深い森
ぼくはしばらくのあいだ、田んぼの広がる何もない田舎道を歩いていた。
今ひとつ言いたいことがあるとすれば、
…足がとても痛い。
ぼくは運動が苦手だし、運動会なんて大嫌いだ。
気づけば随分と歩いてきていたらしく、振り返って見たけれど、帰り道がどれなのかまったくわからない…
けれど、帰りたくなかったし、お母さんたちに見つかりたくなかった。
だからぼくは、横に広がっていた大きな森のなかへ入って、山道を歩きはじめた。
ぼくの知らない道を行って、ぼくの知らない森のなかの果てのような場所に、どこか見覚えのある、ぼろぼろの古い神社がぽつんとあった。誰もここに参拝する人はいないのだろうか。
どうしてこんなにぼろぼろなのか。
なんでこんなややこしい道の先にこんなに大きな神社があるのかはわからないが、ぼくは直感的に鳥居をくぐってみることにした。
「えーっと、ここでかみさまにおじぎするんだよね…?」
初詣のときにおばあちゃんが教えてくれたのを思い出しながら、ぼくはかみさまにおじぎをした。
ぼくが境内に足を踏み入れた途端、さっきまできこえていたはずのセミの声が、急にしんと静まり返る。
なんだか、空気が澄み渡っていくみたいな…
しんとしていて、真夏なのに風が涼しい。
夜の神社の空気は、驚くほどに綺麗だった。
いや、ここの神社がそういうすごい力をもってるとか…そういうことなだけなのか?
そのへんはわかんない。だってぼくは神社の専門家じゃないから。
とりあえずぼくは荷物を何も持ってこなかったことを後悔した。
お財布がないから、お賽銭をあげられない。
かみさまにごめんなさい、と謝りながら、ぼくは歩みを進めた。
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