第481話 再確認していく思い
夕方シーンの宏介と俺の家まで帰るシーンを3パターン位撮影する。
リアル宏介の家が俺の家って設定の為道だけ。
俺への襲撃を察知して宏介が野球しようぜ!って中島くんみたいなことを言いながらバット渡してくるシーンとか吹き出しそうになった。
リアル俺家周辺の空き地。
ここで青井とやり合ったり木多さんが望を襲撃したり曰く付きの場所。
青井とあっちゃんがふたり連れて俺を待ち伏せるけどバット持ってるから悔しそうに素通りさせる…。
思い出しても危ない場面だったんだなって思う。
たまらずカメラ回って無い時に、
『…俺宏介に助けられてたんだなぁ…。』
宏介は不思議そうに、
宏介『…立場が逆なら承だってそうするでしょ。』
『…まあそうだけどさ。』
宏介はフフって笑って映像研の手伝いにいく。
…宏介ほど好い漢は居ないって思う俺にとって宏介周りで巻き起こる女性トラブルはまったく理解できない。
勿体無いよなぁ…誠実で努力家でその上イケメンで。
人はままならない。
この後シーンの為に宏介とふたり落とし穴掘ってるシーンを撮って今日の撮影は終わった。
☆ ☆ ☆
翌日、10時撮影再開。
朝学習の時間に青井が絡んで来て、俺はクラス委員長も首になりキレちゃって青井を黒板に叩きつけるシーン。
青井『おい貧乏!お前の両親しょうもないな!』
厚樹『宏介いないと何もできないのかよ!宏介と一緒に説教してやろうか?』
あっちゃんに本当にそう言われたら俺泣いちゃう。
本当にキレたのって数えるほどしか無いけど…この時は怒りに我を忘れちゃったっけ。
青井の喉に手をかけて黒板まで押して行き、黒板に叩きつける!
『俺のことはいいよ!!家族のこと!唯一の友達の宏介のことは許せねーよ!』
青井『立花!このいじめられっ子が!』
『いじめた奴のが悪いに決まってんだろ!』
田中『はいカット!いいね!
あの頃思い出すよぉ!』
青井は目に見えて凹んでる。
青井『…立花…本当にすまん…。』
『いやいや、映画の撮影じゃん。
あの頃の青井と今の青井は違うでしょ。』
青井は俺の目を見ながら、
青井『…あの頃の俺が居るから今の俺が居る。
でもあの頃の俺も俺なんだよ。』
『…そっか。』
青井はまだこの頃の事に苦しんでいる。
加害者として。今は親友の俺や田中くんにした事を悔やんでる。
シンプルな奴だけに自分が許せないんだな…そうゆう所が好ましい。
松ちゃんには理解出来ないみたいだけど青井のそうゆう所が好き。
こんな好い漢が親友、俺はそれが誇らしい。
一緒に居れば楽しいし嬉しくなっちゃう。
男に惚れるってそうゆうことでしょ?
…ちなみにこの直後担任が注意してるようで事なかれ主義全開でうやむやにするクズムーブを松ちゃんが熱演していた。ハマり役。
田中くん視点で俺と青井グループが抜き差しならぬ間柄になったシーンを挟んで昼頃。これ撮ったら昼食!
このあたりから田中くんを含めた3人組(田中くんと映像研ふたり)がいじめられてる絵を撮影し出す。
それ以外の映像研のスタッフは午後使う落とし穴を掘りに行っている。
田中家と斉藤家のご好意でケータリングみたいにおにぎりやパンとおかずたち!俺宏介んちのカレー大好きでさ!
香椎さんにその事言ったらなんか膨れてた。
宏介んちのカレーは甘めなんだけど旨いの!3杯いける!って言ったらツネられた…なぜ?
そして、香椎さんに呼び出されて正面玄関でいじめの話と俺がクラス委員長を降ろされた話しをして泣いちゃったシーンの撮影が始まった。
香椎『立花くん、急にごめんね?』
『うん、何かな?』
香椎さんが可愛い…!あの頃も可愛かったけど…高2玲奈さんしゅごい。
俺は一回断るけど香椎さんの追求で自分の受けた嫌がらせといじり、いじめっぽいものを淡々と話す。全方向から貧乏ネタ含む悪口のあたりで香椎さんは涙目になって体育館でのクラスメイトに一人一人否定された所で香椎さんは泣き出してしまった。
少し落ちつくのを待ち委員長解任劇、母さんが学校にクレーム入れたこと、青井との小競り合い、気弱い3人が今いじられていること、暴力が増えてきたことを包み隠さず伝えた。
香椎さんはその大きな目から大粒の涙をポロポロこぼしながら
香椎『立花くんは強いね、そんなことがあっても逃げないで学校に来てる。私は何もわかってなかった…。』
そうだった。
好きな娘が俺の為に泣いてくれる。
美しくも切ない。情けないけど嬉しい感情がバグっちゃう時間だったっけ。
香椎さんの涙…美しい…でも泣かせたく無い…!
頑張っている立花くんの為にいじりを止めるように働きかけたこと、それが逆効果で俺へのいじりが加速したことを指摘されたこと、そう聞かされてから怖くて俺に話しかけられなかったことを泣きながら話してくれた。
ごめんね、ごめんね。
繰り返し謝る香椎さんの泣き顔を見て俺も泣いてしまった。
この時は泣けた。
今日泣けるか?香椎さんは女優モードあるから泣けるだろうけど…杞憂だった。あの頃の気持ち、香椎さんの涙と感情が流れ込んで来て…俺は簡単に泣けた。
二人でわんわん泣いた。お互いの泣いてる顔を見てまた泣いた。
しばらくして二人同時に笑い出した。
香椎『立花くんは頑張っていたし、いじめにだって負けてない。
誰も褒めないなら私が誉める!立花くんは偉いよ!』
『委員長にさせられて頑張ったけどうまくいかなかった。
でも、香椎さんに救われたよ。』
この後、
香椎『え?じゃあもし私が本当に困っていたら1回だけ助けてくれる?』
『絶対に助けるよ、誓う。』
ってやり取りがあった。
それはふたりの秘密。この頃には俺は香椎さんが好きだった。
この時間でもっともっと好きになっちゃって…。
今も変わらない、
香椎玲奈が困っていたら絶対に俺がなんとかする
そう誓ったんだ。
…なんだろう追体験なのに…心にくるものがある。
そうぼんやり思っていると香椎さんがちょこんと横に立ってた。
香椎『あの頃の気持ち、思いを思い出したら自然に泣いちゃったよ。
この後さ…。』
香椎さんが言いかけて止めた。
口に出す事じゃ無いのかも知れない。
『『変わらないよね。』』
ハモった!
『『時々こうやって一緒に泣いてるよね。』』
またか!
俺がさっきのシーンで思った事を漏らす、
『あの頃と背丈や環境や諸々変わったよね?』
香椎さんはもっと綺麗になった。
香椎さんはイタズラっぽくふふー!って笑いながら俺を覗き込んで、
香椎『でも変わらないものもあるよね?』
結局俺は香椎玲奈が好きすぎて頭おかしい。
これ以上なんか無いはずなのに、過去体験してるシーンなのに…また胸がきゅーって痛む。
結局俺は何度も香椎玲奈に恋をする。
☆ ☆ ☆
クロス回です。
あちらでは色々あった宏介くんが猛獣に(笑)
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