第528話 ふわふわした9月
…さて月末に行われる体育祭…
俺はなんとも気乗りしない。
気乗り…うん気乗り。
気合いが乗らないのだよ…。
放課後うちのクラスは…
紅緒『応援練習頑張って!』
青井『おうよ!行ってくるぜ!』
伊勢『衣装♪衣装♪可愛い可愛いー♪』
仙道『…人遣い荒いしキツイ…。
立花?お前も大変だなー?』
俺?俺は…そう、クラス委員長の仕事(紅緒立花2人分)、応援団、応援団衣装係、小道具係を兼任している。
紅緒さんに付いて廻って進捗を記録して、紅緒さんの指示を伝達したり合間にクラス委員長の仕事しながら青組の会合に出たり…
伊勢『承お願いー!』
『…了解…。』
伊勢さんの使いっぱししたり、衣装作りの手伝いや応援団だから試着してみたり…。
伊勢『ちょっとごめんね?
…近いね…。』
伊勢さんが俺で型を取ったプロトタイプを着せて腕回りとかの調整に俺の体をまさぐるように…そこダメ!
伊勢さんは真っ赤になりながら、
伊勢『採寸したけど動きが大きいからもっと袖口と肩周り、足周りの可動域を広げれば良かった!腰回りはおっけ!』
『『きゃぁ!』』
傍目には抱きついて見えるらしい…!
もう好きにしていいよ…。
☆ ☆ ☆
18:00。作業はこの時間までと決められている。
紅緒『…承くんが従順!
使い勝手バッチリ♪』
伊勢『…確かに。大丈夫?
9月入ってからずっとこんなじゃん?』
青井『男には充電時間が必要!』
仙道はネズミ男そっくりにほくそ笑んで、
仙道『充電ってより漏電じゃね?
大丈夫か?ショーン?』
いつぞややったアメリカンなドラマ風に俺を煽る仙道…。
『…大丈夫大丈夫。
ミネソタじゃこんなの毎日だぜ…?』
仙道『重症じゃない?』
俺はぼんやりしていた。
でもぼんやりしてる割にバイトもだけど…意外と好評。
ちゃんとやる事はやれている。
☆ ☆ ☆
厚樹『…ゆっくりしてけ…。』
『…なんだろう…思っていたより…響かない…。
やっぱあっちゃんは薄塩こそ至高…。』
厚樹『…ポテチか…!』
バイトまで時間あるから隣駅まで自転車飛ばして松ちゃん家見てきたけど車無いし本当に忙しいのか全く連絡が無い。
…夜逃げ?ありえない。
むしろさせる側だろ。
それでせめて…あっちゃん見て帰らないと損だって思って寄ったわけ。
厚樹『なぁなぁ…香椎さんの婚約問題…解決したんか?』
『俺が知りたいよっ!まったく!!』
あっちゃんはびっくりした表情。
ちょっとヒキ気味に、
厚樹『…情緒不安定かよ…。』
そこにポヨン!って感触?
後を見れば…イチカさん?!
イチカさんは松ちゃんの愛人さん1号!
派手なギャル風のダンサー志望の抜群のプロポーションを惜しげもなく見せつける露出!
鍛えられたしなやかな身体はいやらしくも美しい。
なによりその手足の長さとセクシーさに目を惹かれる。
イチカ『承くんじゃーん!最近来ないねー?どしたん?』
松ちゃんちの近くに住んでるから生活圏が一緒!
何度かイチカさんちでご飯ご馳走になってる。
松ちゃんも夏位からたまにご飯作ってくれるってイチカさん言ってたっけ。
家にあげて貰ってコーヒーご馳走になったり…童貞揶揄われたりする超セクシーおねえさん!
イチカさんはあっちゃん見てイケメンって呟く。
でしょでしょ!そうでしょ?
イチカ『最近新二くん忙しいんだよ?お姉さんところ遊びにおいでよ?
新二くんの代わりに相手して♡』
こうやって俺を揶揄うんだ…!えっろ!
前も…。
☆ ☆ ☆
先月、イチカ宅。
松ちゃんをイチカさん宅に送り届けて俺は松ちゃんちに止めてある自転車で帰ろうとすると…。
イチカさんはタンクトップのショーパンスタイル…あ、目のやり場!
イチカさんは俺をニヤニヤ見ながら、
イチカ『新二くん?承くん童貞なんだって可哀想くない?
あたしが貰ってあげよっかあ?』
新二『はぁ?お前俺の愛人だろ?』
イチカさんは厚めな唇をペロリと舐めて、
イチカ『童貞くんっていちいちリアクションが可愛いんだよ?
新二くん見てる前なら浮気じゃないでしょ?
穴兄弟(笑)』
新二『…兄弟…なるほど…。』
『お…俺好きな娘居るんです!』
イチカさんはイヒヒって笑って、
イチカ『かっわいー♡食べちゃいたい♡
その童貞あたし予約♡』
俺は真っ赤になって逃げ出した…!
まじ童貞リアクション…!
☆ ☆ ☆
そんな事を思い出しつつ…
背中の感触が…しゅごい…!
って動け無くなってたらぎゅー!って引っ張られる!
若葉『なにしてんの!承くんどうしたのこんなやらしそーな女に抱きつかれて?!
痴女?痴女なのー?!』
…あっちゃんの4歳上のお姉さん…初恋お姉さんこと若葉さん…
若葉さんはセミロングの優しそうな顔を今日はムッとさせてる。
俺は年上お姉さん間で引っ張られて…。
目であっちゃんに助けを乞う!
助けて!幼馴染!
厚樹『…帰れ。』
イチカさんと若葉さんに引っ張られながら俺は思う。
やっぱあっちゃんは塩に限る。
最終的に知り合いのお姉さんですってどっちにも説明して解放して貰った。
愛人とか初恋お姉さんとかどっちに知られても面倒くさくなる絵しか見えない。
俺は急いで逃げ出した。
☆ ☆ ☆
そんなぼんやりって言うか…出し尽くして無気力症候群?燃え尽き症候群?みたいな状態で9月はどんどん過ぎていく。
もう週末の日曜には体育祭。代休挟んで来週は修学旅行だよ?
時間が経つにつれ玲奈さんも不安そう。
俺も不安が大きくなる。
受験の頃に似てる、大丈夫!手応えあり!→大丈夫…だよね?→あそこミスってたような…みたいな変化。
松ちゃん…大丈夫だよね?
…そしたら9月4週待ちに待ってた連絡が来た!
夜ぼんやり勉強していたら電話!
新二『今週の土曜の夜…ターミナル駅のホテルグランドの広間を予約してある。
…もちろん香椎家、松方家、弁護士など勢揃い。
承も来い。スーツな?』
手短に伝達された。
声のトーンからは全くわからない!
いったい何がどうなってるのです?
俺は色々考えて…考えて…でもどうしようもない。
そうして、土曜日。
とわんこ始め皆んなが明日の体育祭に夢中なのに俺だけはこの事しか考えられない。
…そして夜が来た…。
スーツ着て、髪を整えて駅へ歩き、電車に乗ってターミナル駅。
駅前の一等地にあるホテルグランドへ。
いざ!
…すげぇ威圧感のある佇まい…俺はビビリながらホテルへ入った…。
明るいロビー、キラキラシャンデリア、俺ここに居て良いの?
不安に足を止めると…
香椎パパ『…君は…立花くん…だよね?』
ひっ!殺される!
ホテルに入ると同時に声を掛けてきたのは、
玲奈さんのお父様!
若々しくも爽やかなイケオジ。
うちの父さんと風格が違う地元の名士香椎パパ!
今日も流石のダンディなんだけど…愛娘の婚約破棄が成るかって場面…
目がバキバキ!
無理も無い…もし望がそんな事なったら…俺の父さんはきっと相手をSATHUGAIしちゃう!ヤッちゃうかもっていつも言ってるもん。
過去のいきさつでちょっと及び腰の俺に香椎パパは丁寧な挨拶をしてくれた…。
いきなり死ぬかと思った…!
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