第548話 荒ぶる猛獣

『…ふぁっく…ふぁっかー…ふぁっけすと。』


望は俺に座れやって言うと謎の三段活用を唱えた。

意味不明。

…ご機嫌斜め過ぎて垂直になってる…。

俺は機嫌を取るように、


『…望?今帰ったよ…。

下にいっぱい北海道のお土産あるから…後で食べな?』


『…あぁ。』


ガラス玉の様な瞳で無感動にただ答える妹。

なんか言った方が良いのかな。


『にいちゃん…『あたしに兄ちゃんは居ねぇ!』』


遮って叫ぶグレいも。

※グレた妹の意。


『…あたしのにいちゃんは北海道で死んだ…生きてたらあたしが頃す。』


…めっちゃキレてるじゃん!

なんで人は自分が悪く無くてもキレてる人に気後れするんだろうか?


『のぞみー♪ほら、個人的!皆んなお土産と別にのぞみ用だぞぉ♪』


みんなお土産と別に個人お土産!

これはポイント!なんのかんの可愛い食いしん坊だからついつい買っちゃってた別チョイス!



『これ美味しいんだぞ?ロスの生チョコ!

飛ぶぞ?』


『…ん。』


望は受け取った。

ちっと顔がニマってした。

よしよし、もうひと押しだな。


『これは六花てい!の◯セイバターサンドだよ。

これも美味しいんだ!望のリストにもあったよな?』


『…んっ。』


受け取った!

またニマァってした。

そろそろ…。


『…これで機嫌直して貰えたかな?』


望はキッと俺を睨みつけて、


『…許さない。』


…あ、

これは最悪に拗らせてるヤツ!

賄賂受け取るのに機嫌直さない面倒くさいヤツ…!

※こんなに要らないよぉ!とは絶対言わない。機嫌取りの品は貰うけど機嫌を直さない貢物どろぼうモード(笑)


『にいちゃんの愛が感じられなくなったから…ひーちゃんはモヒカンになってあたしはグレた。』


そう言いながら額に器用に『死』ってペンで書いた。

水性なのを確認してホッとした。


『…まじでゆるさない。

毎日の飯テロ…忘れたとは言わさんぞ。

恨みはらさでおくべきか!貴様の尻を八つ裂きじゃー!』


あぁ…俺の妹が…デスメタルバンドみたいな発言を…!

クラ◯ザーさんみたいになっちゃった…。

清楚可憐な香椎さんみたいな女の子に育って欲しい…!

※デトロイトメタルシティって漫画がありまして…。


『…香椎先輩にはあたしと兄ちゃんと毎日一緒に抱き合って寝てるって言うし、小幡先輩には修学旅行で兄ちゃんは青井くんとあっちゃんと一線を超えたって言うし、なるちゃんには兄ちゃん貧乳マニアだって言うし、永遠ちゃんには兄ちゃんは本当はあっちゃんが好きって言うもん。』


…どれも厄介な事…地味に小幡さんのが1番怖い。

※この中なら小幡さんだけ喜びそうw


『のぞみちゃん?おみやげたくさんあるよー?』


…俺は媚びた。

もうなりふり構っていられない。


『だからさ、その格好…どうにかしようねぇ?』


とととって望がやって来る…

許された?


『はいっチーズぅ♪』


かしゃかしゃかしゃ!

連写で自撮り?


望は悪魔の様な笑顔で、


『下着姿の妹と兄のツーショット撮った、

これ香椎先輩に送る…!』


『…勘弁してください…。』


もうダメって時に、


母『ほら!承!海産物パック開けるよー!

望、ひーちゃんすごいよ!おいでー!』


望の顔が輝いた!

ここだ!


『兄ちゃん奮発した…。

にいちゃんだけ美味いもの食べるに気が引けて…望の好きなカニとイクラめっちゃ買って送った。』


望は野生動物みたいに警戒しながら、


『いくら…一杯?いっぱい?』


『いっぱい!好きなだけ食べて良いよ!』


『見てから判断する…。』


あの時の俺グッジョブ!

今機嫌取りにじゃ無くて、あの時に望や家族に食べさせてあげたかったから購入したんだよ?って強調。



望『…うわぁ♡宝石箱やぁ♪』


有名なフレーズを漏らす猛獣。


『いいの?いいのぉ?』


ダメとか言ったら食い殺される!

今日に夕飯は海鮮丼!

カニは明日ってことになった。


母『承?良いの?』


『良いの良いの!望とひーちゃんの言う通りにしてやって?』


『サーモンは薄めで良いから!数いっぱい!マグロはぶつ切り!

てイクラは回しがけしてぇ♡

溢れイクラ♡』

『ひーも!ひーもイクラ食べたいよぉ!』


盛り盛り海鮮丼を目の前のぞひーは目がキラキラ!


『うま!うみゃぁ♪』

『うまひー!』


ふたりは大興奮で美味い美味いって連呼してた。

…良かった。

望はズラを外していつもの黒髪に戻った…良かった…これが聞いてたウロヤ毛沼…!

ひーちゃんもいつもの可愛い髪型。

ソフトモヒカンひーちゃんもレアだった。


☆ ☆ ☆

『おなかいっぱいだぉぅ…♪』


また丈の短いルームウェアでベッドに仰向け望。

真っ白いお腹を出してぼんやり幸せそうに吐息をつく。


『望のチャームポイントってさ?』


望はにまぁって笑うと、


『キラキラの瞳?凶器って言われるふともも?

それとも可能性の詰まったおっぱい?』



俺は笑いながらお腹を撫でる。


『ぽっこりおなか!

白くてすべすべでもっちり健康的な!

お腹のラインが可愛い!』


撫で撫で。

望は恥ずかしそうに、


『まだ許してない。

許して欲しかったら…甘やかせ!』


※86話甘やかし参照。

https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233



☆ ☆ ☆

『望もひーちゃんも可愛い、可愛い。』


『ふふー!会えなくて寂しかったでしょー!』

『ぼくもさみしかったよ!』


俺は妹弟をうつ伏せに寝かしながら背中を掻いてあげる。

撫で撫でさすさす。


『寂しかったよ。楽しいけどのぞひーに会いたかった。』


『えへへ♪』

『えへへ!ぼくとねえちゃんさみしくてにいちゃベッドでねちゃったよ!』


愛い…愛しい!

きゃわわ!


『兄ちゃんは望と光が宝物。

何があっても命かけて守るから!』


『どうも!兄ちゃんの宝物こと立花望です♪』

『たからもののひーちゃんでーす!』



楽しかったし美味しかったけど…やっぱ家が1番だわ!


『…にゃー…。にいちゃん…さんぞくみなごろしだぁ…。』

『ぴゅー。…すぴゅー。』


『俺の三族皆殺しだとお前も死ぬぞ?』

※昔の大逆罪などで三親等まで連座で死刑。

望は山賊皆殺しだと思っています。



『…明日は香椎家ホームパーティか…。』


そもそも他人の家のホームパーティって…家族団欒のお邪魔じゃない?

そう思うと堅苦しいし気乗りしない…ちょっと気が重くなってきた。

めっちゃ緊張するよ…!

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