第483話 青井となぐりっこ

それで翌日、早朝俺、宏介、田中くんと映像研の2人で落とし穴掘ってさ?

香椎さんと小幡さん役の伊勢さんのお弁当を食べるシーンを撮った。

…お弁当いつもより…。


香椎『酷いんだよ!素人の料理っぽく作って!って釘さされちゃったよ!』


小幡さんが間に入って香椎さん伊勢さんの合作なんだって…

青井も来てて皆で美味しく頂きました!



そして15時頃、

リアリティ出すために青井と3km追いかけっこで走ってる映像撮影後公園行ってさ?

青井はあの頃よりマシとは言え息がぜいぜい言いながら走らされて夕方の河川敷で相対する。


青井の目が…



青井『…。(ガチ!ガチでやろうぜ!)』


って言ってる…。

え?3分息整えるハンデ与えるんだよね?史実通り?

こっわ!あの頃と違う青井の腕力こっわ!


『…。

(友達殴りたく無いよ)』


青井『…。

強敵ともじゃん?)』


史実通り息入れる時間を与えて…避けないからこいよ?ってセリフからの…。



がつん!!!


お互いの拳が頬に入る!!

あの頃は相打ちって言うより…カウンター気味に入った気がした…!

ゆっくりに見えて…青井が崩れていったのを他人事のように見てた気がしたんだけど…。

うわ!ゆっくり地面に崩れ落ちるのを感じる…!

たたらを踏んで…世界がぐるぐる回って…負けたのか…?




どさっ!!



倒れた衝撃で我に帰る!

あれ?頬がざらっざら!

世界が半分見えない…地面?あ!青井と殴りあって?



意識は混濁してわけわかんない。

あれ?なんで青井と殴りあう?

あうあうあー。



香椎『承くん!

離して!触るな!!』

香椎さんを数人がかりで抑えてる…止まんないよ?

その娘華奢に見えるけどパワー型だからぁ…。


…香椎さん…ずいぶん綺麗になって…

ぼんやり見える向こうに青井も倒れてるぅー?


千佳『航!絶対やると思った!大丈夫?ねえ航!』

小幡しゃん綺麗になったねー。

小幡しゃんも数人がかりで抑えられてる…。




向こうからくぐもった声が聞こえる…。


航『…きっもちいいー。な?立花…。』


『あぁ…うん…きもちー。』


俺は意識を放り出した。



☆ ☆ ☆

田中『大丈夫?』


『おお?!』


ドアップで田中くんの顔!

こうゆう時って香椎さんじゃないの?


青井も隣で寝てる。

…河川敷公園の高架下…。

あぁ…俺と青井ガチでやって…

あれ?どうなったん?!



田中くんが説明するけど…顔腫れてない?


田中『…いや僕も悪いんだけどさ?

台本に無い事されると困っちゃうよー!』


嬉しそうに言う。

で、なんで頬腫れてるの?


田中『結果はさ?ダブルノックアウトだったんだ。

でもコレはコレで映える絵だったわけ!

香椎さんと小幡さんが駆け寄ろうとするのを必死で止めて!

2人が崩れ落ちる様をカメラに押さえて、すぐ介抱に行くふたりを押し留めたら…流石の名コンビ!

ツープラトンで綺麗の両頬にビンタ喰らっちゃって…。

でも新川中出身で香椎さんと小幡さんに同時にビンタなんて伝説じゃ無い?』


香椎さんと小幡さんの血相変えた叫び声が入っちゃったからこのシーンはむしろ無音で編集する!って田中くんはワクワクしていた。

田中くんは熱くてすごいシーンになった!この後承くんが先に起きて独白シーンから行こう!って嬉しそう。


田中『まだ時間が早いんだ。

あの時みたいにランタンで照らしながら承くんが宏介くんや僕たちに今回の動機や香椎さんがイジメを気にしててなんとかしたかったって独白から、青井くんが起き出して熱く語り青春シーンで…。』


…あれかぁ…



『本当にしなきゃダメ?』


田中くんはニッコニコで、


田中『だめ!アレ良いシーンだよ!

俺今日を忘れない!また聞けるなんて…!』


何がそんなに楽しいのか…。

もう少し横になっててよ?って言葉を残して田中くんは夕方から夜の撮影に備えて準備に走っていった。

釣りキャンプでも使ったテントでふたり横になる。

あの頃の青井とふたりきりだったらゾッとするけど今は親友なわけで。


青井『立花…付き合わせて悪かったなぁ。』


『目を見てたら…乗っちゃったよ。』


なんか敷いてくれたとこに2人で横になってる。

あはは!ふたりで笑いながら語る。

あの日のこと、今日の痛み!


青井『あの頃より痛い!立花強くなったな。』


『俺のセリフだからね?あと本当に痛くなるのは明日以降だから!』


青井『津南とかよりよっぽど立花の方が怖いわ。

腹決めた立花の雰囲気…!ゾワゾワした!』


『…あの頃の青井より怖かった。

あの頃と違って暴力じゃなくって…まっすぐ育った大木のような…地に足の付いた力…。』


青井『…これは暴力じゃなくってさ…力試し…いや漢試し…。』


『…漢とはなんぞや?宏介も言ってた。』


青井『深いな…俺たちは登り始めたのかもしれない…果てしない男坂をよ!』


『打ち切りエンドっぽい!

そう俺たちは漢になる途中…怖いものなんてない若さがあるよな!』



青井『そうだ!怖いものなんて無いぜ?』


あはは!

青井と笑いあってるとピョコンって妹の望がテント入り口から顔を出した。


『なんだ望?兄ちゃんは今、青井と漢を語り合ってるんだぞ。』


青井『お前ならわかるか?漢について語らってるんよ?

いいぞ怖いものなんて無いんだ!』



望は心底嫌そうに、


『あたしメスだから漢なんて理解の範疇外!

それより良いの?田中くんと宏介くん今の録音してるけど?』


あの北翔チームめ!また?!

そう言いかけたところで望がニマニマしている事に気付く…これなんかマズイやつ…。


望『そんなに怖いものなんて無いなら見せて貰おうじゃん?

お姉さまたちがさっきから心配通り越してお怒りだよぉ?

自慢の漢理論で危機を脱してみなよぉ!

香椎せんぱい!小幡せんぱい!永遠ちゃん!なるちゃーん!』



『『ひいっ!!』』



香椎『…良かった…目が覚めたんだね…?』

千佳『…航…あれ程…暴力はって…。』

紅緒『承くん!今日は激おこだよ!』

成実『あーしも今回は弁護しようがないっしょ…。』


…漢なぞ女の子の前では手も足も出ない…。

何故かって?…坊やだからさ…!

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