笑ほほえんだ。俺は彩華さんは、すでに死を覚悟してこのゲームをしているんだな、と気づいた。だから俺は、再び決心した。俺が彩華さんのナイトになる。俺が彩華さんを、絶対に護ると。


 そして俺は、ゲームの準備を始めた。すると、ちょっと良いことがあった。画面下を見てみるとナイフとピストルのアイコンの隣に、ライフルのアイコンがあった。俺は急いでライフルのアイコンをクリックしてみた。すると、『敵キャラに五回攻撃が当たると、敵キャラのライフを一つ減らすことができる。弾数200発』と表示された。


 俺は少し、考えてみた。ピストルは攻撃が一回当たると敵キャラのライフが一つ減るのに、ライフルは五回攻撃を当てないとライフを一つ、減らせないのか……。多分ライフルはピストルよりも遠くから攻撃できるから有利だ、だからゲームバランスを考えて、こうなっているんだろう。なるほど、と俺は感心してしまった。そして俺は、ライフルを武器に選んだ。俺は『スコーピオン』でライフルで戦って勝つコツを覚えたし、弾数が100のピストルよりも弾数が200のライフルの方が、やはり有利だと考えたからだ。


 それとこの『アーツ』は『スコーピオン』と違って、お金のようなモノは手に入らないようだ。そしてステージをクリアするごとに使える武器が増えるんじゃないかと、勝手に考えた。


 すると『れる』の大きな声が、会場に響いた。

「それでは皆さん準備ができたようなので、ゲームを始めます。第二回戦、スタート!」


 すると俺は、再び混乱した。ステージが街中まちなかじゃなかったからだ。大木たいぼくと背の高い草がうっそうとしている、ジャングルが今回のステージだったからだ。俺は冷静に考えてみた。とにかく彩華さんと景和のキャラに、合流することが先だ。だがマウスを操作しても、二人のキャラどころか敵キャラの姿も見えなかった。

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