第546話 女同士side紅緒永遠

『…あ!なるみん!承くん見なかった?』


修学旅行最後の夜、最後の観光スポットたる函館山…。

私はここを決戦の地と決めていた。

美しい夜景…ロマンチックなひと時…触れる手…見つめ合う瞳に映る夜景がだんだん近づいて来て……きゃっ♡


そう思いながら必死に探すよ!承くんを!

でも人は多く、東光生ばっかり!他校の生徒も居て真っ暗な状態では流石に見つからなくって…!

やばい!時間無くなっちゃうよぉ!


って、ところでなるみんを見つけて。


『…承?あーしも探してるんだけど…。』


もう10分ほどでバスに戻らなきゃいけない。

着いた時、夜景に見惚れてしばらく立ち尽くしたのが敗因!

もう時間無いか…諦めて眼下に広がる綺麗な夜景をなるみんと眺める。

綺麗だね…。


修学旅行もこれでおしまい。

明日はほぼ帰るだけの行程になる。

朝、ちょっとの自由時間で市場覗いたらきっとすぐ移動→フェリー→電車数時間って行程。


…夜景を見つめるなるみんは大人っぽく妖艶な女の子に見える。

負けてはいないけど種類の違う綺麗。

それだけじゃ無い。

なるみんの真価はメンタル。

陽気で面倒見が良くて気遣い上手で友達思い。

そのなるみんが…この修学旅行では…

聞かずにはいれなかった。


『…ね、なるみん?』


『…ん?どうしたんとわわん?』


言いにくい…聞きたかったけど聞けなかったこと。

意を決して口にする。


『…今回のなるみん…

承くんに…積極的…。

なるみんってさ…承くんのこと…?』


気付いたのは最近だった。

※遅い。


なるみんの承くんを見る目。

私が承くんを目で追っちゃう時…なるみんもそうしてる。

優しくて嬉しそうで見守るような愛情の籠った眼差し…。

きっと承くん好きだから気付いたんだ…。

※他人の感情に疎くて気付かなかった。


なるみんは一瞬息を呑んで、申し訳無さそうに、


『…うん。あたし承が好き…。

隠す…ううん、恥ずかしがって言えなかったのはあたし。

真っ直ぐな永遠の承への想いに…言い出せなくって…ごめん…。』


私はなるみんに話を促す。

中学時代から承くんと一緒の班が多くってって話は聞いてた。

こないだ撮った映画の元になったイジメ解決事件の余波でなるみんも部活の先輩からのイジメが無くなってって話は知ってる。


なるみんが語り出すのは奥底の話し。

イジメが無くなって、承に興味持って…クラス一緒になって、

班決めでめっちゃ口説かれて?成実って名前が伊達成実と同じ字!とか盛り上がって…それからずっとなるみんは承くんのそばに居た。

体育祭も文化祭も、常になるみんは承くんのそばに居た。

クラスを敵に回そうと、香椎玲奈の為傷付こうと承くんのそばになるみんは居た…。



『麗䕃(私立女子校)落ちたのは誤算だったけど…承と居られるなら…

全然…むしろ言い訳が出来たって思った…。

…でも、もう初めて会った時には承は香椎玲奈が大好きで…一途に夢中だったから…あたしはこの想いに蓋をした。

…知ったら承が苦しむかもって…。

…でも、このまま『この気持ち』を知られないで終わるのは嫌!って思った。

思っちゃった…あーしの!この中学、高校とあーしの中に育った想い…。

…ダメでも、無理でも打ち明けなきゃあーし爆発しちゃう!』


そう言い切った伊勢成実はびっくりするほど綺麗だった。

元々派手な美人だけど…周囲を黙らせるような迫力!

一世一代の乙女の勇気とでも言うのかな?

有無を言わさぬ迫力。


なるみんは私に向き直って頭を下げた。


『永遠の気持ちを応援して来た事に嘘は無い。

親友として…裏切られた気持ちかもしれない…

ごめん、でもこれがあたしの気持ち…!

…香椎玲奈との障害が無くなった承が玲奈と結ばれるのはきっと時間の問題…!

付き合い出してから『ずっと好きでした』なんて言いたく無い。

可能性が1%でもある今!今勝負したいんだ。』


私も頷く、そして思った事を伝える。



『ごめんね、成実。

きっと私の横で辛かった事もあったよね?

応援してって親友に言われて…苦しかったよね。

…私…自分自分で…わかって無かった…。

こうゆうところなんだよね…私に足りないの…。』


私はなるみんに抱きついて泣いてしまった。

なるみんも抱きしめてくれて泣いた。


私泣きながら、


『私は後から好きになった…でもそんなの関係ねぇ!

そうでしょ?恋に順番なんか関係ねぇ!!

それは玲奈だって同じでしょ!』


『…そうだね…。』


私は伊勢成実って女の子とだけは敵対したくなかった。

心情的にも女の子としても。

…いや正直なるみんに勝てる気がしない…!

さっき言ったようなメンタル…!

なるみんは健康的なナイスバディ…!長い付き合い、信頼、家も近くで…毎日一緒に登校、バイト帰りもよく一緒…!

勝てる気しないよ!

そのなるみんが…、




『…香椎玲奈にはまるで歯が立たないの…。

ライバルなんて言ってられない…むしろ協力しないと…それでも香椎玲奈には…。』


…なるみん話すエピソードえぐい事えぐい事…。

やきもち以外で敵を作らず、同じ手には引っかからず、学べば学んだだけ、鍛えれば鍛えただけ強くなる…『完璧女子』のエピソード。


『…私思ってた。

だからこないだ…玲奈に貴女怖いって…。』


なるみんは頷いた。

ライバルだけど…協力…助かった、なるみんと敵対したくは無い。

…本当に勝てる気がしない。

学校生活のなんたるかを教えてくれたのは承くん

でも女の子中での立ち振る舞い、感情を教えてくれたのはなるみんだった。

…ある意味では姉のようにさえ感じるほど。

そして、玲奈から少し学んだ女子力!これで勝負するしかない!


一個だけ気になってた。


『なるみんも修学旅行で!って考えていたの?』


なるみんは恥ずかしそうに、


『…なるが…。』


『え?聞こえない?』


なるみんは暗闇の中でもわかるほど真っ赤になって、


『武将様2のなるを見たから!

あーしも頑張らないとって思ったの!

ごめんね!単純で!』


『…私のオススメがなるみんに火を付けたの?!』


バスに戻りながらなるの執拗かつ徹底的な男の人の…その…搾り取る術について語りあった…おっぱい…可能性は無限大…!


『…恥辱の共闘で承くんを陥落させよう!

えいえいおー!』


『…えいえいおー?

恥辱は嫌だなぁ…。』


こうして修学旅行最終夜が更けていく。


☆ ☆ ☆

紅緒さんは伊勢さんに敵わないと思ってる。

伊勢さんは香椎さんに敵わないと思ってる。

香椎さんは負ける気無いけど、常に一緒の学校生活をおくってる2人に嫉妬心があります。

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