第538話 北海道上陸

小樽港に着いたのは予定通り早朝4:00

真っ暗!でも!高校生たちはフィーバー状態!


紅緒『恥辱の北海道上陸!』


『道民の皆様にあやまれ。』



とわんこかまってられない!点呼!点呼!


『昨晩はすごかったらしいね?』

『はしゃぎすぎだよ!』

『北海道上陸、ここからが修学旅行だよ?』


色んな人から昨日の恥辱を蒸し返される。


紅緒『…ずいぶんと評判だよね?』


『お前のせいだろうが!』


紅緒『うふふー!彼ジャージ♪』


紅緒さんはくるりんと回って見せる。

ジャージ着用だけど下は自分の、上は俺のジャージを羽織ってる。

袖が余って手が出ない状態で両手を頬に当てて、


紅緒『萌え袖♪』


『返せよ?』


紅緒『その代わりに私のジャージ貸してあげるから!

…良いよ…匂っても?』


…昨晩、布団から紅緒さんの…女の子の匂いがしてなかなか寝付けなかった…まあ修学旅行で興奮していただけかも知れないけど。


『…異性の匂いくんくんなんて出来る訳無いだろ、デリカシーの無い。』

※玲奈『くしゅんっ!』


下船して点呼して、バスを待つ間に薄っすら日が上り始める感じ。

じわじわ東が明るくなってくる気配。

バスが来て乗り込む。

小樽の港町、運河沿いのレトロな倉庫街。

ここが北海道最初の見学ポイント。


小樽運河は「これぞ小樽!」といえる、小樽観光の定番スポット。

かつて大型船からの荷物の運搬を効率化するために作られた小樽運河は、全長1㎞以上。

現在ではその役目を終え、両サイドにある石造りの倉庫と、ガス灯が並ぶ遊歩道と合わせて小樽を代表する景観を作り出している。

運河にはいくつかの橋がかけられており、その中でも「浅草橋」が有名。


レトロモダンな石造りの倉庫街、街灯運河は古いハイカラを感じる。

そしてこの頃明るくなってきて…そらが黒から紺、青とオレンジが入り混じり少しの時間だけ紫になる…。


きゅっ。


『手握るな。』


紅緒さんはにへらって笑って、


紅緒『綺麗だね…倉庫街と運河が紫に見えて…。』


仙道『…この紫色一生忘れない…。』


『…だなぁ。』


仙道がこないだの映画撮影での俺の恥ずかしいセリフをサラッと使用する。

気付けばいつもの面子が勢揃い。

物憂げなあっちゃん格好いい。



☆ ☆ ☆

すぐそこにコンビニあって、公共トイレあって、映えスポットの橋があってここの自由時間に諸々済ます生徒が群をなして集まる。


運河のあっちまで行ってこようぜ!

なんて動き回る生徒とまだ寝起きって表情の生徒も多い。

まだ5:30だもんね。

でも起きてしばらく経って身体もこなれて来た頃。

先まで行ってた青井がダッシュで戻って来る。

どうしたどうした?


青井『立花!向こうの路地に漁師さん向けの早朝食堂やってる!』


『…まじか。』


朝食はこの後、有名乳業の工場見学で乳製品の出来る工程を見た後にそこの社員食堂で出来立て乳製品をふんだんに使った朝食と聞いている。

※牛乳アレルギーの人は普通に社員食堂ランチセットみたいなものが出る。


ごく。

早朝から動いてるからもうお腹減ってる。

俺、起きてすぐ朝飯!ってタイプ。

確か朝はパン食って聞いた…まだ2時間以上後だしなぁ…。



伊勢『青井どこ?』


意外にも1番食いついたのは伊勢さんだった。


青井『小さい食堂だからたくさんは無理だよ!って言われてて!

海鮮丼と焼き魚、煮魚、刺身定食って店!

観光客用に本当はもう少し遅い時間に海鮮丼とか出してるらしいんだけど少しなら今出せるよ?って!』


伊勢『…あーし、昨日船酔いで何にも食べて無いからおなかへっちゃった…!』

紅緒『私は全然1日五食位は平気。』

仙道『やっば!漁師さん向け食堂って響きがもう!』

厚樹『…美味そう。』

小石『いいとこに居合わせた!』


気づけば小石まで居る。

お店に着くと、こじんまりした12、3人しか入れなさそうなお店!

4人テーブル一つとカウンターに別れて注文!

時間が少し不安だから手早く!


『海鮮丼を…!』

青井『海鮮丼大盛り!』

厚樹『サーモンいくら丼。』

仙道『ミニマグロ丼!』


テーブル席では…。

伊勢『海鮮丼いくらましまし!』

紅緒『海鮮丼大盛り!』

小石『…鯛茶漬け!』


小石は北海道を甘く見て防寒を疎かにした為暖かいお茶漬けを注文した…。

…俺もアウター用意したけど忘れてきた…小石わかるわぁ。

でも俺こないだ香椎さんから返して貰ったカーディガンあるから!

※また没収されそう。


む、でもアレも美味そう…!なんて思ってるとほとんど待たされる事もなく目の前ですぐ盛り付け開始!

あれ?…多くない?


1000円だけど…こんなに?

おばちゃんが朝は1日の始まりだからうちはガッツリ系だよ!

って宣言して説明してくれる。少し酢の効いたほんのりだし。

そこに刻んだ青シソと刻みのり。

マグロ!イカ!甘エビ!ホタテ!サーモン!

そして…その上から…イクラをかけてくれる…!


伊勢『も、盛り付け動画撮っても良いですか?お願いしますっ!』


おばちゃんが良いよって言ってくれたから俺たちはおばちゃんの手元に釘付け状態!その手元をうっとり見ながら、


紅緒『…私のランジェリーより…色っぽい…♡』


『…確かに。』


ぎゅむぅ!って二の腕つねられた。


伊勢『…あ…あ…あぁん♡』


イクラを溢れ落ちそうなほど無造作にスプーンで回しがけるように盛り付ける伊勢さんはエロい声出してた。


『はいどうぞ!』


ここまで皆んな動画撮影してた。

あのあっちゃんでさえ。


『『『『いただきまーす!!』』』』


時間はまだ少しある…でもゆっくり食う時間も無い。

皆んなもわかってるから急いで味わって…しゅごい。


『マグロ…厚ぃ…!』

厚樹『サーモン脂乗ってる…イクラだらけ…!』

仙道『マグロ旨い…!ミニじゃ無くても良かった…!』

伊勢『…。(無言)』

紅緒『…このセクシーさ…恥辱に使えるかも…もう2杯イケる。』

小石『鯛茶漬けもすっごい暖かくて旨みすご!』


青井『…沁みる…!笑顔になっちゃう!』


青井の言う通り!

皆笑顔で笑い合いながら美味しいね!これ見て!厚み!旨み!感想を言い合いながら夢中になって食べ進める。


おばちゃん『皆んなが良い食べっぷりで見惚れちゃった!

はい、味噌汁もどうぞ?』


味噌汁まで付いてくるの?!


味噌汁は貝…小さくて売り物にならないホタテ貝がゴロゴロ入ってるお味噌汁で!

そこらで獲れるカメノテとかで濃厚な出汁を取ってこのベビーホタテを煮てネギガンガン入れてって最高な味噌汁。


『うまぁ!』


この丼に味噌汁付いて1000円?まじで?

面倒なのかウニ丼とか価格がすごいもの以外一律1000円。

しゅごい…。


帰り際、おばちゃんに聞いてみる、なにかおすすめのお土産ありますか?と。


おばちゃん『パンロールかねぇ?小樽だと。

まだやって無い時間だけどね。』


お店の名前とどんなものか聞いてふーんって思った。

つまりかまぼこパン?

機会があれば食べてみよう。

で、お会計!



『『『『『ご馳走様でした!!!』』』』』


おばちゃん『はいよ!北海道楽しんでいってね!』



『『『『はい!!!』』』』


10月とは言え北海道の早朝はかなり寒かった。

うちの県だってまあまあの寒冷地だけどその比では無い。

…でも朝から美味しい美味しいものを食べた俺たちは心も身体も暖かくって寒いけど全然平気!

北海道楽しい!って来たばかりなのに大盛り上がりだったんだよ!


☆ ☆ ☆

その頃の玲奈  side香椎玲奈


『…永遠…?ロイン?』


紅緒永遠ロイン


玲奈ー!やっほー!

カレジャージ!


そこには承くんジャージを着てる永遠とあっち向いてる承くんとのツーショット写真!


『…な?!』


ピロン!


永遠が…!永遠が承くんジャージをくんくんテイスティングしてる姿!


『永遠ぁ!!』


修学旅行くんくん!カレジャーくんくん!

羨ましすぎるぅ!!永遠めぇ!!



女子『香椎さん?』


私はにっこり微笑んで余裕のある空気を醸し出す。


『どうしたの?』


女子『香椎さんはすごいね?修学旅行でも落ち着いて皆んなに気配り!』

女子『ほんとほんと!大人だよね!』


『そんなこと無いよ?皆んなとオーストラリアに来れてテンション上がっちゃうよ♪』


女子たちがキャッキャと騒ぎながら行こう!って先導する。

…私も修学旅行中…ここオーストラリアにて。



コアラよりアデレードよりエメラルド鉱山より…。




『承くんくん…。』



承くんに会いたいのと…海外渡航でジップロック持ち込めなくてくんくん不可で禁断症状が…!

そこに永遠の承くん着たきりジャージ着用マウント!

…くんくんでくんくん出来なくて震える…。

ジャージでダメージ、チャージ不可能で大惨事ダイサンジ

※意味不明

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