第490話 兄弟それぞれ

新二『続けろよ。』


松ちゃんが先を促す。

俺が思う兄妹、兄弟。

全部が同じはず無い。

松ちゃんの思う兄弟も聞かせて欲しい。

でもまず俺から!


『俺と望は2学年離れてるけど俺は3月、望は4月産まれで実質年子みたいなもん。

…あいつは生意気で食いしん坊でケンカっ早くてトラブルメーカーなクソ餓鬼だった。

何度も喧嘩して泣かして、俺も泣かされそうになって…

でも、うち両親共働きでいつも一緒に居て…その頃の望が頭をよぎる。

どんなにムカついても、どんな生意気言っても、今みたいにテニスで結果出しても、

美人になって大人っぽくなっても、

『にいちゃん、にいちゃん!』

って抱きついてくる妹の姿を思い出す。』


新二『…。』


続ける。


『自己中で甘えん坊の望は母がひーちゃん妊娠中荒れた。

今まで自分が1番だったのが急にお腹の子が1番!ってなったから。

荒れて揉め事増やして、『産まれてこなきゃいいのに!』とか言って。

…でも、ひーちゃんが産まれて、初めて抱っこさせて貰った望はポロポロ涙をこぼして…『にいちゃん…ひかるかわいいね…?』それから望はひーちゃん命。

俺もそう。

…つまり何が言いたいかと…』


新二『そんなに上は下が可愛いか?本当か?』


俺は断言する。


『何があったとしても可愛いと思う。

それから確執や家庭環境もあるかもだけど…。

…松ちゃんと新一さんはどんな兄弟だったの?』


…本質は俺の話しじゃ無い、松ちゃんがどう思うか、どう思ってるかでしょ?

俺は松ちゃんの話しを聞きたいって呟く。


松ちゃんが語ったことは…

年子の一歳上の兄貴新一さんは子供の頃とても優しくて良い兄さんだった。

松ちゃんは新一さんが大好きだった…。

でも小学生になったある日、事件が起こり…

ママは幽閉されて、新一さんは遠ざけられてしまう。

松ちゃんはパパの寵愛を受け、兄弟で差をつけられて育ち生活スペースも離されてほぼ別々の暮らし。

新一兄さんはママに似て爽やかイケメンの文武両道の優秀な少年に育つ。

松ちゃんはパパ似の容姿でゴツい見た目に勉強も運動もイマイチ。

幼少期から比べられてきて新一さんにコンプレックスがある…。

…20歳のある日、松ちゃんが松方グループの後継者って定められて…って。


新二『…だっけさ。兄貴は俺を憎んでるだろうし、恨んでる。

本当は兄貴が松方グループを継ぐにふさわしい。

それがあんな小さな会社任されて…しかも結果出してる。

…兄貴は俺を…。』


悲しそうな松ちゃん。。大人がこんなに弱々しい…いや大人だって凹むでしょ。

まして家族のこと…。


『俺は…それでも一回話し合って見るべきだと思うな…。

松ちゃんママに会いに来てるんでしょ?

新一さんもママが大事、それは兄弟共通じゃない。

新一さんも認識されてないんでしょ?一回兄弟で訪ねて見るべきでしょ。

…新一さんだってママなんとかしたいって気持ちはあるはずだよ!』


松ちゃんは卑屈に、


新二『…そうかな?俺なんかが…?』


『…そうだよ!仲良かった時代もあったんでしょ?

ダメなら仕方ない!でも一回歩み寄ってみたらどうかな?

ダメで元々!

…弟分の俺が言うんだから!』


松ちゃんはくすって笑って、


新二『…弟分ってまだその設定生きてんのかよ?』


『何言ってんの?

産まれた日は違えど同年同月同日に死せん!って誓い合った仲でしょ!』


新二『お前ほんっと武将脳だなw』


松ちゃんはその場で新一さんに連絡をした。

間を開けたら出来ない!ってグズって。

…そしたらあっさり三日後に会おうってなったらしい。


新二『…何着ていけばいい?!』


『落ち着け松ちゃん!別に普通に会って話すだけでしょ!

兄が弟と!』


新二『承は弟と会う時…!どうする?!』


『いや、落ち着け松ちゃん。

俺はひーちゃんと毎日会ってるし、なんならほぼ毎日一緒に寝てる。』


新二『?!

一緒に寝るのか?!』


まじ落ち着け。

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