第543話 自由行動は自由な行動

紅緒『…忍法…恥辱隠れの術♡』


俺は後ろにしがみつくとわんこを身体を振って遠心力で正面から抱っこする形に抱き直す。

とわんこは何を勘違いしているのか…


紅緒『駅弁スタイル…♡』


…JKがそういう事言っちゃダメ!

確かに俺の首に手を回して正面抱っこ。

脚は俺の腰に回してるけど…。


『…望相手ならこのまま変形パワーボムなんだよ…。』


紅緒『…ふぇ?ぱわーぼむ?』


『望もよく後ろから抱きついておんぶの姿勢からチョーク仕掛けて来るんだよ。チョークじゃわかんないか裸締め。

ひーちゃん相手ならこのまま抱っこして頬擦りなんだけど…。』


望は兄をおもちゃと思ってるとこあるからね。

とわんこの感性がわかんないんだけど、


紅緒『裸で締めるの…♡』


流石に前回懲りたのかセクシーランジェリーでは無い、ピンクのパジャマ姿だったけど…男子部屋にふたりきりはまずい。

しかもこの形…!


がちゃ!

まずい!

青井が笑いながらクラスメイト男子の先頭で…


青井『それでさー!

…そっちかい。

部屋使用中だったわ!ちょっと時間潰そうぜ?』


『違う!青井!』


俺は慌てて青井たちを呼び戻した…。


☆ ☆ ☆

部屋の隅で正座するとわんこを問い詰める俺と遠くから生ぬるい目で見守るクラスメイト男子たち。



『…旅の恥はかき捨てって言葉があるでしょ承くん?』


『かきすぎだ。』


男子部屋に遊びに来るにしてもやり方あるでしょ?って。

俺は学生として修学旅行の楽しみ方を説明する。

だんだんとわんこが不機嫌になって、


『だいたい承くんがおかしいんだよ!

こんなに可愛い女の子がいいよ♡って言ってんだからヤッちゃって責任取れば良いじゃ無い!

据え膳喰わねば男の恥って言うでしょー!』


『ヤッちゃうとか言わないで!

みんなの目線が怖いよ!

そもそも日本男児の生き様は色無し恋無し情けあり!』


紅緒さんは冷たい目で、


『なによー!玲奈とは手が触れただけで頬赤らめて意識するんでしょー!』


『…。』


とわんこは最近何かにつけて香椎さんを引きあいに出して来る。

…何度も言ってる、俺は玲奈さんが好き。

でもとわんこは俺に猛攻仕掛けてくる。


困りきったところに連絡入れた保護者が…。


伊勢『どうもー♪うちのとわわん保護してるー?』


紅緒『なるみん!』


『『『おおおぉ…!』』』


伊勢さんは露出多めな部屋着で登場…!

男子たちがどよめく…!

上が大きめ長袖でゆったりダボっとしてるのに下がぴっちりショーパンだから…目線が脚に行っちゃう!上がダボっとしてるから脚丸出しじゃ無いのにチラッて見える足のムチっと感が男子を狂わせる…!

紅緒さんは伊勢さんに抱きついた!


紅緒『なるみん!私の渾身の恥辱忍法破られちゃった!』


伊勢さんは呆れ顔でこっちを見て、


伊勢『この娘なにしたん?』


俺は聞いて欲しくて、


『部屋戻ったら布団でダミー作ってそっちに気を取られたら…背中から抱きつかれた…!』


伊勢さんはへー。って呟くと、


『こんな感じ?えい♪』


もにょぉん!!


伊勢さんはイタズラっぽく笑いながら後ろへ回ると俺に一瞬抱きついた!

真っ赤になって、


『なーんてね…♡』


真っ赤になったまま、とわんこの手を引いて戻って行った。

…下げるわけじゃ無い、

紅緒さんのふにゃんもすごい感触…

だけど…伊勢さんのはもにょぉん!!しゅごい!


本当どうしたの?ふたりとも。

俺が動揺していると、


青井『気を付けないと立花が停学くらうぞ?

いやまじで。』


青井の一言が沁みた。

クラスメイトから追求が厳しい!

違うの!俺はどっちとも付き合ってないし付き合わない!

俺はまた勢いで、


『そんなの関係ねぇ!!』


ドッとうける!

進歩無いDKども!

昨日も今日もコレで良いんだろ!!

俺はパンイチで今日も腕を振る!


『そんなの関係ねぇ!!』


あぁ…汚れていく…。

俺の理想はウィットに富んだ一言で突っ込んで笑いを取る事だったのに…!

恥辱のショータイムが今日も始まった…!


☆ ☆ ☆

2日目は流石にそれ以上は何も無くって。

翌日班行動!

札幌市街を中心に自由行動!

俺、青井、伊勢、紅緒、の4人編成!

後であっちゃん、仙道が合流予定なんだよ。

最初の目的地に着いて早々に、


紅緒『…時計台くん…君は随分写真映えするんだね…。』


とわんこは失礼な事を言う。

そして大都会な街並みを歩く、


青井『…地下あるんか?

千佳に会いたい…。』


札幌!地下街もすごい!

うちも寒冷地なのにこれほどの地下街は無い訳で…ほえーって見て回る田舎の高校生たち。

11時、青井が厳かに1ラウンド目のゴングを鳴らした。


☆ ☆ ☆

先月、班行動どこへ行くか会議。


時計台!どうでしょう聖地巡礼!スイーツ!

基本みんなすぐに可決された。

当然、


青井『お昼ラーメン!札幌の味噌ラーメン食べたい!』


反対するものなんて居る訳ない。

青井ラーメン大好き!立花ラーメン大好き!伊勢ラーメン大好き!紅緒ラーメン大好き!

しかし、青井から悪魔の提案があったのだ…。


青井『例えばよ?

…ラーメン屋さんは大体11時オープン…2時過ぎに大体休憩入っちゃう…。

11時に一杯…2時前に…もう一杯…!もちろん大盛りは無しで。』


伊勢『…ひっ!』


顔を見合わせる4人。

…反対無しで本件は可決されました!


☆ ☆ ☆

青井『はえある一杯目は…。』


愛想の良いおばさんい引っ張られる様に入る綺麗なラーメン屋さん!

なに?!カニまるごと入ってるの?!


おばさん『映えるよ!うちのラーメン!』


『『『『おおぉ…!』』』』


皆んなカニ丸ごと味噌ラーメンを注文!

高いけどコレ!


青井『…あれ?』

伊勢『…ま?』

紅緒『…あんまり美味しくないね…?』

『…とわんこダメ!』


カニは食べるほどのカニでは無い、まぁ出汁用なんだろうね…。

なんかケミカルな味の味噌ラーメン…。

味噌ラーメンってさ…なんか深い味わいで濃厚な旨味?

そうゆう食べ物じゃない?

これはなんか薄くて…科学的な味がする…うっすらカニの風味はするけど…味噌の風味に大負けして…。


青井『映えるしか言わなかったな…おばさん。』

伊勢『カニ…ラーメン屋さんでカニ食べたら…時間かかりすぎてお客回らないよね…。』

紅緒『騙された…!高いのに…!』

『悔しいから望に飯テロしてやろう。』

※当然揉めた。


気を取り直して!地下鉄で移動して、しばらく歩くと!

北海◯テレビ跡地と平岸高台公園!


青井『おおぅ!ここでミスターが…!』

『…このアングル前枠のやつ!』


女子2人は呆れた顔で、


伊勢『どうでしょう好きだよね?宏介くんもだっけ?』

紅緒『太泉さんこれが出世作なんだよね?』


ここで仙道とあっちゃん合流!

班から抜け出してホテル前で班に戻る約束。

仙道はばいばい!またね!ってあっさり班メンバーと別れてた。

…あっちゃんは…


女子『…東条くん…行っちゃうの?』

女子『ウチらも着いて行っちゃダメ?』


『…遠慮してくんない?』


女子が寂しそう…でもあっちゃんを見る目がメスの顔してる。

仙道が自分との違いに身悶えしているけど、現場に着けば、



仙道『ここが!』

厚樹『ミスターが着ぐるみ着てグルグルまわりながら!

…承なに見てんだ。』


『あっちゃんはしゃいでるなぁって思って。』


あっちゃんは赤くなった。

…女の子は赤面してるとこが1番可愛いって思ってたけど…あっちゃんも…?!


仙道が紅緒さんの話しかけてた、多分さっきの憂さ晴らし。


仙道『とわんこ…魅力であっちゃんに負けてる笑)』


とわんこはにっこり仙道に笑いかけながら仙道の足を踏みつけた。



☆ ☆ ☆

札幌市街へ戻り、デパートでお土産ものを買い漁る。

…めっちゃ買い込んだ…やばい量。

特にハートを鷲掴みされたのは…いや次の目的地!


そして伊勢さんが目当てのスイーツパーラーへ来た。


伊勢『ここがぁ、あーしの来たかったお店♪

あ!もちろん初めて来るんだけど…!』


そりゃ北海道だもん、行きつけ無いだろうね。


伊勢さんは指をモジモジさせながら、


伊勢『これ…食べてみたくって…。

えへへ♪』


なんかいつもとテンションが違う伊勢さん…。

パフェでしょ?

皆んな甘いもの好きだから全然…なんなら男同士で入ってパフェ頼みにくいまである。

むしろ好都合。


あそこ!あそこの店!

そこには有名企業の名を冠したお店、冬印パーラーって書いてある。

ショーウィンドウに飾られる色とりどりのサンプル…うん?

一個真ん中にデン!と化け物が鎮座しておる。


伊勢さんはさっきから乙女の顔でモジモジしながら頬を染めている。

とわんこも目が点。


真ん中に鎮座する化け物には値札が付いていて、


ドリームジャンボパフェ 14,500円

そりゃジャンボとし言いようがない…バケツ位の大きさ!

値段!大きさ!ツッコミ所ありすぎて…!




伊勢さんが嬉しそうにサイトの説明文を読み上げる、



伊勢『名物・ドリームジャンボパフェ

まるでファンタジーの世界に居るような、驚きのジャンボパフェです!土台に寒天、フルーツをぎっしり敷き詰め、イチゴなどフルーツ、ケーキ・バームクーヘンが層をなし、周りには自慢のアイスクリーム!お友達・家族で、職場のお仲間と、そして修学旅行の思い出作りにもピッタリ!ぜひ皆様でお楽しみください!』


読み上げた後も皆黙っている。


あっちゃんが一言、



厚樹『…このメンバーで伊勢だけはまともだと思っていたのに…。』


札幌の街並みにその言葉は吸い込まれていった…。



☆ ☆ ☆

…1時間後。


『入るもんだな…!』

青井『もう甘いのは良いかな…。』

仙道『…苦しい…!』

厚樹『…頭おかしい。』


女性陣は違ってて。


伊勢『大きいけど大味じゃなかった!

人数もうちょい減らしても良かったね!』

紅緒『うん、4人でもイケたね?』


女子は甘いもの別腹って本当なんだね…!

青井が雰囲気を変える様に陽気に、


青井『じゃ、ラーメン行こうぜ?』


青井の言葉にぎょっとする仙道とあっちゃん。


仙道『え?昼食って無いの?』


青井『いやぁ昼は時間開けてラーメン2杯食う予定でさぁ!』

『…甘いものは無理だが…ラーメンなら…いける!』


あっちゃんは呆れ顔、

あっちゃんほどの男前になると呆れ顔すら絵になる!


厚樹『…どうかしてるぜ…!』


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