第二話

 次の日、午後五時。

 俺はコンビニでのバイトが終わるといつものようにそのコンビニで、カップラーメンとおにぎりを一つづつ買った。今日のカップラーメンは俺の大好物だいこうぶつのシーフード味だ! と喜んでしまった自分が少しなさけなかった。


 まだ内定ももらえず、来年からどうなるのか全然分からないのに、こんなことで喜んでしまったからだ。最悪、コンビニのバイトを続けるか。働く時間を、もっと長くしようとも考えた。当分はそうして、景気が良くなるのを待つか……。


 そう考えながらアパートに帰ってきた俺は、ツイッターを開いた。今朝けさ、面白い形の雲の写真が撮れたので、それをツイートするつもりだった。するとDMのアイコンに①のしるしが付いていた。DMが一つ送られてきた印だ。今までも、『きれいな風景の写真ですね』という内容のDMを何度かもらったことがあった。今回もそれかな、と思いDMのアイコンをタッチしてみると驚いた。


『ゲームの参加者に、決定しました。明日の午後一時に、東京駅の駅前でお待ちください』というDMだったからだ。俺は喜びで思わず、こおどりした。


 マジか?! 優勝賞金一億円をゲットする、チャンスだ! 俺はあまりのうれしさにツイートすることもせず、大好物のカップラーメンシーフード味とツナマヨおにぎりを食べて明日にそなえて早めに寝た。




 目が覚めると俺は、朝食を作った。食パン一枚を軽く、フライパンで焼く。それにバターをる。更にフライパンで目玉焼きを作りながら、ベーコン二枚を焼いた。それらを食べながら、炭酸ジュースを飲んだ。朝は腹が減っているから、しっかり食べるようにしていた。そうすると日中はあまり腹が減らないから、昼食と夕飯は簡単な物ですませていた。


 今日は日曜だから、大学はもちろん休みだ。コンビニのバイトのシフトが入っていたが店長に、今日は体調が悪いから休ませてほしいと連絡した。もちろん仮病けびょうだが一億円を手に入れるチャンスだ、バイトなどしている場合ではない。スマホの時計を見てみると、まだ午前十時だった。


 午後一時まではまだ、時間がある。だが俺は、もう東京駅に行くことにした。万が一にも遅刻したくないし、東京駅周辺の景色をスマホのカメラで撮りたいと思ったからだ。


 立川駅から中央線に乗って、一気に東京駅まできた。東京駅は赤レンガのかべと青い屋根やねでできていて、その色合いろあいにひかれて思わず何枚もスマホで写真を撮った。気が済むまで写真を撮っていると十二時になったので、近くのファストフードでハンバーガーを食べた。日曜日の昼なので店内はだいぶ混んでいて、食べ終わると十二時五十分になっていた。


 ヤバい! と思って東京駅の駅前に向かうと、二十人くらいの人だかりができていた。よく見てみると年齢も性別もバラバラだった。でもやはり、若い人が多いような気がする。もしこの人たちがあのツイートを見た人たちなら、納得だ。ツイッターをやっている人たちは、やはり若い人が多いだろうから。


 そして十二時五十五分になると、大きなバスが一台やってきた。少し奇妙なのは客が座る側の全ての窓のカーテンが、閉められていたことだ。これじゃあどこに行くのか、分からないんじゃないかと思った。するとバスのドアが開いて、黒いスーツと黒いサングラスの男が下りてきた。


 男は低い声で、俺たちに声をかけてきた。

「ツイッターのDMをもらい、ゲームに参加される方々でしょうか?」

 俺も含め、すべての人たちがうなづいた。


 すると男は、続けた。

「それではバスに、乗ってください。念のため、アイマスクを付けてください」


 男はバスに乗り込んでいく人たちに、アイマスクをくばり始めた。俺もアイマスクを受け取ると、バスに乗り込んだ。中は普通のバスに思えた。ただ全てのカーテンが閉じていたので、薄暗うすぐらかった。そして更にアイマスクを着けろという。だんだんこれから始まるであろうゲームがうさん臭く思えてきたが、俺は座席に座りアイマスクを着けた。


 まあ、いい。別に命まで取られるようなことには、ならないだろう。それに危険なゲームだったら、途中で止めればいいだけの話だ。どんなゲームなのか、やってみなければ分からない。俺はどんなゲームが始まるのか興味があるし、やはり賞金の一億円は魅力だった。発車したバスの中で、俺はそう考えていた。

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