第484話 やらかした後に

昨日のやらかし説教からスタート。


☆ ☆ ☆

もうすぐ夕方って頃合いに殴りっこin河川敷公園。

午後から夕方になる時間帯だったものが夕方から夜に時間はゆっくり進んでいる…。

俺と青井は思いの外熱くなっちゃって…。あっちゃんもびっくりしながら俺と青井の相打ち見てたけど…説教が始まったら見てられないって感じで痛ましい表情でこっちを見たあと宏介と川見て話し込んでるの…。


同じ高校でもある紅緒伊勢組にかっちり叱られ、涙ぐまれ、もうしないと誓わされて…でも青井と俺はまったく許された気がしない…。


…その後ろで香椎さんと小幡さんが黙って立って居るからです…。

紅緒さんと伊勢さんはぷんすこしながら、


紅緒『もしまたやったら恥辱の公開説教だからね!』

伊勢『ガキなんだから!』



おふたりが怒りながら去って行くのを視野のはじっこに納めつつやって来る怖い美人ふたり。

一難去ってまた一難…後編開始。

クールなメガネ美人の小幡さんがメガネ外しながら目元を拭ってる…その仕草が妙に可愛くて目が行っちゃう。


千佳『…航…もう暴力は振るわないって誓ったじゃない…。』


青井『…いや、や、その…暴力じゃないんだ!

漢…そう!漢試し!力と力をぶつけ合う男同士の…!』


男同士…なんて小幡さんが好きそうなパワーワード…!

しかし沸騰しやすいクール美人こと小幡千佳はただ悲しい顔でそれ以上言わない。

…さすが彼女さん…!青井の弱いとこ熟知してる!

青井は口で言うより自分で気付かせた方が良い。

…考えようとしないだけで頭が悪い男では無いのだ。

かえって何も言わない方が何故ここまで小幡さんを悲しませて傷付いた表情になってるか自分で思い至り…。


青井『…千佳…ごめん…。

悲しませるつもりじゃ…俺バカで…立花と本気の勝負したくって…立花もノッてくれて…。

でも!あの頃のと違って!恨みや怒りやそうゆうんじゃない!』


小幡さんはしっとりした優しくも悲しい表情で静かに語る。

怒ってるより青井に効くだろう。


千佳『そうゆうんじゃ無いのはわかる。

…でもさ?航が人を殴りつけるとこ…私はショックだった。

しかも知ってる承くんで…。

マイナスの感情じゃ無くっても私は嫌。

格闘技みたいにルールやグローブで守られたって…イヤだよ…。』



青井は土下座しそうな勢いで身体を起こし、


青井『ごめん!本当にごめんなさい!

千佳、俺が間違ってた!立花もごめん!

俺が巻き込んだ!本当に済まなかった!』


テント入り口から腕組んで見てた望がポツンと、


望『青井くんも漢だなぁ。』


ってうんうん頷いてた。

愚妹あっちいけ。


小幡さんがしょんぼりしてるから青井は必死に元気アピール!

俺全然効いて無いし!立花もだろ?

もちろん!そこまで本気でやってない!

※互いに全力でした。


青井『ほら千佳!夕暮れの河川敷も綺麗じゃん?』


撮影班で結構な人が居るのに青井は小幡さんをエスコートして大河の川べりで撮影まで小幡さんを宥める事にしたみたい。

後は時間が解決…するわけもなし。



香椎『…。』


望『…あたしケータリング摘んでくるぅ♪』


いや!居て!妹様?あっち行かないでー!


テント入り口辺りで見てた望がぴゅーって走って行った。

広めなテント、入り口大きく開けてるから外から中は丸見え。

もちろん変なことはしないし、出来ない。



香椎『…。』


憧れのあの娘が悲しい顔…。

見たく無い…でもそんな顔させたのは俺と青井のノリ。

悪気や邪気は無くても無神経なヴァイオレンス…。

女の子は暴力嫌い…俺も本来嫌いなんだけど…

…意外と起こる荒事、景虎さんとの組み手、津南の襲撃…ちょっとヴァイオレンスに少し慣れて…言い訳だ。

…なにがあろうと暴力はいけない…何かを守る為以外正当化してはならない…。


情けない…この撮影で香椎さんが好きって気持ちを再確認してたのに。

好きな子が困ってるから…なんとかしたいって動機で始めた事が青井と盛り上がっちゃって…理由の無い暴力を…見せちゃって…。

イヤだったろうし、怖かっただろうし、不快だったろう…。

なんとか香椎さんに怒られないようにを頭CPUで高速検索していたが俺のCPUではそんなモノ見つかる訳も無い。

早々に素直に非を認めて謝るべしって結論を叩き出した…。



『…ごめん香椎さん。

急に殴りあいをはじめてびっくりさせちゃったよね?怖かったよね?

…本当にごめん、反省してます。』


俺は頭を下げる…。

香椎さんの悲しい顔が1番こたえる。

やっぱり笑顔が最高、笑顔が見たい。


香椎『…大丈夫なの?』


『はい!全然大丈夫です!』


香椎『うそつき。無理してる。

まだ効いてるんでしょ?』


香椎さんは意外(想定より力強いって意味)なほどの力で俺を横にすると、


香椎『撮影までまだ少しあるよ…まだ横になってた方が良いね。』


(膝枕?!)


…ヴァイオレンス事件を起こした俺にはそんなご褒美は無くって…。

でも横になる俺の横で女の子座りしながら…冷やしたペットボトルを患部に当ててくれて…。

気持ちいい…殴られたとこが熱を持ってるのか冷たいのが気持ち良いって呟いたら濡らしたタオルを頬に当ててくれた…。


香椎『…承くんが人を傷つけるのも…傷つけられるのも見たく無いよ…。』


下から見上げる香椎玲奈もたいそう愛らしくてまた俺は胸が高鳴る。

…そのセリフも当時聞いた記憶がある…。

俺は当時の追体験を通じて香椎玲奈が好きって気持ちを再確認して居る…玲奈さんは今回の撮影で何を思って居るのかな?


知りたいな。そう思っても何も言えない俺は黙って横になる。

香椎さんは几帳面にタオルに冷水をかけては絞り俺の頬に当ててくれた。



『『…。』』


何も言わない。

…昔なら何か言わなきゃ!ってなったけど今はこの沈黙すら心地よい。


…宏介ともそうだけど…香椎さんと俺の関係ついに宏介レベルまで来たのかもしれない…。




ぎゅ!

無事な方の頬が抓られた。


香椎さんは失礼な!って顔で目は笑ってるのにぷんすこ怒ってみせながら、


香椎『…多分違うと思うな?』


俺はまったく読めないけども、

時々香椎さんは俺の心が読める…!

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