46.機神の消耗
僕は、見届けていた。機神を設計した者の責任として。
技術部の報告によれば、機神には限界があったらしい。機械部品を取り換えても、ステッド君だったコアがそれを拒むように、錆びたり劣化したりしてしまうらしい。
「あの人。もう、戦いたくないのかもしれない。ステッド……」
僕と同じ飛行戦艦に乗っているローニさんが、だいぶ大きくなった息子さんの手をつないで、僕と同じように帝国の飛行戦艦隊の先頭に立って進む機神、ステッド君を見守っている。
僕らを含む飛行戦艦隊は、魔大陸の首都、魔都に向かっている。
最後に残る魔神、ヒュールバインとの決着を着け。
二度と人類が魔族化させられないようにと。
「ニヒロ。俺のフライングアームドアーマーの用意。出来ているだろうな?」
「はっ。陛下。万端にてございます」
「これでケリをつける。魔帝との因縁もな」
「決心を為されましたか」
「フン。そんなものはとっくにな。奴とは、こうなることは分かっていた」
艦長席に座っているのは、皇帝陛下だ。宰相のニヒロ閣下も同席している。
「機神ステッドが命を張っている。皇帝たる俺が、ここで臆してどうする。これでも、帝国大陸全土を治める者だ。己の命を惜しんで、国の繁栄無きことなど知っているぞ」
皇帝陛下の声は、聴いていて心地いい。何というか、安心感と勇気を与えてくれる。
「もし、機神がヒュールバインに敗れるようなことがあれば。残ったフライングアームドアーマー隊と飛行戦艦隊の総火力で沈める。後はないぞ、貴様ら!!」
喝が飛ぶ。
* * *
機神ステッドと、魔神ヒュールバインの戦闘が始まった。
先手を取ったのは、機神ステッド。十二対の翼に、陽光を集めてエネルギーを溜め、そのエネルギーを収束砲に集め。充分に溜めて撃ち放つ。
それに対し、魔神ヒュールバインは氷の盾を発生させて、防ぐ。氷の盾はすぐに砕けたが、魔神ヒュールバインは驚くほどの速度で盾を連続生成して何とか防ぎきる。
そのあとの切り返しも凄まじい。
融けない氷の盾の砕けた破片を武器として、機神ステッドにオールレンジの攻撃を加えてきた。
かなりの数の氷の破片が、機神ステッドに刺さり込む。その上に。
魔神ヒュールバインは冷却エネルギーの充填を始めた。
こちらに平面を向けた三角錐の形をした魔神ヒュールバインは。粘土のようなものを、表面に発生させて、収束砲を形作る。
シュガッ!! っという空気を劈くすさまじい冷却音が戦闘空域に響く。
機神ステッドは、凍り付いて一時行動不能になった。
「撃てぇ!!」
皇帝陛下の指揮が飛ぶ。その声に応じて、飛行戦艦全艦隊が主砲斉射。魔神ヒュールバインの行動を制して、機神ステッドに立ち直る時間を稼ぐ。
キュワッ!! っという音がして。魔神ヒュールバインが指向性拡散冷却砲を撃ち放ってくる。
帝国軍飛行戦艦隊の何隻かが、それで沈んだ。
最古の魔神、MG=01ヒュールバイン。一筋縄ではいかなそうだ。
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