第529話 正式な婚約発表の場?!

ホテルのロビーで会った香椎パパは目がバキバキのまま、俺に深々と頭を下げた。


香椎パパ『娘たちから立花くんが…松方新二さんに一生懸命に働きかけてくれた件は聞いているよ。

これが終わったらお礼に伺うつもりだったんだ…本当にありがとう…。

それで今日は?』


なんと言っても確定じゃ無いし、今日呼び出された趣旨もわかんない。

でもこんな場所でやる以上…おおごとなんでしょ。

俺は松ちゃんに呼び出されて来た事を説明する。もちろん俺の功績だなんて思って無い!玲奈さんが下地作ってそれを俺が引き継いで…!

…一応松ちゃんの言った事を説明するけど…でも一回約束反故にしたことあるんですよ…。


香椎パパは唸りながら俺を疑う訳じゃ無いけどって前置きして、


香椎パパ『…うん、松方の家はわがままで気まぐれ。

油断はならない相手なんだ。婚約破棄受け入れて貰えるならうちとしては婚約破棄の慰謝料位ならいくらでも払うつもり。

…それも事前交渉であり得ない額ふっかけられてね…でもそんな事は言っていられない。』


…そうだよね。

婚約破棄申し出た香椎家が慰謝料を払わなきゃいけない。

…でも香椎家はいくらでも払う覚悟はあると言う。

婚約破棄に了承しないから困っていたわけで…。

それでも今日破棄!慰謝料払う!で解決するならってパパさんホッとした表情。


ママさんも来て頭下げられて慌ててこっちも下げる!

あ、向こうから玲奈さんと優奈さん…。

カクテルドレスって言うのかな?少し鎖骨の出た薄いピンクのドレスで上品なデザイン。体幹しっかりしてるから歩く姿綺麗なんだよね。

…お姫様みたいだな…。見惚れていたら優奈さんに頬を突かれた。


優奈『私も同じデザインのドレスなのに?承くんは玲奈しか見てないね♪』


『…いや…あの…見惚れてしまって…優奈さんもお綺麗です…。』


玲奈『…♪』


玲奈さんは恥ずかしそうに俯いた。

そんな話をしていると会場の用意が出来たのか呼ばれた香椎家。

俺も着いて行く。

ホテルのスタッフの方が大きな封筒をパパさんに手渡した。

…俺にも小さい封筒?


新二『くれぐれも大人しく。終わったら最上階のバーに集合。』


って紙が入ってた。何コレ?

バーって俺入れるの?


香椎パパと玲奈さんは険しい顔で封筒の中身を見ていた。


☆ ☆ ☆

会場はテレビで見た外国の偉い人との会談みたいな大きなテーブルが並べられて長方形のテーブルで大きな長方形を形取っているような配置、真ん中は空いている。

部屋自体広いから圧迫感は無い。


バラバラ数人のおじさんと少しおばさんが入ってくる。

…俺の場違い感よ…。


松ちゃんが入って来た。

最初だけ俺に目で笑いかけるともう視線は合わなかった。

…なんで目合わせてくれないん?松ちゃん…

いや俺の兄貴はそんな奴じゃない!…じゃ無いよね…?

最近の俺は反動で気力が無い…怖い、もし今日正式な婚約発表です!

なんて言われて玲奈さんの腰に手を回されちゃったら…脳が…破壊されちゃう…!


主賓席…1番上座に当たるところに松ちゃんが立つ。

…玲奈さんは主賓席松ちゃんの隣。

それから両サイドに下座に向かって…香椎家、松方家の面々が並んでいく。

松方家の面々は叔父叔母なのかな?あまり良い顔していない。


香椎家は上座からパパ、ママ、優奈さん、弁護士さん。

松方家は…あ!新二ママ!ママは小さく手を振ってくれた。新一さんは温和な笑みで会釈してくれた。

ママさん…すっかり…松ちゃん良かったね…。

そんなほんわかムードをかき消す雑音が…



松方『がっはっは!めでたい!めでたいな!

おう香椎!やっと覚悟ついたか?

先輩の言う事は聞けよな?がっはっは!』


1番最後にやって来て松方パパは1番上座の主賓席に当然の様に腰を下ろした。


新二『…パパ、今日はこっち。

俺たちの正式な婚約発表だからね?』


松方パパ『…むう、落ち着かない場所だ。

聖奈さん(玲奈ママ)相変わらず綺麗だねぇ?』


玲奈ママ『…どうも。』


松方パパは松方家の1番上座、松ちゃんのすぐ横に腰を下ろす。

対面は香椎パパ、このふたりはバチバチしてる…


そんな事より松ちゃんのコメント!

婚約発表だからね?!

俺は目の前が真っ暗になった…。



主賓席に松方新二、香椎玲奈が座る。

松ちゃんにも弁護士?みたいな人が付いてて…。


俺は香椎家の末席に腰を下ろす。

松ちゃんが大人しくしろって言うから黙ってるけど…問い詰めたい、めっちゃ問い詰めたい!

望連れて来たら良かった!あの猛獣空気読まないでこういう場面でもあっけらかんと本人に意図や目的聞いちゃうもん。


双方のパパは始まる前からもうバチバチ!

色々言いたいことがある香椎パパが口火を切る。


香椎パパ『…松方先輩…娘だけじゃ飽き足らず…うちの…香椎商事の株まで手を伸ばして…どういう積もりですか?』


松方パパはニヤニヤ笑いながら、


松方パパ『ふっふっふ…なんのことかな…?』


香椎パパ『しらばっくれるな!うちの株を集めているだろう!』


公開買い付けせず水面下で買い付け、一定数の割合を占めれば…経営陣を一新し、いわば合法乗っ取りに近い形で香椎商事の株が流れてるらしいとパパさんの話で察する。

松方パパはニヤニヤ笑いながら知らんなぁとか言ってる。

…悪い顔してるもん!絶対やってますよね…。

ママも引き攣った笑みを浮かべている。

隣の優奈さんに聞いてみる。


優奈さんは汗をかきながら、


優奈『株の不透明な流れでわかったのね…。

香椎商事は私の家族の誇りなんだ、誰にも渡せない。』


悲壮な顔で呟いた。

…玲奈さんだけじゃ無い優奈さんもママもパパさんと同じく家業を誇りに思って守る為に必死なんだ。


それだけに松方パパの不誠実な対応、香椎パパを煽って茶化す言い方に腹が立った。




☆ ☆ ☆

新二『…では時間になりましたので始めたいと思います。

…香椎家ならびに松方家の皆さま。

今日は御足労頂き恐縮です。』


松ちゃんは頭を下げた。

松ちゃんは緊張している、玲奈さんも緊張?白い顔。


新二『本日は私、松方新二とこちらの香椎玲奈嬢の正式な婚約発表の場を設けさせて頂きました。』


香椎家はハッと息を呑んだ。

パパは無表情、ママは立ち上がりそうに、優奈さんは呆然と。

松方パパはドヤ顔で笑って出されたコーヒーを美味そうに飲み始めた。


…松ちゃん…!

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