47.最後の魔神、機神の最後
「アームドアーマー隊を出しても……。足手まといにしかならん状況だな……」
皇帝陛下は呟く。その通りだと僕も思う。
「アシュメル君……。ステッド、大丈夫なの? 全身に氷の破片が刺さって……」
「機神は、痛みを感じないけど……。でも、何か感じる。そう、感情の波……」
ローニさんの問いに、答えになっていない答えを返しつつ。僕は、ステッドが何かとんでもないことを考えている。そんなことを感じたような気がした。
「! 機神ステッド、前進を始めました!! 双方の火力を考慮した上では、無謀と言える行動です!!」
「なんだと?! おい、管制官!! どういう事だ!!」
皇帝陛下が怒鳴る。
「突っ込む気だ……!! ステッド君、終わりにする気なんだ!! あれが、最後の魔神だから。そいつが片付けば、自分はもう、それでいいって……!」
「バカなこと言わないで!! 戦争が終わったら!! コアは返してもらって、義体に移してくれるって約束でしょ?!」
「約束はした。守る気もある。しかし、機神ステッドが自らの意思で特攻をするのを。どうやって止める? 物理的にもそんな手段はないぞ……」
ローニさんの悲鳴に、皇帝陛下は奥歯を噛み締める音を響かせて答えた。
「……全艦突撃。ローニ少佐。君は子供を連れて逃げろ。せめてもの、機神ステッドとの約束だ」
皇帝陛下も、完全に覚悟が決まってしまったようだ。ローニさんと子供に幾人かの護衛をつけると。脱出用の航空機に乗せて、本土に向かって返すように命じた。
「ニヒロ、貴様も逃げろ。戦争は、これで片付く。俺のような博奕打ちな皇帝は、必要なくなる。お前のような腕のいい内政官には生き残って国家運営を任せねばな」
「陛下。自分のことを良くお分かりのようで」
宰相は、苦笑いをすると退出した。
* * *
魔神ヒュールバインは、多方面から押し寄せるこちらの飛行戦艦隊に向かって火力を割いていて。正面からじりじりと近づく機神ステッドはほぼ無力化したものと多寡を括っているかのようだ。
冷却エネルギー収束。そこから、時折機神ステッドに向かっても砲撃を加えるが、完全に舐めている。
無理もない。機神ステッドの十二対の翼はボロボロになり。
陽光子砲という最大の武器を失っているのだから。
それでも、機神ステッドは進む。少しずつ、加速度を加えて。
そして。
魔神ヒュールバインと機神ステッドの距離がある臨界点を切ったとき。
機神ステッドを中心とした熱と光の爆発が。
辺りを包んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます