第511話 忘れない夏の1日

土曜日、早朝!


『よーし!今日は忙しいぞー!』

ひー『いそがしいぞー!』


望『…にぇむい…。』


うっすら秋の気配の見えてきた夏のおわりの自室。

俺は朝から気合い十分!


『ひーちゃん!散歩行くか!』

ひー『いくー!』


朝から時間をかけてゆっくり新川町を散歩する。

いつもの2倍時間をかけて大きく円を描くように。

…小さい頃この道よく通ったな…あそこに犬居たのにな…そんな事を思いつつひーちゃんと語りながら。

ひーちゃんの制限時間二十分じゃ足りないので、残り二十分はおんぶして周る。


ひー『にいちゃん?ぼくおもくない?』


『重い重い、大きくなったなー!』


ひー『えへへー♪』


…これが望だと…重い?重い。ふぁっく!ってやり取りの後飛び蹴りされるんだ…。


家に帰り朝食!


『玉子焼き美味しいね!おかわり!』


母『うふふ♪今日は朝から元気ね?』


いつもこんなでしょ?

母さんに今日の予定を話し、のぞひーがそうなの!って同意する。

祖父がまたお小遣いくれて、祖母が楽しんでおいで?って言う。

父さんが夏休みどこも連れて行ってやれなかったなぁってぼやくけど、


『そのかわり俺が望とひーを遊びに連れてくから!』


父さんはありがとうなって笑った。


☆ ☆ ☆

朝8時半、身支度終えて三兄弟出動!

度々行く、東光エリアのエイオン!

なんでも揃う地方のエンターテイメント!


のぞひーも準備万端!

水持った?行くよ?


大河を自転車で渡る時に望とレースみたいになる。

いつもの自転車じゃ無い母用のひーちゃん座席付きだから俺が不利!


ひー『ねえちゃんリード!にいちゃんがんばれ♪にいちゃんがんばれ♪』


ひーちゃんは楽しそう。


エイオンに着いて、早速スイーツを貪る。

3人で有名チェーン店シュークリームを齧りながら軽く歩いてひーちゃんにリュックを望に欲しがってたラケットケースを買う。

2人とも大喜び!

いいのいいの!


そして本屋さんでひーちゃんの絵本と望の欲しがる漫画(少年漫画)を購入して落ち着く頃には10:30。


伊勢『やっほー♪』

紅緒『ひーちゃん!』

ひー『とわちゃん!』


ひーちゃん紅緒さんはひし!って抱き合う。

心臓って共通項のせいかふたりは仲良し。


お昼一緒に食べる約束してた伊勢さんと紅緒さんの2人に合流するけど、

ふたりに妹弟をお願いして、俺は離席する。


俺は自転車を飛ばして隣駅!


☆ ☆ ☆

新二『おー承。

まじで作ったんか?しおり?』


『そうそう。安全第一!

絶対に忘れちゃダメだよ!』


松ちゃんはホッとした顔で、


新二『でも俺、ああゆうの嫌いだし…。

でも、明日楽しみしてるぜ?』


『…そうだよね、楽しくする為にも安全に!』


新二『おう、また明日な!』


『旅のしおりにもソコは念押ししてるからね?

じゃあまた明日ね!』


俺は手製の旅のしおりを松ちゃんに手渡ししてマンションを出る。

…松ちゃんが俺からの誘いに喜んでいた…。

きっと約束を反故にした事で俺が怒ってもう来ないって事も考えたんだろう。


…最後に勝ちなら良い。

俺はもう一つの大事な用事を手早く済ませる為にすぐそこカフェに!


☆ ☆ ☆

厚樹『…帰れ。』


『お客に対してあんまりじゃない?』


このダークイケメンは今日も塩対応!

でも俺ほどの重度のファンにとってこれはご褒美…!


あっちゃんは不満そうに、


厚樹『…明日宏介の家で遊ぶのに来ないらしいじゃん。』


『は?!明日あっちゃん来る予定だったの?!』


厚樹『…朝から宏介んちでダラダラしよう、田中くんの仮仮仮編集映画見せてくれるって…。』


何それ?知らない!

あっちゃんはため息ついて、


厚樹『…ちょっとしたサプライズだったんじゃねーの?

明日急用なのかよ?なら来週でもいいんじゃ?』


『…来週はね…?』


厚樹『…?』


やっぱあっちゃんは格好いいわ。

絵になるイケメン!じゃ!俺行くわ!

ごめん時間無くって!このあと宏介達と会うんだよ!はぁ?なんて会話を交わして俺は急いでエイオンに戻る!


…ありがとうあっちゃん。


☆ ☆ ☆

エイオンに戻ると仙道も合流してた!


仙道『…俺ハーレムが…!』


『…はぁ?俺の妹をそんな目で…!』


仙道『立花?そんな目をバキバキにしないで?!』


伊勢『は?仙道ハーレムな訳ないじゃん?

ひーちゃんハーレムだもんねぇ?』


紅緒『承くんならまだしも…ねぇひーちゃん♪』


ひー『…ぼくとわちゃんもおっ…なるちゃんもだいしゅきだなぁ。』

※伊勢さんをおっぱいちゃんは止めてあげてって言われて矯正中。

紅緒さんと伊勢さんと望に抱きつかれてひーちゃんご満悦!


望『ひーちゃん…!恐ろしい子…!』


俺たちは連れ立って俺カレへ移動する。


…このエイオンに何度も来たなぁ…。


☆ ☆ ☆

景虎『へらっしゅー!!』


ひー『へらっしゅー!!』

望『へらっしゅー!!』


たまたま空いてた1番テーブルに着き、正直6人はギリギリなんだけど席に着く。


望『ダブルハンバーグセット!ライス大盛りアイスティ!カレーうどん!』

紅緒『ダブルハンバーグセット!パンでアイスティ!フライドポテト大盛りのアイス3点盛り!』


高速詠唱スキルでも付いてるん?って注文速度!

紅緒さんと仙道が笑いながら注文、


『俺はハンバーグカレー大盛り!…ひーちゃんは?』


ひーちゃんはメニュー表を真面目に見つめて、


ひー『ハンバーグカレーひとちゅ!…あまくちください!』


奥さん『はいはい♪かしこまりー!』


皆んなと楽しく食べて、談笑!

楽しいね。


『今日は俺の奢り!!』


みんなが払うよ!とか言ってくれるけど今日は出すって!って押し切る。


景虎『めっちゃ楽しそうじゃん!

シフト水曜?』


『…はい、失礼します。

今日も美味しかったです!』


俺が頭を下げると不思議そうな景虎さん。

奥のスペースで信くんと会えたひーと女性陣はニッコニコで出てきた。


…色々学ばせて頂きました。

景虎さんありがとうございました。

奥さん、保利くん、バイトの先輩たちありがとう。

俺は店に一礼した。



紅緒邸に伊勢さんと仙道は寄っていくらしい。

承くんもおいでよ?何度も誘われたけど午後も忙しいんだ。

俺は謝って頭を下げる。


紅緒『もう!また月曜日ね?』

伊勢『気をつけて帰ってね?ばいばい望ちゃんひーちゃん!』

仙道『じゃまた学校で。』


『…またね。』


ありがとう伊勢さん。

ありがとう紅緒さん。

ありがとう仙道。



大河の橋を抜けてコンビニによりお菓子を買い込む。

のぞひーの欲しいものも。


望『やったー!』

ひー『にいちゃんありがとう!』


ほらほら急いで帰るよ?



☆ ☆ ☆

家に帰り、居間を整えると友人達がやって来る。


宏介、青井、田中くん。

いつもなら広くて行き届いた宏介の部屋に集まる俺たち。


望『宏介くーん!』

ひー『あおいくーん!!』


宏介『…やっほ。』

青井『ひーちゃん大きくなった!』

田中『…俺忘れられてない?』


まさか!

遊びに行くと思ってたのぞひーがそのまま居着いてダラダラレトロゲームやりながらおやつ摘んでダラダラ話し。

映画のこと、終わった夏休みの事、秋のこと。

楽しく笑いが絶えないけど中身の無いただただ楽しいだけの時間。

あっと言う間に夕方。


田中『…明日と思って映画仮仮仮編集間に合わなかった!』


『見たかったな。』


青井『そろそろ体育祭燃えるな!』


『…そうだな。』


宏介『…明日急用なの残念、でも無理に今日会わなくっても。』


『…今日会いたかったんだよ。』


宏介は疑問を持った顔!やっば!

俺は慌てて平静を装い、


『…今日はありがとう!

明日会えないからさ?呼び立ててごめん!

…ありがとう…!』


3人は明日あっちゃんを交えて映画仮仮仮編集を見るらしい。

…いいなあ。


…青井ありがとう。田中くんもありがとう。


…宏介…。



その日の夕飯は俺の好きな鶏の唐揚げで!

我が家のスタンダード醤油味とカレー味をもりもり食べてご飯3杯いったね!

よく食べてよく話しよく笑い楽しい食卓!

俺家族大好き!大好き!大好き…。


笑いながらのぞひーとテレビを見て順番来たらひーちゃんとお風呂に入る。

頭洗いっこ!


お風呂上がって、髪乾かして歯磨きして!

ちょっと早いけど…


『じいちゃんおやすみ!ばあちゃんおやすみ!』

ひー『おやすみまん!』


ひーちゃんは子どもおむつの品名を元気に唱えた!


望『もうー!兄ちゃん甘えんぼじゃない?昨日も一緒に寝たじゃん!』

ひー『ねえちゃんようかいこわいって…。』


俺の希望で今日も布団2枚敷いて3人でねんね!

3人で横になりながら色々話す。


今日のお出かけ。

買い物、俺カレ、午後の集まり。


望『兄ちゃん今日自分の物買ってなく無い?』

ひー『なくなくなくない?』


『俺はいいの!シュークリーム美味しかったね?

俺カレのハンバーグカレーも!』


望『美味しかった!今度行ったら…!』

ひー『ハンバーグカレーおいしい!あまくちしゃいこう!』


2人とも食いしん坊だなぁ…誰に似たのか…。

立花一族は皆んな健啖家だから誰に似ても食いしん坊。


話しは盛り上がり、だんだん眠くなる。


ひー『くぴー。…きゅぴぃー。』

望『…これぜんぶ…たべていいのぉ…せりまま…。』



『ふふ。』


愛しい妹、弟の寝顔を見てると幸せ。

今日は特にそう思う。


今日が最期の夜…。

もう…寝顔を見ることは無いだろう…。



押し殺していた感情が溢れる。

寝顔見てると…愛しくて愛しくて。

涙止まんない…。








…俺は明日死ぬ。

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