第544話 いざ函館

翌日、札幌市を出発して函館に向かう。

バス移動である。

…結構かかるんだよねー時間。

朝食のイカの塩辛めっちゃ美味かった…ご飯3杯いけた…そのせいもあって眠い…。

バス内で伊勢さんは改めてしおりを読み直して、


伊勢『えっ?札幌から函館って2時間くらいじゃないの?』


俺は答える!

これどうでしょうで学んだやつ!


『どうでしょうでは5時間以上かかってたけど…。

深夜バスで日本縦断するあの企画で、

1日目札幌→函館、2日目函館→フェリーで青森→東京新宿。

3日目、キングオブ深夜バス博多号で新宿→博多って地獄の3日…!

やってみてぇ!』


…このあと、札幌函館間でバスもう嫌ってなった…。

そりゃ尻が取れる夢見るわ…。

どうでしょう班しゅごい。


☆ ☆ ☆

途中のパーキングでお土産買い足したり、道の駅でスープカレー食べたり周辺の見学したりで14時頃、函館市街へ到着。

なんと言っても見たかったもの…それは…


『五稜郭!

幕末の最後を締めくくる函館戦争の舞台!

星型の西洋式城砦!』


くう!武将好きだけど歴史好き男子に人気な幕末も当然大好き!

俺は熱く語っちゃう!

新撰組の話!

武州のバラガキ(乱暴者とか無鉄砲の意)だった土方歳三ことトシが天然理心流を学び、近藤勇、沖田総司らと出会い、浪士組に参加、上洛して大揉めの後新撰組を結成する。

それはトシの青春で。

血を血で洗う幕末の京都を戦い抜くが時流は味方せず、新撰組の属する幕府方は惨敗。

一緒に駆け抜けた近藤勇は投降して斬首、沖田総司は病死。

トシはここ蝦夷地まで転戦して…何を思ったんだろう…。


トシの守る要所は負けない。それでも日々新政府軍は迫りつつあって。

函館政府が降伏を決めた直後、死ぬつもりで出撃、何人もの漢がそれに付き合い、

最後の戦闘が始まる。

気付けば敵中真っ只中まで来てしまったトシを見て、官軍の兵は尋ねる、どこの所属か?と。

トシは当時珍しい洋装に総髪(ちょんまげやめた)。

官軍の高級士官だろうと尋ねた兵士に馬上から、


歳三『新撰組副長土方歳三。』


そう名乗って切斬り込んで…銃弾に倒れたんだよ…。

函館政府では陸軍奉行並って言う超上級地位を拝命したのに新撰組副長って名乗ったトシ。

トシににはきっと近藤勇や沖田総司との日々が…間際に見えたんだろうなぁ。


青井は涙ぐみながら、女子はへー。って顔。

青井『…漢だ…。』


伊勢『…猛将だね…。』


とわんこが意外にもうんうん頷いて、俺と肩組んでわかる!わかる!って言う。

こいつ少年マンガ読んでるから何処かで読んだのかな?

俺は司馬先生の燃えよ剣!小説読み込んだわぁ。

いやいくらでも語れる!

とわんこはうんうん頷いて名シーンよね、胸に来るもんって頷く。

わかってくれる?無性に嬉しくてたまらない!


とわんこは感動した、あの後も何回か出てくるよね?

ずっと心に残ってるよね。

…妙に合致するようなしないような?


永遠『わかる、最後に振り返って笑って、

『トシ、サッカー好きか?』

って言って…ゴールトゥゴール決めて…死んじゃうんだよね?

悲劇のシーンだよぉ…。』

※11人抜き。


『混じってんじゃん!

それシュート!!のシーン!サッカー漫画!!』


五稜郭は素晴らしかった。

洋式なのに和風で厳かで。

楽しくて楽しくて時を忘れた!

あっちゃんもこうゆうの好きだからさ!大いに盛り上がったんだ!



☆ ☆ ☆

それから自由時間に赤煉瓦倉庫を見て周り、ラッキーピエロって有名なお店行ってご当地ハンバーガー食べてホテルに戻る。

…まじで食ってばっかり。


明日朝も少し自由時間があるけど…もう明日帰るのか…。

明日は朝ちょっと自由時間があって、朝食後フェリーで青森に渡り延々電車で夕方までかけて我が県に戻る訳です。


観光としては最後、函館山の夜景を見にロープウェイ!

めっちゃ良い景色!乗った時間も良くって夕方から夜になっていく時間帯。

オレンジから紫、青っぽい黒にグラデーションしていく光景を俺たちは惚けるように見ていた。


俺たちの修学旅行、最後の観光地、函館山の夜景。





☆ ☆ ☆

修学旅行最後の夜に、決意した乙女がふたり。

決戦の地は函館山。

夜景で有名な映えスポット。

東光高校修学旅行最後の観光地。

ロープウェイから降り、帰りはバスで指定時間にここにバス来るからね!担任の号令で一斉に動き出す修学旅行生。



伊勢成実は承を探す、


成実『…あたしが…承を好きだって…知ってほしい…。』


親友の永遠にも話していない恋心。

非日常感が、たまたま読んだ小説が成実を衝動的にさせる。




紅緒永遠は承を探す、


永遠『…冗談で笑いあえる関係もじゃれあえる今の関係も好き…。

でも…私には時間が無い…このままじゃいられない…。』


病気で不自由に育った永遠に生まれた夢、その夢を形にした少年に届いて欲しい気持ちがあった。

いつもが楽しすぎて言えなくなってた想いを。



自分の想いに蓋をしてきた女の子。


自分の気持ちをストレートに表してきた女の子。


函館山に想いが交錯する。

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