見知らぬ人

 少年は夢を見ていた。

とても不思議な夢だった。

この日見た夢に出てきたのは、見たこともない神社の拝殿に腰掛けている女の子。

幼稚園のクラスメートではなかった。

あんな子は見たことないし、とても印象に残る見た目をしているので、会ったことがあるならとっくに思い出してないとおかしい。

もしかして…よく公園で一緒に遊んでくれるお姉さんかも…?

いや、違う。近所の優しいお姉さんは、もう少し身長が高くて、優しそうな目をしてる。

あそこにいる知らない子は、こっちをキョトンとした目で見ているから、まぁ…初対面なのだろう。それに、お姉さんが髪を結んでるなんて…。想像つかないし、見たこともない。

考えに考えたけど、目の前にいるその子に全然見覚えがない―。

全くもって知らない子だった。

知らない女の子は、ぼくに「こんにちは」と微笑んだ。

見た目は年長さんか1年生か…ぐらいなのに、どこか大人びた雰囲気を纒った彼女は、「よっ」と拝殿から飛び降りると、少年の方へ歩み寄った。


「ねぇ君、どこから来たの?」

ぼくは困ってしまった。

ぼくは後ろを振り返る。

驚いたことに、そこには木々が鬱蒼とした森が広がっているだけで、どこから来たのか…検討もつかなかった。

「…もしかして、迷子なの?」

「…うん、たぶん…迷子になっちゃったと思う」

「…君のお父さんとお母さんの名前はわかる?」

「ぼくのお母さんが『星羅セラ』と、お父さんが『大輝ダイキ』だけど…」

「おっけ、ちょっと待っててねー」

女の子はどこかへ走り去った。

ぼくは取り残されたんじゃないかと思うと、とても怖かった。

その時、後ろから音がして。


いつの間にか、後ろに帰り道があった。

あの子がやってくれたのだろうか。

「あ、ありがと…」

言いかけながら振り返ったが、さっきまで確かに後ろにあったはずの神社は、もうそこにはなかった。

あったのは、誰も寄り付くものもなく、寂れ廃れの廃墟になった神社。

ぼくはゾッとした。

あの女の子は、一体―。

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